おでかけ

2024.10.01
(C)2024未来映画社

ようこそ、おおきに。映画ライター椿屋です。

みなさん、京都お好きですか? チャンバラ、お好きですか?

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幼い頃からチャンバラ大好き(一番夢中になったのは「三匹が斬る」シリーズ!)なわたくしが今回注目する作品は、現在絶賛公開中の『侍タイムスリッパ―』、略して「侍(サム)タイ」です。

低予算の自主制作映画として上映1館からスタートし、クチコミとSNSで人気が拡大した本作は、たったひと月あまりで全国130館以上の上映となった異例のヒット作。「カメ止め」の再来か?と注目を集めているタイムスリップ時代劇でございます。

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メガホンを取った安田淳一氏は、米農家という異色の肩書を持つ映画監督。

安田監督指揮の下、集ったスタッフはなんと10人足らず。監督自らが原作・脚本に加え、撮影・照明・編集・整音・タイトルデザイン・現代衣装・車両・制作の11役をこなしたというから脱帽です。天が二物も三物を与える才能あふれる人材が増える昨今でも、十一物(農家も入れれば十二物)も与えられるとは……驚愕を通り越して、崇拝の域でございますよ。

 

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「撮影終了後の預金通帳残高が7,000円くらいだった」という言葉どおり、監督ご自身の貯金を投げ打ってこの映画をおつくりになったのです。その情熱たるやっ!

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監督の熱意と愛が伝播し、本作の撮影を東映京都撮影所が全面サポート。脚本の面白さにいぶし銀な役者たちが出演を快諾し、“時代劇のプロ”たちの技術と心意気が結集した力ある映画に仕上がっています。

時代劇ファンならもちろんのこと映画好き、京都好き、タイムスリップ好きは、ぜひこの旋風をリアタイで実感すべく、劇場に足をお運びくださいませ。

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映画のまち・京都だからこそ成し得たガチンコ時代劇

時は幕末、京の夜。密命を帯びた会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、長州藩士との斬り合いの最中に落雷を受け、現代の時代劇撮影所へとタイムスリップしてしまいます。わぁーーーーーお!!

自らが命をかけて守ろうとした江戸幕府はとうの昔に滅んだ平和な、けれど彼にとっては奇怪なる世の中で、生きてゆく頼りは己の剣の腕だけと撮影所の門を叩きます。

幕末の志士が選んだのは、「斬られ役」という道でした。

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京都東映撮影所と東映太秦映画村を主に、京滋の各所で撮影された本作。

作中たびたび登場する、行き倒れている高坂に救いの手を差し伸べる住職夫妻が暮らす寺は、物語の中でもロケ地としてしばしば時代劇の撮影に協力しているという設定で、その門は実際にロケ地として有名な「龍潭寺(りょうたんじ)」(亀岡市)が使われています。

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劇中劇が「妙心寺」で撮影された他、クライマックスの対峙シーンは隣県滋賀の甲賀にある「油日神社」〈https://www.aburahijinjya.jp〉です。

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また、斬られ役として弟子入りを志願する喫茶店は、「喫茶クラウン 八条店」(京都市南区)の昭和レトロさが活かされています。ロケ地に注目して鑑賞し、エンドロールのクレジットで答え合わせをするのも一興かと存じます。

 

ちなみに、わたくしが思わず感涙してしまったのは、こちらのシーン。

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高坂がおやつに出された苺のショートケーキを食べる場面です。

その美味しさはもちろん、これほどまでの美味が安価で手に入り、誰もが気軽に食することができる平和な世になったことに心震わせる姿に、多くの世知辛い現実が過り、ひと際胸が打たれます。

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そして、注目していただきたいのは、殺陣師である関本役の峰蘭太郎さん!

ご自身も斬られ役として活躍する傍ら、「殺陣技術集団・東映剣会」の役員・会長を歴任されているお方。本作では逝去された福本清三氏に代わり、いぶし銀の演技にて殺陣師役を務めてらっしゃいます。オファーを受けた後、福本氏の墓前にて「先生の代役を務めさせていただきます」とご報告されたとか。物語には直接関係ありませんが、胸アツなエピソードでございます。

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◎作品情報

『侍タイムスリッパ―』https://www.samutai.net

MOVIX京都ほか、全国順次公開中

出演:山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、紅萬子、福田善晴、井上肇、田村ツトム、安藤彰則、庄野﨑謙 ほか

監督・脚本・撮影・編集・他:安田淳一

殺陣:清家一斗(東映剣会)

配給:ギャガ、未来映画社

 

【公式SNS】

X(旧Twitter):@samurai_movie

Information
店舗・施設名 龍潭寺
住所 亀岡市稗田野町太田東谷40
ホームページ https://www.kameoka.info/seeing/ryoutanji.php

Writer椿屋 山田涼子

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Writer椿屋 山田涼子

京都拠点の映画ライター、グルメライター。合言葉は「映画はひとりで、劇場で」。試写とは別に、年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。最近Netflixにまで手を出してしまい、1日24時間では到底足りないと思っている。
Twitter:@tsubakiyagekijo

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