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創業延宝元年(1673年)の源平酒造
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源平酒造
源平酒造は、300年以上の歴史を誇る老舗。酒造りにかける熱い想いを、名水と良質の米と気候が支えている。
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久保さんの酒造りに対する頑固な
こだわりが、 旨い酒を生む
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大野には、四つの古い造り酒屋がある。
今回お話をうかがったのは、「源平酒造」の15代目・久保孝次さんである。
——源平酒造の歴史を教えて下さい。
「江戸時代から酒造業を営んでおります。大正時代に入って屋号を『万寿屋』から『源平』に改めました。源氏の強さと平家の優雅さの両方を併せ持った『甘・辛・ピン』の三拍子が揃った酒を造るという決意が由来しています」
——大野のどんなところが酒造りに適しているのでしょうか。
「大野は地下水が豊富な町です。酒造りに使う水だけでなく、家庭で使う水も地下水によってまかなわれているほどです。水はどこにも負けないと思いますよ。普通、水を容器に入れて置いていたら腐るけど、大野の水は腐らないんです。純度が高いんですね。極端な話、トイレの水だって飲み水にできるんだから(笑)。また、酒造好適米である『五百万石』の産地で、よい米が豊富に手に入るのも理由のひとつだと思います。地形的にも、大野は荒島岳の麓にある盆地であり、寒暖差の激しい土地です。自然の冷蔵庫で醸造できるのも強みですね」
——源平さんのお酒は、どんな味なんでしょうか。
「私は、酒をあくまでも『食中酒』だと思っています。だから、料理をひきたてるような酒を造ることを考えていますね。例えば、刺身を食べながら飲むとしたら、酒が甘ったるいと途中でだれてしまう。かといって、女性が飲んでも辛さは感じないような酒が理想です」
——奥が深いですね。
「うちは宣伝するのが苦手なんですけど(笑)、遠方のかたが『どこそこで飲んだから』といって買いに来てくださると、本当に嬉しく思いますね」
帰り際、久保さんは「よかったら」といって、地下水——別名「万年水」をタンクに詰めてくれた。
私が京都の伏見の杜氏さんだったら、この水を使って酒を造り、醸造道を極めようとするかもしれない。だけど、私はただの酒飲みなので、まずは源平の酒やウイスキーを飲んで酔っ払い、酔い覚めの水に甘い万年水を飲むという毎日を繰り返している。
われながら、贅沢者やと思う。
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