TOP  > 京都を知る・学ぶ  > 新撰組と京都  > 特別企画：対談「新撰組」を語る その2



京都史跡ガイドボランティア協会　会長　松吉　武雄　氏　
NHKの大河ドラマにも登場し、今まさに旬な「新撰組」。
DigiStyle京都のシリーズ企画で情報を提供していただいている「京都史跡ガイドボランティア協会」の会長・松吉武雄氏に新撰組のウラ話など、とっておきのお話をお伺いしました。
（ホスト役：宝ネットワークシステム株式会社　取締役会長　坂本　良隆）
【その2】近藤・土方の意外な素顔
松吉： 新撰組は会津藩とか京都守護職とか、公的機関ができない方法で治安を維持していますよね。
坂本： 会津藩主・松平容保が京都の警護をしておりながらも、公的機関が手の届かない仕事があるじゃないですか。尊皇攘夷派との意見の違いの中で新撰組をうまく使ったという印象がありますね。
松吉： 会津藩とか京都守護職とか、公的機関ですから裏の仕事はできないですからね。新撰組というのはそういう役目の集団ですから、自分の仕事だと割り切ってそれに徹した土方はある意味では立派だと思います。
坂本： 油小路事件とか、芹沢鴨の（暗殺）事件とか、やり方がきたないと言えばきたないような。
松吉： それでいいんです。自分のところは犠牲を出さないで、相手に恐怖感を与える、あるいは相手を殺す。これが目的ですから。情に流されることなく、仕事に徹する土方というのは、日本人にはちょっと珍しい人物だと思います。
坂本： 土方もテレビではかっこいい青年ですよね。
松吉： 実際いい男だったらしいですよ。私は新撰組では近藤より土方のほうが好きなんです。近藤は人間としては堅物で真面目なタイプ。もともと武士ではありませんからなんとか幕府の武士になって旗本になりたいと、特に後半から上昇志向が強くなります。一方土方は欲得がないですね。出世しようとか金を儲けようとか女性にモテようとか。全然ないということはないでしょうけど。死ぬ時も北海道の五稜郭で……。
坂本： 最後まで戦うんですよね。
松吉： 土方は潔く死にます。ところが近藤は捕まるんです。それも自首というか自分から行くんです。甲陽鎮撫隊を組織して官軍と一戦交えようと甲州城へ行くんですけど、途中でみんな遊びすぎましてね、遅れるんですよ。着いた時には板垣退助の官軍が甲州城を占領していて、負けて江戸に帰ります。そして土方が止めるのも聞かず自ら官軍の屯所に出向くんです。以下は私の推測ですが、近藤は「俺くらいになれば、新政府はめったに殺さないだろう、うまくいけば逆に使うかもしれない」という読みがあったんだと思うんです。自分を買いかぶりすぎていたんですね。しかし、土方という人はそういう甘い考えは持っていない。
坂本： テレビのイメージでは近藤は清廉で、土方はやんちゃで色気も多く、あれこれやりそうな人に写るんですけどね。
松吉： 実際は逆だと思いますよ。近藤の愛人としてはっきり分かっているのは三本木の駒野さんで、男の子どもまでできています。その子どもは近藤が死んでからお坊さんになったそうです。それから大阪の芸者で島原の美雪太夫、その妹のお孝。近藤は女グセに関しては芹沢のことも言えないんじゃないかなぁ。土方にも祇園あたりに愛人はいたらしいですが。まぁ動乱の時代を生きてきた人に、今の道徳観念だけで律するのはかわいそうですよね。
坂本： 明日の命があるかないか分からないですもんね。刹那的ですね。
松吉： 隊士は栄養不足で風邪を引く人や寝込む人がものすごく多かった。池田屋事件の時も隊士が100人くらいいたにもかかわらず、実際行ったのは35、6人。大半の隊士が壬生の屯所で半病人で寝てたんです。結核と性病が多かった。
坂本： 100人のうち35、6人とは本当に少ないですね。
松吉： 新撰組というのは真面目な人間ばかりじゃないんですよ。暴れ者でケンカが好きで剣術が達者、そんな20～30歳までくらいの連中がほとんどで統制するだけでも大変ですよ。土方が作った局中法度がなければあの組織は持ちませんでしたね。もう相当処刑されています。脱走したら処刑、勝手に金策したら処刑、人妻を犯すとか女性関係でおかしなことをしたら処刑。背中に刀傷を受けた場合は切腹です。普通人間は情けがありますけど、俺がこの組織を締めなければと、それをやれる土方っていうのは優秀な武士だと思います。
坂本： テレビドラマとはかなりイメージが違いますよね。
松吉： 新撰組が若い女性にものすごい人気があるでしょう。これは土方と沖田ですよ。沖田は結核で若くして死にますよね。日本人はいい男で若くして死んだら人気がでるんです。
坂本： 美人薄命の類ですね。美男薄命。
松吉： 沖田は、テレビとか挿絵なんかを見ますと、わりにヤサ面のいい男でしょ？　実際はふっくらしていたそうですよ、顔は。
坂本： 写真では近藤はほんとに怖そうな顔。沖田は柔らかい顔をしていますよね。
松吉： 資料を見ますと色白でふっくらしていたそうです。人間は、あの人よく新撰組が務まったなぁと思うくらい天真爛漫ですよ。ものすごく純真で、素直で。近藤や土方の言うことはよく聞いたと思います。それは大河ドラマでも一緒ですね。剣は道場では近藤もかなわないくらいで。ところでなぜ新撰組がダンダラ服を着ているのかはご存知ですか？　ダンダラ服は近藤が忠臣蔵が好きで、隊士服を作るのならあれにしようと決めたんです。土方の出身地・日野に行ったら資料館がありますから、一着か二着は残っていると思いますよ。
坂本： 今日は疑問に思っていたことや秘話をいろいろ教えていただいてよく分かりました。どうもありがとうございました。
協力：「さつき」
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