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京都の北部に位置する世界文化遺産 上賀茂神社。境内を流れる小川やたくさんの木々が生い茂り、心清らに参拝することができます。こちらは伊勢神宮に次いで高い格式を有し、京都で最も古い神社のひとつ。実は紫式部が恋愛成就を願って参拝したゆかりの地でもあるとのことで、権禰宜(ごんねぎ)の芝田豪(しばたごう)様に案内していただきました。
上賀茂神社は、約23万坪という広大な敷地面積の中に国宝2棟、重要文化財41棟を有し、平成6年にはユネスコ世界文化遺産に登録されました。また、本殿の背後にそびえる神山(こうやま)に「賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)」が御降臨した神話があり、神山を御神体山、賀茂別雷大神を御祭神としてお祀りしています。正式名称を「賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)」と言います。
一の鳥居の前で一礼し、真ん中を避けてくぐると目の前に芝生広場が広がっています。伺ったのは夏真っ盛りの季節。春には斎王桜や御所桜が綺麗だろうなぁと想像しながら二の鳥居を目指して歩を進めます。
写真の中ほどに写っているのが、上賀茂神社の御神体山である「神山(こうやま)」です。
二の鳥居を抜けると「細殿(ほそどの)」の正面に円錐形をした白い盛砂が見えてきます。こちらは、御降臨された神山の形を模して作られた「立(たて)砂(ずな)」と呼ばれる盛砂です。
子供の背丈ほどの高さに盛られた立砂は、形も大きさも左右対称で左側は「陽」、右側は「陰」を表しています。
「手水舎(ちょうずしゃ)」近くを流れているこちらの小川は、写真上部が「御手洗川(みたらしがわ)」で身を清める川。そして右側を流れるのが「御物忌川(おものいがわ)」でお祓いの川とされているのだとか。この2つの川が合流して「ならの小川」になります。じつは川や水には「祓い清める力」があるそう。本殿にたどり着くまでには必ず川を渡るようになっているので、境内を歩くだけで身を清める効果を得られます。
色鮮やかな朱塗りの「楼門」が見えてきました。この奥には本殿が建てられています。
遷宮の際に塗り替えがなされ、現在(令和6年)の楼門は平成29年に塗り替えられたもの。「この朱色が本来の楼門の色ではないかと思います」とは権禰宜の芝田さん。
そして楼門前にあるのが建っているのが、「片山御子神社(かたやまみこじんじゃ)」(片岡社(かたおかしゃ))です。こちらは上賀茂神社の御祭神「賀茂別雷大神」の母神、「賀茂(かも)玉依比売命(たまよりひめのみこと)」がお祀りされていて、子授け・家内安泰のほか、縁結びの御利益もあって源氏物語の作者である紫式部が参拝したとされています。
そう推察されるのは紫式部が詠んだこちらの歌が新古今和歌集に残されているから。「橋殿」そばにはその歌碑が建立されています。
『ほととぎす 声まつほどは片岡の もりのしずくに たちやぬれまし』
「片岡」と書かれてはいますが、日本中に片岡という場所はたくさんあるはず。なのになぜ、上賀茂神社と推測されたのでしょう。
そのヒントはこの歌の詞書(ことばがき)に隠されていました。
『賀茂にまうでて侍りけるに 人のほととぎすなかなんと申けるあけぼの 片岡のこずえ おかしく見え侍りければ』
「賀茂にまうでて(詣でて)」と詠まれていることから、「片岡」と「賀茂」で上賀茂神社の「片山御子神社」に参拝されたのではないかとされているそうです。
千年前に書かれた恋愛小説「源氏物語」の作者、紫式部が参拝したのであれば、現代に生きる私たちもそのご利益を授かりたい!そう願う人は、上賀茂神社が作成したこちらの動画で予習してから参拝してみては?
【あの人も、お参りした神様 紫式部編 ~縁結びの祈り~】
【あの人も、お参りした神様 紫式部編 ~恋の歌~】
小さなお社が境内の内外にたくさんある上賀茂神社。授かりたいご利益のお社を参拝したあとは、さまざまな種類が揃うおみくじやお守りなどの授与品をお受けしてみてはいかがでしょう。
《水みくじ 龍のお告げ》200円
上賀茂神社の摂社である「新宮神社(しんぐうじんじゃ)」は、水を司る龍神様が祀られています。それにちなんで、「龍のお告げ」と名付けられた水みくじが登場。水に浸すと龍神様が関西弁でひと言お告げを下さいます!
