白壁土蔵群
町のまんなかを流れる玉川沿いに残る白壁土蔵群は、倉吉のシンボル的存在である。 |
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川べりに立つと、初めての土地に対する気負いがはらりと剥がれた。
お行儀よく建ち並ぶ白壁の土蔵のすぐ横を、玉川がのんびりと流れている。
真っ白い漆喰に覆われた壁がまぶしくて、思わず目を細めていると、大きな籠がついた自転車に乗ったおじいさんが、挨拶代わりのベルを鳴らして颯爽と通り過ぎていった。
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白壁を支える黒い焼き杉板の木目が、どんぐり眼で川の流れを見つめている。
控えめな赤を纏った屋根が、静かな町の呼吸を見守っている。
玉川に架けられた、小さな石橋の上にしゃがみ込んで水面を覗くと、大きな鯉がゆらめいていた。
色彩も静寂も生き物も、すべてが優しく馴染んでいるこの空間は、知ってか知らずか、柔らかなぬくもりを蒸発させている。
それに触れてしまった私はなんだか、嬉しいような懐かしいような、泣きたいような気持ちになった。 |
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