中村 達
(ホスト役:坂本 良隆)
  今回は、アウトドアのためのアウトドアライフではなく、人間の生活に密着したネイチャー・アウトドアライフを提唱する中村 達さんを迎え、「アウトドアズとこれからの日本そして京都」というテーマで、日本・京都の現在の姿を語っていただきます。
(その1)ITも使いよう
中村: 長野県のある村に行く機会がありました。その村は、現在光ファイバーを村の各家までひいているそうです。でも、その発信するコンテンツがないそうです。多額の予算をとっている割に中身がないんですね。どうして使おうかと。
坂本: もったいないですね。長野オリンピックの時は、長野に行ってきました。長野県に泊まってバスである村に移動したのですが、道路も良くなっていました。道路網だけでなくて、通信網までよくなってるんですね。
中村: 補助金がたくさん出まして、IT戦略として光ファイバーを引いたのですが、中身がな〜んも無くて。そういう事がそこらじゅうで全国で起こっていますね。
坂本: 確かに箱ものは、たくさん綺麗に作りましたけど,稼働率はどうなの?という問題がありますね。
中村: 4月から6月は、地方での講演や視察依頼、アドバイス依頼が多くて、家にいたのは1週間くらいしかいませんでした。現在、東映でビデオの監修の仕事をしていますが、そのテーマが「歩く」です。現在ウォーキングが盛んです。
「健康ウォーキング」「里山を歩く」「山へ登る」この3部作を撮影しています。監修といっても40分×3本で、それぞれロケ場所が違いますし,俳優も2名使い,カメラも2台、総勢スタッフ20名です。かなりの予算をかけて撮影しました。あと、CATVとインターネット、新聞広告で通販するようです。パッケージは総監修で私の写真が出る予定ですが、売れへんぞなんて言うてます。(※8月21日に全国一斉発売されました。)
坂本: それだけニーズがあるという事の現れですね。ロケの場所はどこですか。
中村: 八ヶ岳の山麓です。
坂本: 八ヶ岳といいますと私自信とても好きな場所でして、山に登るのではなくて、裾野は全部知ってます。川上村は特に好きです。近々に、上山田にも行きます。この上山田もCATVを導入したいという話があって、富士通さんを紹介しに行って、ついでに川上村にも行きます。
話は変って、私が高校3年生の時にいい先生にめぐり合いまして、考古学を趣味でおやりになっていて、黒曜石のやじりが出る大深山遺跡に夏休みに行くから行かないかと誘われました。その辺りは、現在のような高原野菜栽培はまだしていなくてある意味なにもない貧しい村で、食べるものというと岩魚と野菜と乾物の魚ぐらいでした。運悪く受験に失敗して翌年もまた行きました。そうすると村で親しい人もでき、子供とキャッチボールをしたりと今でも非常にその頃のことを良く覚えています。子供達と一緒に岩魚をとった時には、魚影は見えるし、自然の川、魚はこんなものかと感動しました。当時、京都の鴨川は、近くにありましたが染色と廃棄物の影響で汚れていましたし、御所の自然くらいでした。本当の自然というのは、こんなものなのかなと思いました。いわゆる「モノ」という意味での生活は貧しいわけですが、本当の意味で何が豊かで、どっちが豊かなのか最近とくに思います。その後、アメリカの支援で、高原野菜を作って都会に出荷することをし始めたとのことですが。
中村: そう、キープ協会のことですね。Kiyosato Educational Experiment Project(
http://www.keep.or.jp/keepinfo.htm)ができました。戦後、立教の教授ポールラッシュが清里に入り、農業教育を始めた影響だと思います。ジャージ牛を持ちこみ、アメリカ式農業を始めました。
坂本: ちょうど、昭和38年くらいかと思いますが、火山灰地を生鮮野菜ができるようになり、初めてレタスを食べました。当時は白菜、キャベツくらいでしたから、今その村は本当に豊かです。
中村: ものすごく豊かで、一件あたりの年収が最低でも2,000万円はあるそうです。冬は海外に遊びに行くなどと聞いています。
坂本: 川上村は、税収入も豊富で、そのお金で子供を海外研修にいく制度まであるそうです。早くにCATVを導入して環境を整えたそうです。もちろんみんなパソコンを持ってます。いわゆる都会から離れていても、このように自然環境の中でITを活用すると都会となんら変りのない、いえ本当の意味で豊かな生活もできますね。
中村: 昨日大阪のスポーツ業界の組合に40数社集まった会合があって、2時間ほど講演してきました。
坂本: お忙しいですね。アウトドア関係のお仕事ですが、講演などが多いですか。
中村: 私の場合は、講演もありますが、戦略づくりが多いです。私個人の趣味では、山へ行ったり、フライフィッシングをしたりですが、仕事では、戦略づくりですね。近々では、文部科学省の関係者などとシンポジウムを行います。来年の4月から、学校完全週5日制と「自然体験学習」が始まります。
坂本: もう週休2日制の義務教育は確定ですね。月に1回位は何か企画が必要ですよね。
中村: 学校は自然体験学習を行うようにという法案が先の国会で通過しました。都道府県と市町村の法令の中に自然体験学習が奨励義務として明記されたわけです。ですからどこの学校もやらなあかんわけです。そうなってくると波及効果としてお父さんは月に1回くらいどこかに子供を連れていかなあかん。そしてお金をかけんと遊ぶ方法を考えなあかんわけですね。それなら自然に行くのが一番簡単。宝酒造さんでいうと、缶チューハイを持っていく場が増えてきて、今までとは違うマーケットが出てくるということです。
私は、そこでこれからいったいどういうマーケットが出てくるかを国や関係機関と一緒に考えようと提案しました。最初はスポーツ、レジャーの産業を集めましょうと決め、声をかけたら、すぐに10数社集まりました。他の産業は少々待ってもらっている状態です。メンバーをみると企業の役員クラスが直々に出てくるようですね。(※その後、約100社・団体が集まっている)
坂本: でもそんなおじさんが来てもいかがなものでしょう。
中村: それが、みなさん海外に行ってるから海外事情がよくわかっているんですね。外資系の企業もたくさんくるので、日本支社長の外国人もいます。パタゴニア、L.L.Bean、ミズノ、アシックスなどアウトドアメーカーなど10数社が集まる機会を作りました。全部で30人、ボーイスカウトの代表組織も来るのですから、裾野は何十万人になります。報道は7社。
国の政策では、文部科学省が中心となり、「子供達の生活スタイルはどうなっていくか」というテーマで話します。環境教育とか自然教育というのは、大人になんぼ言うてもダメで、子供の時からキチッと教育する必要があります。アメリカは1980年代にそれをやったわけです。大成功でした。国立公園が良くなり、アウトドアレジャー産業も成長しました。同じように日本がトレースするわけではないが、チャンスが来年から出てくるはずです。それにピタッとあてはまる動きを我々も先に準備をおこなおうと呼びかけたらワッと集まってきたという事ですね。9月に拡大して村長、町長にも声をかけようと思っています。村おこしするなら「これ」やでというよに。
坂本: そうですね。ある意味、村おこしといって、変な箱モノを作るより、自然をそのように使って遊ぶことが大事だと思います。

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