グルメ・お土産

2023.05.02

おいしいものって、食べるのはもちろん、それができあがる過程も美しいですよね。

 

京町家カフェ「まつは」の西村めぐみさんと一緒に、ライターの市野亜由美が毎月一回、京都の里山、京北弓削(ゆげ)町の農家さんのもとを訪れる当企画。アウトドア料理の〝キャンプ飯〟ならぬ、〝ファーム飯〟を作って食べて、レシピもご紹介して…と春夏秋冬をひとまわりしてきた連載、今回で最終回を迎えます。

 

ワラビは冷凍して保存可能。独特の苦みがさわやか、夏にもぴったり!

畑を案内してくれるのは、「京農園よしだ」の吉田修也さん。京都市の北部山間にある京北町の休耕田を利用した広い土地(約4.5ha)で、年間約100種類の京野菜・ヨーロッパ野菜を生産されています。

 

さあ、それではまず、今日のメイン食材であるワラビと、そのほかダイコン菜やニラの収穫タイム!

ワラビ摘みは近くの山の斜面にて。メンバーは吉田さんの妻・祥子さん、めぐみさんファミリー、前回に続いて参加してくれた友人・ももちゃんと私の総勢7人で、にぎやかです。

 

ワラビはコツをつかむと、あちこちに生えているのをサッと発見できるように。先端が開き始めているのは、もう食べごろではないけれど、くるんとした葉っぱがかわいくて撮影しちゃいました。ワラビはシダ植物の若芽である、というのがよくわかりますね。

 

なるべく根元に近いところで、ぽきんと折れるところから摘むのがコツ。どんどん皆が慣れていくにつれ、収穫量も増していきます。こんなにたくさん穫れました。

 

この日は、露地の野菜の収穫にはまだ早かったので、ビニールハウスへ。

約1か月前に種蒔きしたという、ダイコンの畝(うね)。ここからもうひと月ほどで立派なダイコンに成長するそう。種を多めに蒔いておき、途中で間引いたものをダイコン菜として食べるのだと、吉田さんは話します。

「これくらいの時期のダイコン菜は、やわらかくて、香りがいいのが特徴です。おひたしにしたり、刻んでごはんに混ぜて菜飯にしたり、おいしいですよ。とはいえ、抜くのに手間がかかり、安定した供給が見込めないため、スーパーマーケットなどに出回ることはあまりないんです」とのこと。もし直売所などに並んでいたら、お見逃しなく。

 

何度も京北へ来てくれたほーちゃん(めぐみさんの息子さん)も、畑が大好きに。お手伝いしてくれる姿が頼もしくなってきました。

 

ビニールハウスの一角に生えているタイムには花が咲いていました。こういった光景が見られるのもごほうびだなぁ、としみじみ思います。

 

じゃーん。本日の素材が大集合! 祥子さんが、わっぱに盛ってくれました。

 

―ワラビについて、教えてもらえますか?

吉田さん:ワラビは全国に自生しているシダの仲間の一種で、若芽を山菜として食用にします。それほど山奥まで行かなくても、ちょっとした山や野でたくさん穫れるので、比較的身近な山菜だと思います。

旬は春から初夏にかけて。ビニールハウスで栽培する農家さんもありますが、うちはお客さんから要望があれば敷地の山に自生するものを摘んで出荷しています。

 

―おいしく食べるには?

吉田さん:まずはアク抜きが必要です。大きな鍋に湯を沸かし、重曹を加えてゆでます。重曹がなければ米のとぎ汁やパスタのゆで汁、小麦粉や片栗粉などでも代用可能です。ゆであがったら水にさらします。水を何度も替えながら一晩かけてアク抜きをする方法もありますが、僕はワラビならではの苦みもおいしさだと思うので、ちょこちょこつまんで味見をしながら、好みのタイミングで水から上げるのがおすすめです。

 

―保存方法でアドバイスはありますか?

吉田さん:ゆでたものを、干したり、冷凍したりして、長期保存が可能です。我が家では刻んだものを冷凍して常備していますよ。夏場、そうめんつゆに入れるとひんやりして、ワラビの苦みがさわやかです。かつおぶしとしょうゆを加えて和え、たまごかけごはんの味付けに使ったりもします。また、アジなどの焼き魚をほぐしたものに混ぜても、おいしい。ごはんのお供に最高です。

 

…と、お話しを聞いているうちに、準備もととのってきました。で、まずは乾杯から(笑) 摘みたての山椒の木の芽を入れたビールは、すっきりいい香り。気分も盛り上がります。気持ちのいい青空のもと、皆で手分けして、さあ、作業に取り掛かります。

 

肉と合う! ゆでただけのワラビが 脂の甘みを引き立たせるのに感動

「実は、今日は野菜を見てから、何を作るか決めようと…いわば、ノープランで来ました」と、いきなりめぐみさんの口から衝撃的な発言(!笑)が飛び出しました。でも、もう驚きません…なぜなら、いつだってめぐみさんの食の感性は間違いないと、この一年で知っているから。それに、そういうライブ感を大切にしたい気持ちも、何だか分かる気がする~。

 

「穫れたての野菜と、火と水、あとは塩、オリーブオイル、レモンがあればおいしく食べる準備は万端」と話す、めぐみさん。「あと、パンとチーズとマスタードは用意してきました」とニコニコ笑いながら、手を動かします。

 

めぐみさんが決めたメニューは、クロスティーニ。イタリア語で〝小さいトースト〟を意味し、焼いたバゲットの上に具材をのせて楽しむ前菜です。

今回は「たたき蕨のマスタード風味」「蕨のサラダ」「茹でただけの蕨をお肉と共に」の3品を作り、食べる人がめいめい好みのクロスティーニを完成させてどうぞ、との趣向。なんと素敵な~!!

