1000年も前に書かれ、いまも世界中にファンがいる源氏物語。今回はその作者である紫式部に焦点を合わせ、紫式部邸宅址にして源氏物語執筆の地とされている大本山廬山寺を訪ね、執事長の町田亨宣(まちだ こうせん)さんにお話しをお伺いしてきました。
廬山寺正面
京都市上京区・京都御所の東側、寺町通りに面した廬山寺は、正しくは「廬山天台講寺(ろざんてんだいこうじ)」といいます。元三大師良源によって天慶年間(938年)に船岡山の南に、創建された與願金剛院(よがんこんごういん)が始まりとされています。
寛元3年(1245年)、法然上人の弟子である住心房覚瑜上人が出雲路に廬山寺を開き、南北朝時代にこの二ヶ寺を兼務していた明導照源上人によって廬山寺が與願金剛院に統合されました。
天正元年(1573年)、諸説ありますが豊臣秀吉の都市計画により廬山寺は現在の場所に移ってきたとされています。そして昭和40年(1965年)、考古学者 角田文衛博士によって考証され、この地が紫式部の邸宅址であることが分かりました。
よって、紫式部が廬山寺で暮らしていたわけではなく、紫式部が暮らしていたとされる邸宅址に廬山寺が移転してきたことになります。
本堂入り口付近にある紫式部の歌碑
本堂正面入り口
本堂入り口には紫式部像がお出迎え
廬山寺が現在の場所に移転してくるずっと前、平安時代に紫式部は曽祖父、権中納言藤原兼輔(堤中納言)が建てた邸宅で育ち、結婚生活を送り、一人娘の賢子を産み育て、後に源氏物語を執筆したとされています。そのため、廬山寺には源氏物語執筆の地としてファンが多く訪れます。
ここが紫式部邸宅址であること示している
境内には平安時代のお庭はこんな感じだろうなと、「感」を表現した白砂と苔の源氏庭があります。昭和40年(1965年)に紫式部邸宅址であることを記念して整備されました。
6~9月頃には1500本ほどある桔梗が花を咲かせます。桔梗は、源氏物語の「朝顔の巻」にちなんで植えられたそう。諸説ありますが、平安時代において朝顔とは桔梗の花をさしていたそうです。
白砂と苔、そして桔梗咲く源氏庭
開花シーズンには桔梗の花が描かれた御朱印も用意されています
本堂にはご本尊の阿弥陀三尊座像が安置されています。平安末期もしくは鎌倉時代初期に造られた仏像としては保存状態が非常に良かったこと、そして両脇侍像のお姿が平安時代の仏像としては珍しかったことから、国指定の重要文化財に指定されています。
向かって右にお座りになっている、観音菩薩像は、実は正座ではなく足を肩幅くらいにお開きになり前のめりでお座りになっているのです。この坐り方は大和坐り(やまとずわり)といい、人が亡くなったときにその魂が迷わないように、いち早くお立ちになり魂をお迎えに行き、阿弥陀様のもとへお導きしてくださるためにこの坐り方をなさっているそう。
「この三体のご本尊は代々、どんなことがあってもお守りしてきました。ご本尊があればたとえ火事でお寺が燃えてしまったとしても再建することができますから」と、町田さんはおっしゃいます。
ご本尊が安置されている隣には写経体験のできるお部屋があります。
椅子も用意されているので正座が苦手な人にも安心です
「書いてる時間は無になる時間です。書き順すら分からない字が出てきても、何も考えずただなぞって書いてもらえば良いんです。書いてる時間が悟りに近づく時間ですから」とは町田さんのことば。
写経するのは般若心経。納経料500円+拝観料500円で写経できる
ここで写経をして源氏庭を眺める時間を、忙しい毎日をリセットする時間にしているという人もいらっしゃると聞き、1000年前にこの地で源氏物語を執筆していたとされる紫式部も邸宅からいまと同じ空を眺め、心を落ち着かせていたのかもと思いを馳せました。
書いたものは、節分の2月3日に行われている、追儀式鬼法楽(通称鬼おどり)でお焚きあげしていただけます。3匹の鬼(人間の三種の煩悩である貪欲、瞋恚、愚痴の三毒の化身)を追い払うことで、新しい節を迎えられるとされる京都の冬の代表的行事となっています。
拝観受付には売店が設けられています
売店では数多くの源氏物語関連グッズが販売されています
2024年の大河ドラマでは、紫式部の生涯が描かれます。それにあわせ、廬山寺ではいくつかのイベントが開催されます。ここではその一部をご紹介します。
※廬山寺主催
紫式部の特別展を開催予定。
期間:令和6年の春と秋(日時や詳細は未定)
※京都古文化保存協会主催
「第59回京都非公開文化財特別公開」
期間:令和5年11月17日(金)~11月26日(日)
詳しくは京都古文化保存協会ホームページをご覧ください。
平安時代を懸命に生きた紫式部はどんな思いで源氏物語を紡いでいたのか。そんなことに思いを馳せるには廬山寺は絶好の地です。
廬山寺へは京都市営バスの「府立医大病院前」で下車すれば徒歩5分ほどですが、地下鉄烏丸線の「今出川駅」で下車し、京都御苑を散策しながら向かうコースもオススメです。
観光客で賑わう京都のまちなかでソワソワした気分をクールダウンしながら廬山寺に向かってみてはいかがでしょう。
※写経体験につきましてはホームページで詳細をご確認ください。
※情報は2023年9月時点のものです。
店舗・施設名 | 大本山廬山寺 |
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住所 | 京都市上京区寺町通り広小路上る北之辺町397 |
電話番号 | 075-231-0355 |
営業時間 | 9:00~16:00まで 拝観休み 1月1日・2月1日~2月9日・12月31日 |
交通 | 京阪鴨東線 「出町柳」より 徒歩 約15分 「神宮丸太町」駅より 徒歩 約15分 京都市営地下鉄 烏丸線 「丸太町駅」より 徒歩 約20分 京都市営バス「京都駅」から4・17・205系統 「四条河原町」から3・4・17・205系統 「府立医大病院前」下車 約5分 ★ご注意:河原町通りからは入山出来ません。寺町通りよりお越し下さい。 ★大型バスでお越しの方 当山入山口の寺町通りは大型バスの通行ができません。 東側の河原町通りにて下車ののち、徒歩にてお越し頂きます様お願いいたします。 |
料金 | 拝観料金 大人500円 小中学生400円 <※団体(30名以上)400円><障害者手帳をお持ちの方400円> 団体様につきましてはご説明が必要な場合はお問い合わせ下さい。 (都合によって出来ない場合もございます。) |
ホームページ | http://www7a.biglobe.ne.jp/~rozanji/index.html |
Writer瀬田かおる
Writer瀬田かおる
本が好きすぎて読むだけでは満足せず、民間資格である「JPIC読書アドバイザー」を取得。ライターとして、本と読書に関する活動のアイデアを形にするため邁進中です。モットーは『地方に住んでても、何歳からでも、人は変われる!』
全国の個人書店、私設図書室を取材するのが夢です。
noteでは、読了した本の感想を『インクの匂い』に書き溜めています。
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