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とんちで有名な「一休さん」でお馴染みの一休宗純和尚を開祖とし、堺の豪商、尾和宗臨によって建てられた大徳寺塔頭「真珠庵」。普段は非公開のこちらの禅寺が3年ぶりに一般公開されています。2024年12月8日まで。
今回は約400年ぶりに新調された方丈襖絵が4年ぶり、そして長らく京都国立博物館に寄託している『源氏物語図屏風』が初公開されます。ほかにも真珠庵には、源氏物語の作者 紫式部の産湯に使用したと伝わる井戸があって、源氏物語ファンは特に要注目です。
臨済宗大徳寺派大本山、大徳寺塔頭 真珠庵が建てられたのは今から533年前の延徳3年(1491)。一休和尚が亡くなられた10年後のことでした。
一休さんというと“破天荒なお坊さん”として数々のエピソードが残っています。1970年代に放送されたアニメでは一休和尚の幼少期、“とんち”や“知恵”で難問を解決する様が描かれました。40.50代の方なら懐かしく思うのではないでしょうか。
真珠庵表門
また、「真珠庵」の名前の由来は、荒れた寺の屋根から降り積もる雪が、真珠のようにきらきらと輝いて降り積もっていたという故事にちなみ、一休和尚が名付けました。
本堂の入り口上部に飾られている『真珠庵寺額』
真珠庵へは、「京都駅」から市営地下鉄烏丸線に乗って「北大路駅」で下車。改札をくぐったら案内板に沿って北大路バスターミナルへ。すると青色と赤色の案内表示が目に入ります。その青色の標識に従って進み、市バス1・204・205・206系統に乗り「大徳寺前」で下車。歩いて5分ほどで大徳寺の大きな駐車場が見えてきますのでそこから入り、さらに歩いて3分ほどで真珠庵に到着します。
この看板が目印
今秋、3年ぶりに特別公開される真珠庵。普段は非公開の場所が拝観できるだけでなく、江戸時代初期に描かれた『源氏物語図屏風』と、現代に描かれた方丈襖絵が一度に鑑賞できるのも非常に興味深いところです。
個別のご紹介は後ほどたっぷりとさせていただくこととして、まずは概要をお伝えしましょう。
【大徳寺塔頭「真珠庵」特別公開】
公開期間 :2024年9⽉20⽇(⾦)〜12⽉8⽇(⽇)
休⽌⽇ :10⽉21⽇(⽉)、11⽉24⽇(⽇)〜26⽇(⽕)
拝観時間 :9:30〜15:30(受付終了)
※10月4日(金)11:30受付終了
拝観料 :⼤⼈2,000円・⾼校⽣1,000円・⼩中学⽣500円(保護者同伴)
特別公開 :
【重要⽂化財】本堂、現代作家が描く⽅丈襖絵
【重要⽂化財】書院 通僊院(つうせんいん)
【重要⽂化財】茶室 庭⽟軒(ていぎょくけん)
【史跡名勝】⽅丈東庭「七五三の庭」、通僊院庭園
【特別展⽰】『源⽒物語図屏⾵』
放送中の大河ドラマ「光る君へ」(NHK)では、源氏物語作者である紫式部の生涯が描かれています。
今回の特別公開では、大徳寺塔頭「真珠庵」の寺宝『源氏物語図屏風』が初公開。日頃は京都国立博物館(京博)に寄託しており、この特別公開に合わせ里帰りしています。
大徳寺塔頭 真珠庵 山田宗正ご住職。『源氏物語図屏風』の前で。
こちらの『源氏物語図屏風』は、17世紀、江戸時代初期に描かれたとされ作者不詳。狩野派と土佐派、両者の画風の程よいところが見て取れます。
いつもは京博で保管されているため、とても綺麗な状態で驚くばかり。鮮やかな金色が眩しいほどでした。
初公開『源氏物語図屏風』(左隻)(写真提供:京都春秋)
初公開『源氏物語図屏風』(左隻)(写真提供:京都春秋)
屏風のそばにはこのように、源氏物語のどの巻が描かれているのか案内が用意されています。「光る君へ」のシーンを思い出しながら『源氏物語図屏風』を鑑賞するのも楽しいのではないでしょうか。
「あの場面だ!」と分かる人は源氏物語ツウ
紫式部の母親が、同じく大徳寺塔頭の雲林院の観音菩薩に安産祈願に訪れたとされることから、真珠庵にある井戸水を産湯にしたのではないかと言われています。
『産湯の井戸』この井戸の水は現在も涸れていない
生まれたての娘をこの井戸水を使って沐浴させながら、まさか千年後までも読み継がれる物語を編む女性に成長するとは想像すらしなかったでしょうね。
今回の特別公開の見どころのひとつが、現代作家6名によって描かれた方丈襖絵の公開です。真珠庵には、曽我蛇足や長谷川等伯の描いた襖絵が遺されています。しかし傷みが激しかったことから修復されることになり、代わりの襖絵の制作が現代作家6名に託されました。
そして2018年、約400年ぶりに新調された現代作家6名による方丈襖絵が完成。普段は修復された襖絵が飾られていますが、今回の一般公開では現代の方丈襖絵を4年ぶりに見ることができます。
