【第3回】対談(その5)

松崎 宜晃(正的院)
(ホスト役:坂本 良隆)
(その4)京都と高層ビル
松崎 この南禅寺近くに、とある企業が所有していた素晴らしい京都の別荘「カユウ荘」がありますね。南禅寺の塔頭がもともとあったところですが。
坂本:

企業が所有することにおいて、「ぜいたく」だという意見や時代背景もありまして手放したそうですが、「ぜいたく」というより、優良な企業が京都の「文化」を維持するという意味で保有するのは、非常に大切な事に思いますね。

松崎

そうですよね。今日のこの対談の意味はそこにあるように思います。

坂本:

その素晴らしいかけがえのない文化をぜひ意味の分かる方に維持していただきたいですね。お金を本当に使うところに使ってもらいたいですね。所有者が変って周辺の景色と合わない、そんな手の入れ方は絶対してほしくないと思っています。

松崎

すでにもうその辺り、石垣をつぶして車が入るようにしてしまいました。

坂本:

散策するだけでいい場所なのに、この辺りの雰囲気が変るのはしのびないですね。
ところでご住職は、京都のお生まれで京都育ちでいらっしゃいますか?

松崎

でも京都人ではありませんね。父は九州、母は四国ですから。

坂本:

南禅寺のお坊さんとして京都はどのように思われますか。

松崎

非常にいいところと思います。もう世界に誇れます。

坂本:

最近、誇れるものも変わってきていませんか。

松崎

もちろん変ってきていますが、その価値判断が大事ですね。特に言うなら、京都ホテルの高層ビルの問題では、みんな反対しましたが、南禅寺としては別にという考えではありました。しかし実際、ホテルが建って三門の上に上がって見てみると、それが目の前です。真正面に衝立のように建ちはだかっています。南禅寺へ来て、三門に上がってどう思うかが問題です。一回上がって見てください。

坂本: やっぱりあの建物は、絶対京都の真中にあるべきものではないと思います。効率化を求めて高い建物を建てますが、本来の建物の機能を重視する前に、周りと建物の融合を考えることが重要ですね。
松崎 私もそう思います。もっと京都の町全体を総合的に判断して建物の高さを考えて、南の方で高い近代的な建物を作って、真中には景観にあったものを建てればよっかたと思います。
この辺り南禅寺は、特別風致地区でしかも古都保存法の適用される地区です。建蔽率は20パーセントです。山内寺院の重要文化財を収納する収納庫を作るよう国から指示を受けたことが以前ありました。お寺の場合、檀家さんの寄付で建てるわけですから、できるだけ費用は押さえたい思いがあったにもかかわらず、建造物等への設計変更など注文が入り、結局、許可までに時間がかかり、予算が倍近くになってしまったと聞いています。お金の出所とその建物の意味をを考えてもらいたかったですね。

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