「郡上おどりのルーツを探る」
郡上おどりについて語ってくれた田中さん。熱い!
郡上おどりについて語ってくれた田中さん。熱い!
DATA郡上おどりインタビュー
毎年7月上旬から9月上旬までの間、のべ30夜に渡って踊られる郡上おどりは、「縁日」という祭礼日に基づいて日程が組まれている縁日おどりである。郡上おどりの期間外にも、「郡上おどり保存会」による体験講座が行われている。「かわさき」のなかに出てくる「アソンレンセ」というかけ声は、「祖霊祭(ソレイサイ)」——先祖供養のお祭り——という言葉が変化したものだという説がある。
旧庁舎記念館では、地元作家が作った木彫りの玩具や郡上の特産品を販売している
旧庁舎記念館では、地元作家が作った木彫りの玩具や郡上の特産品を販売している
木のぬくもりがにじみ出た木彫りのバスを展示
木のぬくもりがにじみ出た木彫りのバスを展示
郡上おどりの碑と、旧庁舎記念館の外観
郡上おどりの碑と、旧庁舎記念館の外観
 郡上のナ 八幡出てゆくときは アソンレンセ♪
雨も降らぬに 袖しぼる 袖しぼるノー 袖しぼる アソンレンセ♪ ——郡上おどり「かわさき」より


郡上おどりをもっと知りたい!
——郡上八幡旧庁舎記念館にお邪魔して、郡上八幡観光協会の事務局長・田中義久さんにお話をうかがってきました。アソンレンセ♪

——郡上おどりはいつ頃から始まったのですか?
「郡上では、昔から念仏踊りや先祖供養のための踊りが、地域の芸能として存在していました。この土地に限らず、集落のなかで結婚などの祝いごとやお祭りがあったら、歌を歌って踊りますよね。だから、はっきりした起源があるわけではないのですが、今から約400年ほど前、郡上藩主の遠藤慶隆が、こういった踊りを保護したことが、郡上おどりの大きな発展の礎(いしずえ)となっています。 当時の藩主は、農民が徒党を組むことを、抑圧するのが普通だったわけですよ」

——そんな時代に踊りを保護するとは、粋な藩主ですね。

「もうひとつ、郡上おどりの発展の要素となった騒動があります。『宝暦騒動』という農民一揆が、18世紀の半ばに起こりました。税金が原因で起こった一揆なんですが、すごい騒動だったんですよ。なにしろ、郡上の殿様を断絶させるんですから」

——断絶!?
「江戸まで行って、老中が乗った駕籠(かご)を待ち受けて直訴する『駕籠訴(かごそ)』を実行したり、吉宗の目安箱に訴状を入れて『箱訴(はこそ)』を行ったりと、そういうことが4年に渡って続きましてね。結局、当時の郡上の藩主であった金森家は断絶しました。この騒動は、『郡上一揆』というタイトルで映画化され、2001年に全国で上映されたんですよ。金森家断絶の後、徳川家の側近で有能な青山幸道公が幕府から派遣されました。青山公は、長期間に及んだ郡上一揆で荒れた領民の融和を図るために、踊りを奨励したといわれています。それから明治維新まで、青山家が郡上藩主を勤めました」
インタビュー
——なるほど。郡上おどりは、遠藤氏によって保護され、青山氏によって奨励されたんですね。ところで、「郡上おどり」は何種類あるんですか?
「10種類あります」

——地元の方は全部踊れるんですか?
「子供の頃から馴染みがあるのは、『かわさき』『春駒』『三百』『ヤッチク』。この四つが一番ポピュラーな"郡上節"なんですよ。全種類均等に踊るわけではなく、『まつさか』は終わりの曲で、『古調かわさき』は、"踊り初め"のときに最初に踊って、あとはよっぽどのときに初めに踊るくらいですから。
だから、10種目きちんと踊れる人は、多くはないですね。『甚句』や『まつさか』は難しいというか、あまり馴染みがないと思います」

——昔の郡上踊りはどんな感じだったんでしょう。

「昔は楽器もなく、屋形もありませんでした。歌詞もなく、全部アドリブ。歌の掛け合いで、女性の取り合いをしたりしていたわけです。本当はこれが醍醐味なんでしょうね。
スピーカーなしでそれだけの人を集めるわけだから。今でも、お年寄りはエッチな歌詞を平気で歌われます(笑)。
80歳近くの方がニコニコして歌っておられるのをみると、こたえられないですね」 ——八月のお盆は、夜通し踊り続ける「徹夜おどり」が行われるそうですね。
「徹夜おどりのときは、人の往来も難しくなるほどの人であふれます。踊りを楽しみに帰省される方も多いですし、とても盛り上がりますね」
インタビュー
——これからの郡上おどりは、どう変わっていくのでしょうか。
「昔の踊りを伝えていくだけでなく、時代のテンポに合わせて変化する部分があってもいいと思っています。踊りを楽しみにしている若い人たちにとっては、ディスコと同じノリなんですよね。生活に根付いた伝承芸能なんだから、自由であっていいと思うんですよ」

昔ながらの踊りはもちろん、郡上節をクラシック調にアレンジしたり、阿波おどりや花笠音頭と共演したりと、「郡上おどり」の楽しみ方は色々。この踊りの魅力は、その柔軟さにもあるように思います。
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