赤坂 泰雄
(ホスト役:坂本 良隆)
  今回は、京都リサーチパーク (以下、KRP)の赤坂社長を迎え、「京都のIT環境」というテーマで、京都のIT業界の現状と未来についてを語っていただきます。
(その1)京都リサーチパーク
坂本: 赤阪社長は平成12年6月から社長にご就任ですが、KRPさんにとって何代目になりますか?
赤坂: 3代目なんです。
坂本: つい最近新館も完成し、ますます事業としては広がっていっているようですね。
赤坂: しんどいですよ。本音を申し上げますと…なかなか。
坂本: あそこは私の子供のころ、大きなガスタンクがあった所ですね?
赤坂: もともとは工場だったんですよ。
坂本: 工場ってガスを作る工場ですか?
赤坂: 石炭を原料にしてコークスを作ったり。
坂本: タンクじゃなくて工場そのものがあったんですね。大きなタンクがあるからそれが非常にシンボリックでした。
赤坂: 20年ぐらい前からやってまして…まあやっぱり地元との共生というんですか、そういうものをふまえてやって行こうと。
坂本: なるほど。ところで社長は京都ですか?
赤坂: 大学は京都なんですけどねえ。こんなことになるのなら、もうちょっと京都についても勉強しておいたらよかったと思うんですけど、もう京都に帰ってくることないと思ってましたので。もともと僕はいわゆる工場の建設の構想をつくっていたんですよ。デザインしたり、施工管理したりしていたんですよ。まさか京都へは戻れないだろうなと思っていたのが、行けと言われて。こんなことだったらもっと先生と仲良くしておいたらよかった(笑)。
坂本: 難しそうなお仕事で、我々には全然わからない分野ですが。
赤坂: そんなものはもうすべて忘れました。今でもその当時の本を、まだ後生大事に棺桶まで持っていこうと置いてますけど。読んでも全然わかりません。当時よくこれが理解できたなあと(笑)。
坂本: 時間が経つとそうなってしまいますかね(笑)。
赤坂: ところで、酒造メーカーさんというのは、何というか我々にないような余力の部分がたくさんあって、すごいなあと思いますね。
坂本: この頃はそうでもないですよ。昔は儲かったから余力の部分というか、業種の関係上、頻繁に飲み歩いたりして、ちょっと一般の会社と違った華やかな部分もありましたけど。近頃はだんだんと厳しくなって、ごく平均的なサラリーマンになってしまって、一頃のスケールはとても。しかしそうは言いながらも、やっぱり我々は祇園を始め料飲店の皆様には、親しく接しなければ。
赤坂: 僕は京都はまったく知りませんけどね、昭和50年台というのは大阪のキタでは結構ノリがきいたんですよ。結構うちの社員もそういうところでお金を使えたというかね。昭和50年台から昭和60年くらい、もうキタに行けばすごい人気者で。
坂本: そういう古き良き時代がなくなって、ちょっと寂しい部分がありますね。
赤坂: それでも京都は京都なりに、艶めかしいというか奥ゆかしいというか、そんなところは相変わらず…。
坂本: 昨年の秋からは、テロの影響で海外旅行客が国内に流れて、京都観光も盛況だったようですね。京都はやはり観光を大事にしなければ…そうは言っても、ハイテクもやっていかなければ…ハイテクと言えばKRPさんはどういう形でこれから?
赤坂: うちも基本的にはテナントさんに入ってもらってナンボの世界ですからね。入ってくれる人に魅力ある形を提供してかないといけないんで…それがITの関係では割とうまくいっているんじゃないかと思います。
坂本: そうですね。当社とも関係の深い、あるコンサルタントがつい最近KRPさんに入居して、非常に環境が良いとしきりに誉めていました。彼が言うのに、KRPさんはいろんなベンチャーの、特にバイオに力を入れられているから、もっと親しくしないと駄目だと。今のところ当社のサーバを一部預かって頂いているだけですが、確かに他にもいろんな発展形があるだろうと考えています。
赤坂: 今後、市長に発表して頂いた京都構想として、さらに京都自身をね…。
坂本: いろいろな構想の中に情報化というのが出てきてますけど、トータルでは遅れましたね、京都は。だから官に任せっきりにするのではなく、民も一緒になって引っ張らなければいけない。そういう意味で、大阪ガスさん出資のKRPさんという会社の役割は重要ですね。
赤坂: 大阪ガスも当時はお金があったんですね。今ならちょっとできません(笑)。
坂本: 仮に土地があったとしても、上屋を建てて、それからそこに入居してもらって、ということで採算を考えると、なかなか計画には乗りにくいかなと…。
赤坂: 20年ぐらい前は、まだまだうちの本体も余裕がありましてね。だから20年の経緯、30年の経緯でものごと考えるという、そういう部分も許してもらえたんです。今はできません。「何年くらいで累積赤が消えるのか」て聞かれて、「30年くらいかかる」と言ったら「あほ。そんなんでいいんか」となる。
坂本: 認める側に、非常な勇気のいる事業計画ですね。
赤坂: うまくいろんなものが回転しましてね。それで、10年くらい経ってからかな、予定の3分の1くらいで累積が消えたんで…。
坂本: それは素晴らしい。やはり事業というものは難しくて、余力がある意味必要ですね。その点では、KRPさんは非常に文化的というかアカデミックですから、そこがいい。例えば酒類業界でも、月桂冠さんや白鶴さんの資産とか美術館とか…本当に素晴らしくて、我々とは余力が違うという感を受けます。町おこしにしても、そういう余力を持った「だんな衆」がいなければなかなか困難なことが多い。
赤坂: 今そのだんな衆の力が弱っていて。
坂本: 特に京都は繊維とか織物とか、以前は非常にパワーのあっただんな衆たちが、厳しい状況に置かれています。ハイテク関係はなかなかだんな衆になってくれないし…。堀場さん(堀場製作所の会長)は御社にいろいろと関与されているのですか?
