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朝の尾道を取り巻く空気は澄んでいる
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——朝。
尾道水道を走る備後商船が、海面に白い糸を引いて今治の方向に走っていく。
あたりを照らす陽光と、反対側にある向島の山の連なりと、海の青さがあいまって、絵にも書けない美しさとはこのことか、なんて思ってしまうのは、決しておおげさではないはずや。
——夕。
また海が見たくなって、再び展望台に登った。
黄金色に染められた海を、尾道と向島を繋ぐ渡船がゆっくりと泳いでいる。
あんなに青かった海が今はもうセピア色に変わっている。
もう今治に向かう船は動いてないのだろうか。
海は、瀬戸内海は目の前にあるのに、ふるさとは遠い。
愛媛で育った私は、切なくなった。そんなガラじゃないのに。
尾道は優しく、浮気な旅人の心を甘やかしてくれる。
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夕暮れどきの尾道はセンチメンタル |
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尾道案内図。ずっとこのままでいておくれ |
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