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おみくじを引いたら末吉だった
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千光寺公園
大同元年(806年)に創建されたとされる千光寺。尾道の大晦日の夜には、「驚音楼」の鐘の音が鳴り響く。 |
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ロープウェイに揺られてしばらくすると、千光寺が見えた。
千光寺は、平安神宮の朱塗りよりも濃く、赤い。
たくさんの小説や映画の舞台となった尾道には、燃えるような情熱が潜んでいるのかもしれない。
ロープウェイを降り、本堂に飾られた林芙美子の白黒ブロマイドを眺める。
職や棲み家を転々とし、食うものにも困る生活をしながら文学を志した彼女の若かりし頃の表情は、どこかに憂いを含んでいる。
と、かたわらでお守りを売っているおばちゃんに声をかけられた。
「この紙に願いごとを書いてお守りのなかに入れておくと、必ず叶うのよ」
必ず、ですか。
「そうです。必ず叶います!」
きっぱりといい切ったおばちゃんが妙に面白くて、私はお守りを買った。
「好きな人の名前を入れておくといいよ。ウフフ」
『放浪記』によると、林芙美子は貧しい生活のなかでいつも恋をしていた。 読んでいるだけでどきどきする。 恋多き女は、魅力的でなのである、たぶん。
一方私は、お守りに入れる紙に名前を書けないでいる。たくさんいすぎて困っちゃう、ならまだしも、ひとりも思いつかないのである。
林芙美子のように男に惚れる情熱と甲斐性が足りないんだわ、きっと。とほほ。 |