祇園祭を遊ぶ
平安時代に起源を持ち、時代に磨き上げられた華麗な祇園祭。その全貌をご紹介します!
「動く美術館」と呼ばれるほど、雅やかな装飾がほどこされた山鉾たち。ちまきや護符などを授かることで乗せてもらえる山鉾もあるので、お囃子の臨場感を味わいたい人にはおすすめです。女性はあがれない山鉾もあるため、各山鉾町の会所で確認をお忘れなく。
7月17日午前9時。前祭を彩る22基の「山」と「鉾」が四条烏丸から長刀鉾を先頭に、市内をゆったりと練り歩きます。祇園祭のクライマックスである山鉾巡行を楽しむなら、交差点で方向を変える「辻廻し」は見逃せません。「えーんやぁら、やあ」のかけ声に、コンチキチンの鉦(かね)と笛、太鼓の迫力あるお囃子を間近で味わおう!
2014年からは後祭が復活し、10基の山鉾が7月24日に巡行します。
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※時間は目安です。都合により多少前後することがあります。
- 芦刈山(あしかりやま)
- 故あって妻と離れて難波の浦で芦を刈る老翁が、やがて妻と再会する夫婦和合の姿を表す(謡曲「芦刈」に基づく)。御神体衣装は天正銘の小袖で、山鉾最古。重要文化財に指定されている。
- 油天神山(あぶらてんじんやま)
- 油小路通にあり、朱塗の社殿に御神体の天神像を安置しており、この名で呼ばれる。この天神像は、町内にあった公家の風早家に祀られていたものと伝えられる。新見送りは梅原龍三郎原画の朝陽図綴織。
- 綾傘鉾(あやがさほこ)
- 山鉾の古いかたちをとどめる傘鉾の一つ。大きな傘と棒ふり囃子の行列が先導する。棒ふり囃子は赤熊(しゃぐま)をかぶり、棒を持ったものが鉦、太鼓、笛に合わせて踊る。
- 霰天神山(あられてんじんやま)
- 京都に大火があったとき、霰が降り猛火は消えたが、そのとき天神様が降ってきたので、町内に祀った。この言い伝えから「火除天神」とも呼ばれ、火除けのお守りを授与してくれる。
- 岩戸山(いわとやま)
- アマテラスオオミカミの岩戸隠れの神話に取材したもので、三体の御神体のうちアマテラスオオミカミ、タヂカラオノミコトを屋台上に安置し、イザナミノミコトは屋根上に安置している曳山。
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- 占出山(うらでやま)
- 神宮皇后が肥前松浦で鮎を釣って戦勝の予兆としたという故事による。前懸と胴懸は日本三景を描いている。神宮皇后は出兵時に懐妊中で、凱旋後、安産したため、町会所では安産のお守りを授与している。
- 郭巨山(かっきょやま)
- 中国「二十四孝」の一人で、貧しい郭巨が黄金の釜を掘りあて、母に孝養をつくしたという故事に因んでおり、金運招来の山といわれる。日覆い障子と呼ばれる屋根は、郭巨山にしかない特徴。
- 函谷鉾(かんこほこ)
- 鉾の名は、中国・斉の孟嘗君が家来の鶏の鳴き声によって函谷関を脱出できたという故事による。平成18年に復元新調された前懸は、もともと16世紀のベルギー製タペストリーで「イサクに水を供するリベカ」(重要文化財)。
- 菊水鉾(きくすいほこ)
- 町内にあった「菊水の井」に因んで名付けられ、鉾頭には金色の菊花をつける。蛤御門の変によるどんどん焼けでほとんどのものを焼失したが、昭和27年、88年ぶりに再建された。
- 四条傘鉾(しじょうかさほこ)
- 綾傘鉾と同じく、山鉾の古い形態を残す傘鉾の一つ。傘の上に赤い御幣と若松を飾る。昭和63年に囃子と踊りが復元され、117年ぶりに巡行にも復帰した。棒振りなどの踊りは色鮮やかな衣装を身につけた地元の小学生が演じる。
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- 蟷螂山(とうろうやま)
- かまきりと御所車の車輪が動く、からくりが山に施されている。からくり仕掛けがあるのは山鉾の中で「蟷螂山」のみ。装飾品は前懸、胴懸、見送りなどすべて人間国宝の友禅作家・羽田登喜男作で飾られる。
- 太子山(たいしやま)
- 四天王寺建立に際し、聖徳太子が自ら山中に入り、霊験により得た大杉で六角堂を造ったという伝説により聖徳太子を祀る。真松の代わりに杉を立てるのが太子山の特徴。智恵のお守りを授与している。
- 月鉾(つきほこ)
- 鉾頭に新月をつけ「天王座」には月読尊を祀る。屋根裏の草花図は円山応挙筆、破風奥蟇股(かえるまた)の白兎は左甚五郎作と伝わる。また前懸のメダリオン絨毯は17世紀インド製。軒桁、四本柱などの飾り金具もすばらしい。
- 木賊山(とくさやま)
- 御神体は謡曲「木賊」に因み、わが子をさらわれ一人、信濃国伏屋の里で木賊を刈る翁を表す。木賊山は幕末に一度焼失し、その後復興。一時期、舁山から曳山になったことがあり、現在でも山の柱には車軸を通す穴が残る。
- 長刀鉾(なぎなたほこ)
- 鉾頭に疫病邪悪をはらう大長刀をつけている。この長刀は、真剣は巡行の際、重く危険であるとして模造品を使用している。長刀鉾は古来よりくじ取らずで、必ず巡行の先頭を行く。生稚児が乗るのは現在この鉾のみ。
