「童心に返って熱中興奮首ったけ」
ふむふむ。京都のおとなり、奈良県出身の喜美子さんから作り方を伝授される
ふむふむ。京都のおとなり、奈良県出身の喜美子さんから作り方を伝授される
DATA赤瓦三号館・中野竹藝
「赤瓦」三号館・中野竹藝は、酒造の蔵を改装して工房とギャラリーを開いている竹細工の老舗。竹とんぼ作りのほかにも、茶酌削りを体験することができる。
完成。薄い竹の板なのに、かつおぶし風の削りかすが大量に。ご飯にかけたりして
完成。薄い竹の板なのに、かつおぶし風の削りかすが大量に。ご飯にかけたりして
飛べよ。飛ぶかな。飛んでくれ。飛びますように。飛んでください
飛べよ。飛ぶかな。飛んでくれ。飛びますように。飛んでください
飛んだー! って、そんなに飛ぶとは思わなかったぜ我が子よ。竹子と名づけよう
飛んだー! って、そんなに飛ぶとは思わなかったぜ我が子よ。竹子と名づけよう
中野竹藝の1階ギャラリーでは、花器や茶道具など意匠を凝らした竹細工が並ぶ
中野竹藝の1階ギャラリーでは、花器や茶道具など意匠を凝らした竹細工が並ぶ
私って不器用だから……とかなんとかいいつつ、手刀と竹とんぼの材料(羽になる竹の板と、軸になる竹の棒)を渡されると、胸の奥からわくわく虫が沸いてきた。
「この台に竹を固定して、羽を薄く削ってくださいね」
机にかまぼこ板のような台を置き、その上に竹の板を固定する。
そして、中野竹藝に嫁いで27年の中野喜美子さんに手ほどきをしてもらって、いざ削らん!……か、固いっすぅ〜。
「竹って意外と固いんですよね。けっこう力が要るんですわ」
ホンマに。ちょちょいっとできるもんやと思ってました。
うぬぬ、と悪戦苦闘していると、
「おねえちゃん、手刀の持ち方がなってないよ」
やにわに、となりで同じ竹とんぼ作りに挑戦していた中年男性から教育的指導を受ける。
「こうですか?」「違う違う、こうよ」「えーっと、こう?」「こうだってば」「こう!?」
なるほど、親指に力を入れやすい持ち方をしたら、いくらかスムーズに削ることができるようになった。おじさん、恩にきるぜ。
「竹の層を一枚一枚はいでいくように削ったらええと思いますわ」
喜美子さんが、シュッ、シュッと規則的な音を立てて竹を削りながらアドバイスをくれる。
ラジャー!

——10分後——
私とおじさんの口数が、だんだん減ってゆく。
うぬう、これでもかっこれでもかっ、シャキシャキ。
「喜んで熱中される大人の方も多いんですよ」
と喜美子さん。それ、ものすごくわかります。シャキシャキ。
幾度となく作っているはずの喜美子さんも、なんだか楽しそうである。

——15分後——
シャキシャキシャキシャキシャキ。
もう竹を削る音しか聴こえない。

——30分後——
軸を羽に挿して、完成や!

喜美子さん、これ、飛びますかね。調子に乗って削りすぎて、ちょっと羽が欠けちゃったんですけども。
「大丈夫。ちゃんと飛びます。きれいにできてますわ」
わーい、誉められたー。誇らし顔でライバルのおじさんに目をやると、まるでやすりをかけたように滑らかな羽を持つ作品を完成させて悦に入っていた。喜美子さんをも唸らせる逸品である。お、おぬし、やるな。

さっそく、中野竹藝の向かいにある公園で、竹とんぼを飛ばしてみることにした。
手のひらで助走をつけて、思いっきり軸をひねる。緊張の一瞬。えいっ。
「びゅぅぅぅぅぅうううううんんんんん!!」
あわわ、めちゃくちゃ飛んでもうたっ。
頭上5メートルは飛びました! 心は打吹山のてっぺん(標高208メートル)まで舞い上がりました!!
先生、私が作った竹とんぼ、いっぱい飛んだっす!
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