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盛り方にも心が込められている
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大友楼
加賀前田藩の御膳所を勤めた尾山町の大友楼は、170年以上の歴史を数える料亭。 |
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「お腹一杯になることは、幸せに通じると思っています」
「大友楼」七代目の大友佐俊さんがいう。
色鮮やかな九谷焼や伊万里焼に盛られた料理が、次々に運ばれてくる。もうお腹一杯やと思っていても、しらずしらずのうちに箸が伸び、気がついたら皿の上のものがなくなっている。
これは、私が大食らいであることだけが理由ではない。
美味しいのはもちろんのこと、辛味の強いものの次には薄味のあっさりしたものが出され、そうかと思えばしっかりと濃い味が染み込んだ煮物が出される、といったように、味にメリハリがつけられているから飽きが来ないのである。
「意識して味に起伏をつけています。加賀料理と京料理との違いですね」
大友さんは、若い頃京都の料亭で修行を積んだという。
「金沢は海が近いから、海産物の鮮度が高い。山の幸も豊富です。地場の産物を使えることはありがたいですね」
金沢の郷土料理であり、結納や披露宴などのハレの場にも出される「鯛の唐蒸し(たいのからむし)」は、鯛のお腹に人参、きくらげ、麻の実、銀杏などたくさんの具が入ったおからが詰まっている。
調理する際、鯛はお腹から開くと"切腹"を連想させるため、必ず"背開き"にするというのは、武家の国・加賀らしいジンクスである。
これもまた郷土料理の「治部煮(じぶに)」には、専用のお椀"治部椀"を使う。
「ひとつの料理に対して専用のお椀を使うというのは、加賀料理特有の演出のしかたでしょうね」
店を出るときに、とっても美味しくてきれいでしたと声をかけると、大友さんはにっこり笑ってこういった。
「色に負けない料理を作る心意気を、大切にしていきたいと思っています」
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