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ようこそ、おおきに。映画ライター椿屋です。
みなさん、京都お好きですか? 三角関係モノ、お好きですか?
今回ご紹介する『ゆきてかへらぬ』は、実在したひとりの女と彼女を愛したふたりの男の奇妙なトライアングル・ラブストーリーです。
女は、駆け出しの女優・長谷川泰子(広瀬すず)。
男は、不世出の天才詩人・中原中也(木戸大聖)と、彼の才能に魅せられた文芸評論家・小林秀雄(岡田将生)。
顔面偏差値、たっかい!!!
映像美の解像度も、たっかい!!!
(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
時は、大正時代から昭和初期。
まだ何者でもない若者3人が京都と東京を舞台に、愛し愛され、傷だらけで生きていきます。
クリエイターゆえの才能への憧れと嫉妬。そこに絡み合う男女の情愛。描かれるのは、傷だらけになりながらも望む未来へ進み続けた男女の人間模様です。
(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
異なる価値観と、互いへの尊敬。烈しく情を交わし刹那にすれ違い、奇妙なバランスで保たれる二等辺三角形――そこには、芸術家たちの青春があったのです。
ときに爽やかに、どきに泥臭く、足掻く。その姿に目が釘付けになったり、顔を背けたくなったりしながら、彼らの刻んだ軌跡を間近に感じてみてください。
(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
本作は雪降る京のまちから始まります。
ひとつの通りを丸々再現するほどの大きなセットが組まれ、そこを前半は京都として、後半は東京として撮影が行われました。
美術監督・原田満生さんは言います。
「京都は墨色の世界にしたかった。つまり、艶っぽいモノクロの世界。黒、中也の番傘の赤、そして柿のオレンジ」――これらを際立たせた恐いくらいに美しいファーストシーンが、それはもう力技でぐぐぐいっと、観る者を瞬時に物語の世界へと引き込むことに成功しているのです。
(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
ロケ地としては、中也と泰子がローラースケートに興じるシーンで使われている妙心寺が印象的です。
正法山妙心寺は、全国3400もの臨済宗妙心寺派の大本山。その三門・法堂・仏殿のスケールは圧巻で、映画やドラマのロケ地としても有名です。
時代劇では武家屋敷エリアや寺町に見立てられる境内は、狭く入り組んだ路地が張り巡らされていて、その路地は白壁に石畳。とくれば、とても印象的なカットが撮れる重要なスポットなのは間違いありません。
(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
中也と秀雄が海棠の花の下で語らうシーンは、鎌倉にある「妙本寺」で撮影された
『壬生義士伝』(2003年/松竹)やNHK大河ドラマ『新選組!』(2004年)といった新選組作品でも“いにしえの京の都”として重用。最近では、池波正太郎生誕100周年作品『仕掛人・藤枝梅安2』(2023年/イオンエンターテイメント)で京都市内の風景を描き出し、ムロツヨシ主演『身代わり忠臣蔵』(2024年/東映)においては江戸城下として登場しています。
その他、「大岡越前」「必殺仕事人」「剣客商売」「雲切仁左衛門」……と、時代劇ドラマでも引っ張りだこのロケーションなのです。
大正時代の世界観を構築するために欠かせない妙心寺の“縁の下の力持ち的存在感”を、大きなスクリーンでご堪能ください。
(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
『ゆきてかへらぬ』https://www.yukitekaheranu.jp
2月21日(金)全国公開
出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生 ほか
配給:キノフィルムズ
X(旧Twitter):@yk_movie2025
Instagram:@yukitekaheranu_movie
店舗・施設名 | 妙心寺 |
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住所 | 京都市右京区花園妙心寺町1番町 |
電話番号 | 075-461-5226(妙心寺法務部) |
営業時間 | 9:00~16:00(拝観チケット販売~15:30) ※2024年5月20日より約2年間は、工事のため法堂のみ拝観可能 |
交通 | JR 花園駅から徒歩5分 市バス 妙心寺前下車徒歩4分 |
料金 | 参拝料金 大人500円、小中学生200円 |
ホームページ | https://www.myoshinji.or.jp |
Writer椿屋 山田涼子
Writer椿屋 山田涼子
京都拠点の映画ライター、グルメライター。合言葉は「映画はひとりで、劇場で」。試写とは別に、年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。最近Netflixにまで手を出してしまい、1日24時間では到底足りないと思っている。
Twitter:@tsubakiyagekijo