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- 鶏鉾(にわとりほこ)
- 堯の時代、天下がよく治まり訴訟用の太鼓も使われず、鶏が巣を作ったという中国の故事に因む。近年、復元新調された見送りは、もとは16世紀のベルギー製で重要文化財。宵山では初代・新調両方の見送りが並べられる。
- 伯牙山(はくがやま)
- 周の時代、琴の名人伯牙が友人鐘子期の死を聞いて、その琴の弦を断ったという故事による。前懸は慶寿裂の逸品で、軸に仕立てられている珍しいもの。伯牙山の会所飾りは伝統的京町家の杉本家住宅で行われる。
- 白楽天山(はくらくてんやま)
- 唐の詩人白楽天が、道林禅師に仏法の大意を問うところ。前懸はトロイ城の陥落を描いた16世紀の毛綴で、見送りは18世紀フランス製のタペストリー「水辺の会話」(昭和53年購入)であるなど、懸装品も世界の名品揃い。
- 船鉾(ふねほこ)
- 神宮皇后の説話によって、鉾全体が船の形をしている。鉾は木造船の技法を用い、縄がらみの技で組み立てる。舳先には金色の鷁、船尾には飛龍文の舵をつける。巡行のとき鉾の上には神宮皇后と三神像を祀る。
- 保昌山(ほうしょうやま)
- 和泉式部に恋した平井保昌が、式部の願いで紫宸殿の紅梅を手折る姿を現している。前懸と胴懸は円山応挙の下絵。宵山では故事に因んだ縁結びのお守りなども授与される。
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- 放下鉾(ほうかほこ)
- 鉾の名は「天王座」に放下僧を祀ることに由来する。かつては生稚児が乗っていたが、現在は操り稚児人形「三光丸」が稚児舞を披露する。放下鉾は駒形提灯に電球をいち早く取り入れるなど、先進的な側面も持つ。
- 孟宗山(もうそうやま)
- 中国の史話「二十四孝」より、病の母を養う孟宗が、雪中で母の欲しがる筍を掘りあてた姿を表している。見送りは竹内栖鳳筆の「白地墨画孟宗竹図」。これは織物ではなく、なんと肉筆の見送り。
- 山伏山(やまぶしやま)
- 御神体の山伏は、八坂の塔が傾いたとき法力で元に戻したという伝説が残る、浄蔵貴所の大峰入りを表す。かつて罹災した菊水鉾が再建を断念したときに譲り受けた懸装品の一部が、いまも山伏山を彩っている。
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※時間は目安です。都合により多少前後することがあります。
- 役行者山(えんのぎょうじゃやま)
- 修験道の祖・役行者が一言主神を使い、葛城と大峰の間に橋をかけたという故事に因む。欄縁の長さは山鉾随一、また轅(ながえ)の長さも舁山のなかで最長。
- 大船鉾(おおふねほこ)
- 後祭の大船鉾は、1864年の「蛤御門の変」で木組みや車輪などの構造物が消失した。以来、御神体や懸想品だけを飾る「居祭(いまつり)」として参加してきたが、2015年に150年ぶりに復興した。
- 北観音山(きたかんのんやま)
- 楊柳観音像と韋駄天立像を安置する曳山。新町通に面する町内には豪商が多かったため、豪華な懸装品を数多く所有している。山の後方右脇に掲げられる柳の大枝は、御神体・楊柳観音のシンボル。
- 黒主山(くろぬしやま)
- 歌人・大伴黒主が桜の花を仰ぎ眺めている姿を現す。御神体は寛政元年作。この御神体は能衣装同様、着付けが難しく、熟練の手のものを要する。前懸は中国の波濤に飛龍文様。
- 鯉山(こいやま)
- 御神体の鯉は、中国故事「登龍門」のように、滝を昇る鯉の雄姿を表す。前懸・胴懸、水引、見送りなどはホメロスの叙事詩「イーリアス」の場面を描いたもので、山を飾るために大工ノミで9つに裁断された(重要文化財)。
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- 浄妙山(じょうみょうやま)
- 宇治川の合戦で、三井寺の僧兵筒井浄妙と一来法師の奮戦の一瞬を見事な人形組みで捉えている。かつて浄妙が着用していた鎧は室町時代後期の作とされ、現在は重要文化財に指定されている。
- 鈴鹿山(すずかやま)
- 応仁の乱以前に起源を持ち、移転もなく今日に至る貴重な山。伊勢国鈴鹿山で、人々を苦しめた悪鬼を退治した鈴鹿権現・瀬織津姫神(せおりつひめしん)の姿を表している。
- 橋弁慶山(はしべんけいやま)
- 弁慶と牛若丸が五条大橋で戦う姿を表現している。牛若丸は橋の擬宝珠に下駄の前歯のみで立っている。これらの人形には永禄6(1563)年の古い銘がある。舁山のなかでは唯一のくじ取らずでもある。
- 八幡山(はちまんやま)
- 八幡宮を山の上に勧請したもので、その小祠は江戸時代の天明年間(1781~88年)に製作された総金箔の美麗なもの。八幡山も、応仁の乱以前から祇園会に参加していた古い山の一つ。
- 南観音山(みなみかんのんやま)
- くじ取らずとして巡行の最後尾を行く。楊柳観音像と脇侍の善哉童子増を祀る曳山で、北観音山と反対の右側に柳枝をつける。昭和63年に新調された見送りは加山又造筆の「龍王渡海図」。また、下水引も加山又造による下絵。
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