さっそく引いてみると『耐えるんや!』のお告げが……。
この日の京都の気温は36℃。きっと暑さに耐えてしっかりお参りせよとのお言葉なのかも。そう思いタオルで汗をふきふき、他にはどんなおみくじがあるのか見せていただきました。
《賀茂なすみくじ》500円
上賀茂地域を中心に多く栽培されている京ブランド野菜「賀茂なす」がおみくじに。
《八咫烏みくじ》500円
導きの神様と信仰されている八咫烏(やたがらす)。叶えたい方向へ導いてほしい人へ。
《馬みくじ》各色500円
上賀茂神社は競馬発祥の地だとか。賀茂競馬などの催事を由縁としたおみくじ。
《干支みくじ》500円
年ごとに変わる干支みくじ。令和6年辰年はこちら。十二支揃えるマニアもいるとか。
《片山御子神社ご朱印》1,000円
紫式部が参拝したとされる「片山御子神社」のご朱印には切り絵が施されています。
参拝を終え、境内散策で心癒されたところでちょっとひと息つきませんか?
「神山(こうやま)湧水(ゆうすい)珈琲│煎(せん)」は、社務所横にある常設のお休み処。こちらでは神山湧水で淹れた珈琲を飲むことができます。神山湧水とは、上賀茂神社御神体山である「神山」からの湧き水です。
こちらができたのは平成31年4月。式年遷宮の事業の一環として開設されました。味の素AGF(株)が神山湧水の清らかな水質にあわせ、独自でブレンド焙煎した珈琲を提供しています。
「神山湧水珈琲(HOT/ICE)」各500円(税込)
神山湧水を使用して淹れた珈琲が飲めるのは世界でここだけ。珈琲の苦みもありながら、すーっと喉を通り飲みやすい味わいでした。同じく神山湧水で淹れたグリーンティー、ほうじ茶の提供もあります。営業時間は、10時から16時まで。
最後に、上賀茂神社で予定されている9月、10月の神事について一部ご紹介します。
(詳しい時間については上賀茂神社へ直接お問い合わせください)
【重陽神事(ちょうようじんじ)・烏相撲(からすずもう)】令和6年9月9日(月)
(写真提供:上賀茂神社)
「重陽神事」では、重陽(菊)の節句にちなんで白・黄の菊の花を神前にお供えし、無病息災が祈願されます。9月9日に行われるのは、「陽」の最大数である「9」が重なる日=「重陽」であるためだとか。
その神事に引続き、「細殿」立砂前に設けられた土俵にて行われるのが「烏相撲」です。
禰宜方(左)と祝方(右)に分かれた児童によって相撲の取組が奉納され、神事終了後には「菊酒」が振る舞われます。
【賀茂観月祭】令和6年9月17日(火)
(写真提供:上賀茂神社)
毎年、中秋の名月に合わせて開催される月を観賞する祭典。一の鳥居から二の鳥居の間にある芝生内の「馬場殿」にて夕刻より執り行われます。祭典に引続き、和太鼓等の神賑行事が行われ行事終了後には、月見団子とにごり酒が振る舞われます。
【笠懸神事(かさがけしんじ)】令和6年10月20日(日)
(写真提供:上賀茂神社)
関西で斎行しているのは、上賀茂神社のみという「笠懸神事」。馬上から、矢で的を射る流鏑馬に並ぶ儀式です。じつはこの神事、建保2年(1214)以降、長らく途絶えていましたが、平成17年に大日本弓馬会武田流に約800年ぶりに奉納されました。それ以降、毎年10月の第3日曜日に境内芝生内で斎行されています。
京都の北部に位置していながら、京都駅からのアクセス抜群の上賀茂神社。
京都駅から市バス4系統に乗って約50分。上賀茂神社前バス停で下車すればすぐ目の前です。他にも市バス9系統を使えば、上賀茂御薗橋バス停までは約40分。御薗橋を渡って徒歩5分で到着するルートもあります。
いずれにせよ、乗り換えなくゆったりとした気分でバスに揺られれば、心穏やかに参拝することができるでしょう。
千年の昔、紫式部が大切な人とのご縁を祈ったその気持ちは、現代を生きる私たちにとっても同じはず。日本最古の神社のひとつ世界文化遺産 上賀茂神社へぜひ訪れてみてください!
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※情報は2024年8月時点のものです。
店舗・施設名 | 賀茂別雷神社(上賀茂神社) |
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住所 | 京都市北区上賀茂本山339番地 |
電話番号 | 075-781-0011(電話受付時間8時30分~17時) |
営業時間 | 5時30分~17時(楼門は8時~16時45分) |
交通 | 京都市営バス「京都駅」から4・9系統 その他アクセスについてはこちらから。 https://www.kamigamojinja.jp/access/ |
駐車場 | 料金 30分200円 ※繁忙期:1回1,000円 |
料金 | 無料(特別参拝は有料) |
ホームページ | https://www.kamigamojinja.jp/ |
Writer瀬田かおる
Writer瀬田かおる
本が好きすぎて読むだけでは満足せず、民間資格である「JPIC読書アドバイザー」を取得。ライターとして、本と読書に関する活動のアイデアを形にするため邁進中です。モットーは『地方に住んでても、何歳からでも、人は変われる!』
全国の個人書店、私設図書室を取材するのが夢です。
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