赤坂: いろいろな部分でご意見を頂戴しています。あの方もKRPに対して思い入れがあって…。
坂本: なるほど。
赤坂: あの方には、KRPは自分がやった事業だという自負がある。我々も素晴らしい人にめぐり逢えたと思っています。特にKRPの初代社長なんか、今のメンバーとは違う昔気質なところがあって、堀場さんと相通ずるものがあったんだろうと思うんです。
坂本: 我々はお顔を存じあげていても直接話す機会はないのですが、今、京都で一番元気な方のお一人ですね。最初はベンチャーというか、技術力があっても資金がなかったり…でもあんなに立派な会社にされた。話は変わりますが、KRPさんの施設は、順番に東、西と建てて行かれて、今回また新しいものが竣工したんですよね。
赤坂: 去年6月に竣工しました。それは先代社長がいろいろ発案したもので、最後は僕が見たんですけど、僕はプランニングだけでもいいから次の建物をやりたいと思っていますね。
坂本: バイオのベンチャー企業を集めたいとかそんな目的で?
赤坂: あれはITです。もともとIT企業を集めようということで。
坂本: なるほど。中に入っている企業同士の交流も、最近は結構活発になってきているらしいですね。
赤坂: 企業の方々は、KRPに集まる同じ業種の中でビジネスチャンスが作られていくということを、将来的に期待されていて…。
坂本: 確かに。ベンチャーなどの小さい会社が大手企業にアプローチしても、なかなか相手にされないところがあって、みなさん苦労しておられますね。京都でね、成功していくのは厳しい感じがあります。でも立派に成功した企業もありますから、それは素晴らしいと思います。
赤坂: どこか上場してくれる企業がでてきてくれたら…。
坂本: 「まぐまぐ」はまだでしたか?
赤坂: 「まぐまぐ」は子会社のマグクリックを一応上場させて…。「まぐまぐ」本体は、上場するとそれなりに資金が集まりますけど、逆に自由性がなくなるんで上場せずに…。
坂本: すぐにでも上場しそうなのに?
赤坂: あそこも最初は机ひとつで、月5万円の家賃頂いてやってたんです。
坂本: ほう。
赤坂: その机ひとつも3社で借りていたらしいです。その皆さんももう今や一流です。
坂本: 立派な会社になって…。
赤坂: まあアメリカでも最初は…。
坂本: HPさんなんかまさにそうですね。
赤坂: サンマイクロ社にしてもそうですね。
坂本: 赤阪社長はITはお強いのですか?
赤坂: 僕は本来は強いはずなんですよ。そのはずなんですけど長いことやってませんでしたので…ガスの中でモノづくりをずっとしてきたんで、ITの世界から離れてしまって…大学のときはそういう系統の学科だったんですが。僕らの友達はIT関係あるいはコンピュータ関係やってるものが結構多いですよ。
坂本: 今度バイオになってきたらまた難しいですね。
赤坂: ぜんぜんわかりません。
坂本: バイオとコンピュータが引っつくのだって、素人には全く現実感がなくて、ちょっと引いてしまうようなところがありますね(笑)。
赤坂: 坂本社長は営業畑ですか?
坂本: もともとは財務です。当社がまだ宝酒造の情報システム部の時代に部長にならせて頂いて、宝酒造もこりゃ進歩しないといかんということで、企画書を書いて機能子会社として独立しました。オージス総研さんみたいに、立派な規模でできたら良かったんですけど。
赤坂: オージス総研はもともと大阪ガスのコンピュータシステム部門でして。650万戸のお客さんと直結してますから、ガス料金の計算したり、そういうことをすべてオージス総研が受け持ってやってきましたからね。
坂本: 早くから独立しておられますね?
赤坂: そうですね。というのは、やっぱり大阪ガスを引きずったのではうまくいかないのですよ。大阪ガスの社員というのは、本当にコンピュータシステムに賭けようという気持ちがない。その点オージス総研なら、自分のイメージどおりの仕事をやれる。オージスは今、マーケットプレイスを狙っています。6号館にデータセンターをつくりまして…。
坂本: KRPさんの中にデータセンターをですか?
赤坂: ええ。京都の企業が仕事を出すときに、東京の企業に任せて、そこから孫受けで京都の企業が受けてる。しかもその仕事のためのサーバーは東京にある。東京はサーバーが高い。こういう状況では京都は浮かばれないという構造がわかってきまして、やはりサーバー自身も京都に必要ではないかと。
坂本: 本当に残念ながら、いつも京都は抜けてしまうんですね。しかし、その構想は将来が楽しみですね。
赤坂: でもデータセンターを先につくってから、お客さんを呼びにかかった。これは勇気がある(笑)。普通はそこそこお客きゃくさんの影が見えてセンターをつくって、最後に条件設定をする。その点、今回は大胆です。何の形もなく、まずハコモノをつくってから考えようかと…。
坂本: 我々が仮に預けるとしても、オージスさんが見て下さるなら安心でよすね。ブランド力があります。
赤坂: ありがとうございます。私共のデータセンターが通常と違うのは、ISPさんもそのキャリアさんのメンテナンスも、いろんなオプションを用意して、選択いただけるという形にしました。今後、京都市さんにもかなりの部分で活用していただけると…。
坂本: なるほど、高い評価を受けている訳ですね。

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