こんにちは。あんこ好きライター、かがたにです。
飲食店の取材などをしていますと、もともとは裏メニューやまかないだったものがレギュラー化しまして・・・なんてお話を耳にすることがままあります。
今回ご紹介するあんこも、ちょっとそれに近い感じかもしれません。
百貨店の短期イベント用に作ったものが、予想外に人気が出て定番商品になったというお話。
亀屋良長さんの本店は四条堀川の一筋東、醒ヶ井通(さめがいどおり)の角にあります。
昨年11月に改装をされて、以前の面影を残しつつ、さらに素敵な空間へと生まれ変わりました。
同店の和菓子作りに欠かせない良質な地下水、「醒ヶ井」の水も健在。
あんこ炊きにも、店内で地下80mから汲み上げた地下水を使ってはります。
当代で8代目となる老舗ですが、私が今回ご紹介したいのは「焼きあづき」(税込540円)という、ごく最近の商品。
シンプルなパッケージに、SOU・SOUさんデザインのタグが可愛いです。
これぞまさに普段着のおやつ、という感じ。
粉糖ではなく和三盆がまぶしてあるのも和菓子屋さんらしいですねー。
パッと見は、ほろほろのスノーボールクッキーのような感じですが・・・
そんな夢見がちな食感を予想していると大きく裏切られます。
ザァァクゥゥゥ!!
いうなれば、ふわふわ、トロトロ、サクサクばかりが持て囃される甘いもの界に一石を投じるROCKな魂!
さながら、「やわらか〜い♪」「とろける〜♪」に慣れきった現代にお見舞いするドロップキックの如し!!
つまるところ、
有り体に申せば、
既にお分かりの通り、
・・・っ硬い!!!!
でも、それが、YA・KI・A・ZU・KIーーー!!!
(すみません、取り乱しました)
百貨店の催事用に「何か“エコ”をテーマにした商品を」と頼まれ、生まれたこの商品。
ぼうろ生地の中に、こしあんを作る際に出る小豆の皮がたっぷりと混ぜ込まれています。
生みの親は亀屋良長さんの中に自身のブランド「吉村和菓子店」を展開する吉村由依子さん。
8代目の奥さまでいらっしゃいます。
「焼きあづきに関しては、私が全粒粉のクッキーやクランチ系の食感が好きなのが影響しているかもしれませんね。」
ザックザックと噛み進めると、小豆の香ばしさと和三盆のやさしい甘さが口の中に広がります。
小豆要素は本当にこの皮だけだそうで、それでもこんなにしっかりとした香りがすることに驚きます。
こしあんは小豆を煮て、皮と呉(中身)を分けるように漉して、晒した呉に糖分を加え練り上げるのが一般的。
甘みを加えてない皮は傷みが早いため、搾ってからすぐに乾燥焼きをしなければいけません。
これが、乾燥焼き後の小豆の皮!
120度ほどの低温で何時間も焼かなければならず、地味にオーブンも占領してしまうので、当初は他の焼き菓子とスペースの取り合いになっていたそうです。
この乾燥焼きの工程だけでも、どこか他に頼めないかと検討した時期もあったそうですが、やはり鮮度の面からは搾り立てをすぐに自店内で焼くのがベストだろうという結論に。
口の中に広がる小豆の香りが濃いのは、こうした素材への愛情があるからなのですねー。
(それがたとえ、これまで捨てていた搾りかすであってもなのですから、メインの小豆は言わずもがな!)
そして、ついに今年、オーブンが追加導入されたそうです。ビバ!安定供給!
結婚前はフランス料理やデザートの勉強をされていた由依子さんですが、もともと和菓子は大好きだったそう。
「改めて和菓子の勉強をさせてもらったことで、職人さんの技術の素晴らしさや、1つの商品の手間のかかり具合を知ることができ、それまで抱いていた“和菓子はちょっとお高い”というイメージも変わりましたね。」
「でも普段のおやつということを考えると、私なら500円で買いたい!って思ったんです。うちの基準でいくと、もう少し価格帯が高くなりそうだったんですけど、そこは社長にまけてもらって。」
しかも、もしかしたら近いうちに価格はそのままで(これ重要)、パッケージがちょっとしたおつかいものにもできるデザインに変わるかも・・・とのこと!
おやつの気安さはそのままに、これからはいろんな方にこの美味しさをおすすめできると思うと嬉しい限りです。
「実は私を含め、誰もこの商品が短期間のイベントでそこまで売れるとは思っていなかったんです。でも、想像以上にお客様に喜んでいただけて、それまで捨てていた小豆の皮がとても価値のあるものに思えてきました。しばらくはどこに行ってもあらゆる搾りかすが気になってしまうほど(笑)!」
って、めっちゃエコに目覚めてますやん!
そして、すごいのはこれが一過性のブームに終わらずに、次へと繋がっていること。
小豆の煮汁を活かした「あづき餅」や、人気ショコラティエの「Dari k」さんとのコラボで、ローストしたカカオの皮を使った「焼きカカオ」など、次なるヒット商品を生み出しているのです。
その全ての始まりは「焼きあづき」にあります。
小豆が秘めた無限の可能性が、それだけいろんな扉を押し開けたということなのでしょう。
ちなみに、「ふっくらと柔らかく、皮は口の中に残らない」のが粒あんにおいては良しとされるなか、
このおやつは「ザックリと脆くなく、口の中で皮が積極的に存在感を主張する」わけですが、
この大好きなおやつタイムをおばあちゃんになっても続けたいので、
私は自分の歯を死守したいなと思います。
「焼きあづき」は、柔らかいだけがあんこの魅力ではないと教えてくれた、エコでROCKなおやつなのです。
店舗・施設名 | 亀屋良長 |
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住所 | 京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19 |
電話番号 | 075-221-2005 |
営業時間 | 9:00~18:00(茶房 11:00~17:00) 年中無休(元旦、2日除く) |
ホームページ | http://kameya-yoshinaga.com/ |
Writerかがたにのりこ
Writerかがたにのりこ
あんこをこよなく愛し、月に2回は自宅で餡炊きをするフリーライター。 元・漉し餡党、現在はあんこ博愛主義者。