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京の茶室



【その5】茶室の空間/畳と床の文化


茶室の空間の基準は四畳半とされていて、四畳半よりも広い部屋を広間、四畳半よりも狭い部屋は小間(コマ)と呼ばれ、四畳半は両方の機能を備えていると考えられているそうです。二畳しかない『待庵』は小間になるわけです。そして、春夏秋冬を四畳に見立てて、半畳を土用として、茶室内での東西南北の方丈の四方に対し、陰陽を中心とした対座という考え方がうまれるというわけです。


ところで、もともとは、一般の人々は広間を屏風で囲って、その中で自由な茶会を楽しんだと言われています。この『囲い』が茶室の前身といわれていて、小間(コマ)囲いと呼ぶことがあるそうですが、コマという読みにはもうひとつ、茶の湯に深いつながりがあるんです。じつは、三千家の家紋が『独楽(コマ)』なんですね。楽焼(らくやき)の楽もコマと呼ぶそうですから、なんだかコマという言葉の中に、おもしろい意味がありそうです。


茶の湯には、その他、大服茶を大福茶と、露地を路地と言い換えたりと、言葉あそびもあるようですね。このように茶室を構成する要素にはひとつひとつ決まりごとがあるのですが、それをつなぐのが人の動作であったり、言葉であったりするんですね。


歩き方の図 四畳半が空間の大きさの基準とされているように、寸法の基準は畳によって決められていることが多く、畳の目地までもお点前のなかの基準として利用されます。これは、『京の町家』の連載のなかでも記しましたように、日本の空間文化は壁や柱ではなく床がまず基準とされているのですね。


例えば、茶室に敷かれた畳には、点前畳、貴人畳、客畳、通い畳、踏み込み畳と名前がつけられて、それぞれの役割が決まっているんですね。その決められた床に合わせて人の動作や位置が決まります。もともとは全く同じ寸法で同じ素材のものなのですから、このうえなく合理的な機能美を持って考えられているんですね。そのうえ、天然素材ときたら、私達日本人の評価とは別に、世界中の人々の関心が高くなるのは当然のことと言えるでしょう。


茶の湯というと、伝統的なもので格式があって、そのまま継承されてゆくものというイメージがありますが、時代に合わせてその空間もお点前も随分変化しているんです。そうでなくては、お点前の複雑な約束事の多い茶の湯が400年以上もつづくわけがありませんよね。それは、京都の町がそうであったように、新しいものを創り続けてきたからこそ、育まれた文化なのです。いえ、京都だったからこそ、今日まで茶の湯が文化として継承されることができたのでしょうね。


これからも、後世に伝えることができるように、京都に住んでいればこそ私達は、身近に茶室や茶の湯に接することができるのですから、ひとりでも多くの方がそのおもしろさを感じていただければと思います。


京都芸術デザイン専門学校専任講師 冨永りょう
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