 

「蕨のクロスティーニ」の作り方

〈材料(6~8人分くらい)

ワラビ(ゆでてアク抜きしたもの)約1㎏ 牛肉(脂ののったものがおすすめ。今回は焼いただけで食べられる牛すじ肉を用意)400~500gくらい バゲット2本 レモン1~2個 粒マスタード、クリームチーズ、オリーブオイル、塩、タイム(あれば)各適量

 

〈作り方〉

(1)「たたき蕨のマスタード風味」を作る。約500gのワラビを根元側から、半分のところまで小口切りにする(先端側は別のボウルに取っておく)

(2)レモン汁を搾りかけ、味見をしながら塩と粒マスタードを加える。軽く包丁でたたくようにして、さらに混ぜる。器に盛り、クリームチーズを添える

(3)「蕨のサラダ」を作る。(1)で取り分けておいたワラビの先端部分に、レモン汁とオリーブオイルを回しかけ、軽く和える

(4)塩、こしょうで味を調え、器に盛り付ける。刻んだレモンピールをふりかける(5)「茹でただけの蕨をお肉と共に」を作る。牛肉をタイムと塩で軽くマリネし、炭火で焼く

(6)(5)を皿に盛り、残しておいたワラビを添えて完成

(7)バゲットを食べやすい大きさにカット。炭火で温めたものを器に盛る

 

☆テーブルには上記のもののほか、スベリヒユ、木の芽、ニラ(食べやすい長さにちぎって蒸す)、根っこ付きのダイコン菜(葉っぱがカリカリになるくらいまで炭火焼きにしたもの)、はちみつ、スクランブルエッグ、シナモンパウダー、ブラックペッパー、醤油などを並べる。ワラビで作った3品とともに、各々バゲットに乗せて楽しむ

 

「たたき蕨のマスタード風味」。包丁でたたくと、ワラビから少しぬめりが出てペーストっぽい感じになります。

 

意外性があって喜ばれそうな「蕨のサラダ」。さっぱりとおいしく、見た目もきれい。

 

「むしろ肉はそえもの(by めぐみさん)」との名言も飛び出した(笑)、こちら。「茹でただけのワラビがお肉の脂と相性抜群、脂の甘みを引きたてます」との感動を、そのまま料理名に。ワラビって、こんなにおいしい食材なんだと改めて気付かされました。

 

はちみつは好みのものでOK。これはナッツが漬け込んであり、リッチな味わい。

 

京北の畑で、とれたて野菜をいただきます!

「今回、チーズとワラビがこんなにも合うっていうのに、ちょっとびっくり。大発見です!」と、めぐみさん。

 

「今後、ワイン系のイベントなどでも、使えそう。カナッペにしてもいいし、スプーンに一口サイズに盛っても…」と、どんどんアイデアが膨らんでいる様子でした。

好きなものを好きなだけ。皆であれこれ言いながら、味の組み合わせを試していきます。

 

めぐみさんたちのクロスティーニが完成したところで、ほーちゃんがマイカメラで記念撮影。しっかり写っているかな。

 

「このワラビのお料理、斬新! おいしい~」と、吉田さん夫妻も満足そう。

 

最終回も、いつもどおり、なごやかなひととき。やっぱり「食」っていいな。

一年間にわたり、吉田さんから畑のことを教わり、めぐみさんからは野菜の新しい食べ方を提案してもらい、豊かな学びの時間を過ごすことができました。ありがとうございます!

 

【取材協力】

■京北の畑・野菜の紹介/吉田修也さん(「京農園よしだ」「Okulu」)

https://www.okulu.kyoto/

■畑を訪ねる人、料理考案/西村めぐみさん(京町家カフェ「まつは」)

※「まつは」は「まつは」は現在、不定期営業。ケータリングやお弁当などの注文は要相談。営業スケジュールはホームページやSNS(facebook、Instagram)などで確認を

https://www.matsuha225.com/

Information
店舗・施設名 「京農園よしだ」「Okulu」
住所 京都市右京区京北上弓削町牛子谷4
電話番号 090-5472-6048
駐車場 あり
ホームページ https://www.okulu.kyoto/

Writer市野亜由美

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Writer市野亜由美

京都のおいしいお店を訪ねるのが好き。おすすめの手土産、ランチの行き先など、友人から尋ねられることもしばしば。仕事で、レシピの記事を担当できるのは幸せ。 食の世界の奥深さや、楽しいことへの興味が高じて、小さなイベントを自ら企画したりも。

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