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おいしいものって、食べるのはもちろん、それができあがる過程も美しいですよね。
京町家カフェ「まつは」の西村めぐみさんと一緒に、ライターの市野亜由美が毎月一回、京都の里山、京北弓削(ゆげ)町の農家さんのもとを訪れる当企画。アウトドア料理の〝キャンプ飯〟ならぬ、〝ファーム飯〟を作って食べて、レシピもご紹介していきます。
畑を案内してくれるのは、「京農園よしだ」の吉田修也さんです。京都市の北部山間にある京北町の休耕田を利用した広い土地(約4.5ha)で、年間約100種類の京野菜・ヨーロッパ野菜を生産されています。
さあ、それでは今日のメイン食材、九条ねぎの収穫です!
雪が降ることを見越して、九条ねぎは屋外とビニルハウス内と両方の畑で栽培。写真では分かりづらいかもしれませんが、この日も外には雪が残っていました。が、ハウス内は入った瞬間にカメラのレンズがくもってしまうほど暖か! 太陽光のパワーのみで、この温度になるというから驚きです。
「今、収穫している九条ねぎの栽培は、9月上旬にスタートします。まずセルトレイという小さなプランターに種をまき、1か月半くらいで10㎝くらいの苗になるので、それを畑に植えるんです」と、吉田さん。
そうして秋に種蒔きしたものは、年明けから3月いっぱいくらいまで出荷されます。畑から抜いた瞬間、ねぎのいい香り。めぐみさんはじめ、この日の参加者の皆さん「ああ、おいしそう!」と、いい笑顔。
―九条ねぎについて、教えてもらえますか?
吉田さん:九条ねぎはユリ科の多年草で、日本の青ねぎの一種。伝統的に生産され続けている京野菜のひとつです。約1300年に作られ始めたという記録があるほど栽培の歴史は古くて、京都市南区の九条あたりで最も良いものが作られたというのが、名前の由来だといわれています。柔らかい緑の葉を食べる葉ねぎ(青ねぎ)の代表品種で、葉の内部にあるぬめりが特徴です。
―九条ねぎの旬は?
吉田さん:うちでは先ほども話したように、秋に植えて3月いっぱいまで収穫するものと、春(3月あたま)に植えて梅雨ごろに収穫するものというように、年2回作っています。通年、需要のある野菜ですが、寒い時期には一層甘みが増すので、旬としては冬になりますね。夏にはピリッとした辛みが強くなります。ちなみに、京都南部で九条ねぎを専門に作っている農家さんのなかには、暑い季節だけ気温の低い京北で栽培するところもあります。
―保存方法でアドバイスはありますか?
吉田さん:そう時間を置かずに使い切るなら、冷蔵庫の野菜室に入れるだけでだいじょうぶです。もっと日持ちさせたい場合は、ビニール袋に入れる前に、濡らした新聞紙やキッチンペーパーに包むひと手間をかけるといいですね。
また、もし根っこ付きのものが手に入ったら、ぜひ、白い部分を多めに残して土に植えてみてください。切っても、切っても何度かは葉が生えてくるので、薬味などに使えて便利ですよ。
…と、お話しを聞いているうちに、お料理の準備もOK。
この日は、めぐみさんと私のほか、友人3人も交えて、皆で手分けしながら和気あいあいと進んでいきます。
「九条ねぎのたたき」は、ねぎを包丁でたたきつけるように細かく刻む、というところから、この料理名。材料・作業ともに極めてシンプルな〝食べるソース〟という感じの一品です。
これは、めぐみさんが行く、ある割烹のお店で、出しておられたものをヒントに誕生したレシピだとか。「料理人さんが、ねぎをたたきながら水を少しずつ足しておられたのですが、『ジューシーなものなら水は要らないんだよ』とお聞きしたのを思い出し、これだ! と。もちろん、今日は水を入れずに、ひたすらたたいて、混ぜて、完成です!!」
〈材料(作りやすい分量)〉
九条ねぎ8本 レモン1/2個 塩適量
〈作り方〉
(1)九条ねぎを細かく刻んでから、包丁でしっかりとたたく(包丁でたたきつけるように細かく刻む、という意味)
(2)たたきながら、レモン果汁を搾りかける
(3)ボウルに(2)を移す。レモンの皮を薄くむいて刻み、加える
(4)塩で味を調え、よく混ぜる。全体がしっとりとし、少し粘り気が出たら完成
※今回は軍鶏(しゃも)の炭火焼きにたっぷりと乗せて。このほか、好みの肉を焼いたもの、お刺身など、何にでも合う
〈材料(作りやすい分量)〉
もち米(洗って浸水させておく)2合 九条ねぎ4本 里芋(小さめのもの。皮をむいて一口大に切っておく)10個くらい ショウガ2かけ 水800cc~1ℓ 塩適量
〈作り方〉
(1)鍋に水を入れ、火にかける。沸騰したら、もち米とショウガ(皮付きのまま乱切り)を入れ、中火にする
(2)もち米に火が通り芯がなくなったら、里芋を加える。弱めの中火でさらに煮る
(3)里芋がやわらかくなったら、弱火にする。九条ねぎをキッチンバサミでざく切り(4㎝ほどの長さ)にしながら、加える
(4)九条ねぎに火が通ったらできあがり。器によそい、好みで塩をふって食べる
※今回は、水の代わりに軍鶏をサッと湯引きしたときのお湯を濾して使用
※この分量でつくると、お椀にたっぷりと盛って7~8杯分になる
もち米で作るお粥は、煮ている間、おもちのような甘い匂いが立ち込めます。
大胆にザクザクとカットして九条ねぎをおかゆに投入。切り口からとろんとねぎの汁が滴るのを見て、「わー、もう、絶対おいしいに決まってる」とワクワクが止まりません。
この日、めぐみさんが用意してくれたのは軍鶏のもも肉。炭火焼で、素材そのものの旨みを引き出して、さあ、準備万端です。
力強い九条ねぎの香りとレモンのさわやかさが、香ばしい炭火焼のお肉とよく合います。
差し入れの、おいしい油揚げにも「九条ねぎのたたき」をオン。これも、皆が絶賛。
熱を加えてしんなりとした九条ねぎも絶品。
反則技(笑)の、卵トッピングのお粥もおすすめです。
サイドメニュー。千切りキャベツは、甘いオレンジ入りのサラダに。オレンジの果汁と塩であえ、さわやか風味でした。
この日の締めには、なんとお茶まで。さて、来月はどんな野菜が登場するのか、そして春の京北の風景も、楽しみです~
■京北の畑・野菜の紹介/吉田修也さん(「京農園よしだ」「Okulu」)
■畑を訪ねる人、料理考案/西村めぐみさん(京町家カフェ「まつは」)
※「まつは」は「まつは」は現在、不定期営業。ケータリングやお弁当などの注文は要相談。営業スケジュールはホームページやSNS(facebook、Instagram)などで確認を
店舗・施設名 | 「京農園よしだ」「Okulu」 |
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住所 | 京都市右京区京北上弓削町牛子谷4 |
電話番号 | 090-5472-6048 |
駐車場 | あり |
ホームページ | https://www.okulu.kyoto/ |
Writer市野亜由美
Writer市野亜由美
京都のおいしいお店を訪ねるのが好き。おすすめの手土産、ランチの行き先など、友人から尋ねられることもしばしば。仕事で、レシピの記事を担当できるのは幸せ。 食の世界の奥深さや、楽しいことへの興味が高じて、小さなイベントを自ら企画したりも。