現代作家6名とは、「釣りバカ日誌」でお馴染みの漫画家 北見(きたみ)けんいち氏、映画監督の山賀(やまが)博之氏、アートディレクターの上国料(かみこくりょう)勇氏、日本画家で僧侶の濱地(はまじ)創宗(そうしゅう)氏、美術家の山口和也氏、そして、イラストレータの伊野(いの)孝行氏など、第一線で活躍するクリエーターのみなさんです。大徳寺塔頭「真珠庵」の山田宗正(そうしょう)ご住職は、この6名とはもともとご縁があったそうです。
こちらではほんの一部をご紹介しますので、全ての作品はぜひ真珠庵に足を運んでご鑑賞ください。
『楽園』北見けんいち氏作(写真提供:京都春秋)
北見けんいち氏が描いた『楽園』の舞台は、与論島にある氏の別荘です。そこでの宴会風景が描かれています。北見氏は与論島の名誉島民であり、島へ行った際には島民あげての大宴会になるのだとか。描かれている皆さんが満面の笑みを浮かべているのがとても印象的な作品です。山田ご住職がマイクを握っているシーンも描かれているので探してみて下さい。
『Purus Terrae 浄土』上国料勇氏作(写真提供:京都春秋)
上国料勇氏作の『Purus Terrae 浄土』では、観音世菩薩、風神、雷神、不動明王、荼枳尼天(だきにてん)、吉祥天、龍王、弁財天が描かれています。そして、リアリティを出すために全て現実の人物をモデルにしています。
この襖絵が制作された当時、EXILEのアルバムのジャケットを描くことになっていた氏は、メンバー2人を真珠庵に呼び寄せ目の前で踊ってもらって風神、雷神のイメージとしたそう。そのため、一般公開されるとEXILEのファンも来られるそうです。
そして見ていただきたいのが、観音様のそばに描かれているニホンカモシカです。山田ご住職が気仙沼の追悼法要に出向かれた際、海辺の断崖からこちらをじっと見ているニホンカモシカがいたそうで、その話しを上国料氏にしたところインスピレーションがわいて襖絵に描くことになったそうです。
他にも、伊野氏の「オトナの一休さん」ではアニメのテーマソングを気持ちよく歌う一休さんが描かれていますし、濱地氏の「寒山拾得(かんざんじっとく)」では、唐の時代、天台山の国清寺にいたとされる寒山と拾得という禅僧が描かれています。また、山口氏の「空花(くうか)」は、襖絵の紙を山口氏自ら漉くところから作品づくりは始まりました。そして山賀氏の「かろうじて生きている」では、能登生まれの長谷川等伯に共感した氏が荒れ狂う日本海を描いています。
まだまだ見どころ満載です。一休和尚に参禅した侘び茶の祖、村田珠光が作庭したと伝わる「七五三の庭」や、土佐光起「花鳥図」、正親町天皇の女御の化粧殿(けわいどの)を移築した書院「通僊院(つうせんいん)」と茶室「庭玉軒(ていぎょくけん)」が特別公開されています。ちなみに茶室「庭玉軒」は、にじり口を入った中にも露地がある、雪国造りの内蹲居(うちつくばい)の珍しい構造となっています。
書院『通僊院』と茶室『庭玉軒』(写真提供:京都春秋)
特別公開の期間中、山田宗正ご住職による御朱印がいただけます。日頃は非公開となっているお寺なので、参拝のあとにはぜひ頂いてはいかがでしょう。なお、ご住職は毎日在寺されているとは限りませんのであしからず。
日頃は非公開とされる真珠庵で、江戸時代に描かれた作品と現代作家の作品を見ることのできるまたとない機会。ぜひ足をお運びください。
・特別公開
【重要⽂化財】本堂、現代作家が描く⽅丈襖絵
【重要⽂化財】書院 通僊院(つうせんいん)
【重要⽂化財】茶室 庭⽟軒(ていぎょくけん)
【史跡名勝】⽅丈東庭「七五三の庭」、通僊院庭園
【特別展⽰】『源⽒物語図屏⾵』
店舗・施設名 | 大徳寺塔頭「真珠庵」 |
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住所 | 京都市北区紫野大徳寺町52 |
営業時間 | 9:30〜15:30(受付終了) ※10月4日(金)11:30受付終了 ・公開期間 2024年9⽉20⽇(⾦)〜12⽉8⽇(⽇) ・拝観休止日 10月21日(月)、11月24日(日)~26日(火) |
交通 | 市バス「大徳寺前」より徒歩約8分 |
駐車場 | 有料駐車場あり |
料金 | ⼤⼈2,000円・⾼校⽣1,000円・⼩中学⽣500円(保護者同伴) |
お問合せ先 | 075-231-7015(京都春秋) ※「真珠庵」へ直接のお問い合わせはご遠慮下さい。 |
ホームページ | https://kyotoshunju.com/ |
Writer瀬田かおる
Writer瀬田かおる
本が好きすぎて読むだけでは満足せず、民間資格である「JPIC読書アドバイザー」を取得。ライターとして、本と読書に関する活動のアイデアを形にするため邁進中です。モットーは『地方に住んでても、何歳からでも、人は変われる!』
全国の個人書店、私設図書室を取材するのが夢です。
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