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おいしいものって、食べるのはもちろん、それができあがる過程もすてきですよね。
この企画は、京町家カフェ「まつは」の西村めぐみさんと一緒に、ライターの市野亜由美が毎月一回、京都の里山、京北弓削(ゆげ)町の農家さんのもとを訪れる趣向。現地の穫れたて野菜を使って、いま流行の〝キャンプ飯〟ならぬ、〝ファーム飯〟を作って食べて、レシピもご紹介していきます。
畑を案内してくれるのは、「京農園よしだ」の吉田修也さんです。京都市の北部山間にある京北町の休耕田を利用した広い土地(約4.5ha)で、年間約100種類の京野菜・ヨーロッパ野菜を生産しています。
ではまず、今日のメイン食材、さつまいもの畑へ…と言いたいところですが、我々がさつまいもの収穫をしたのは前回の取材時(11月中旬)。
さつまいもといえば、子どもの頃に秋の行事で〝お芋掘り〟に行った思い出がある人も多いのでは? そのイメージどおり、収穫時期は10月下旬~11月です。さつまいもは畑に長く置きすぎて霜に当たると腐ってしまうため、遅くても初霜が降りる前までには収穫します。だから、この風景は11月に撮影せねば、だったのです~
前回の取材に同行してくれたほーちゃん(めぐみさんのお子さん)も、さつまいもを掘ってくれました。「大きいな~」とごきげん
吉田さんのところでは、1反(1,000㎡)の畑で、合計2,000㎏くらいのさつまいもが穫れるそう
―さつまいもについて、教えてもらえますか?
吉田さん:さつまいもは、ヒルガオ科の植物の肥大した根の部分で、甘藷(かんしょ)とも呼ばれます。原産地は中米ですが、日本には中国を経由して伝わったといわれています。1700年代初めに薩摩藩(さつまはん)が栽培を始めたものが、やがて江戸にも広まったことが〝さつまいも〟の名前の由来だそうです。現在は、さまざまな品種のさつまいもが全国で生産されています。今年、うちの畑では、ねっとり系の「紅はるか」、しっとり系の「シルクスイート」、ほくほく系の「なると金時」の3種類を育てました。
―さつまいもの旬って、いつですか?
吉田さん:さつまいもの収穫は8月ごろから始まり、11月くらいまでです。ただ、掘りたてよりも、2~3カ月置いて熟成させ、余分な水分を逃がしてからのほうが甘みが増すため、旬は10月~1月頃ということになります。
さつまいもは丈夫な植物で、収穫まではあまり手はかからないのですが、収穫から後がたいへんなんです。傷つかないように掘って、運んで、洗って、選別して熟成させるのですが、とっても重いので筋トレになります(笑)。寒すぎるところに置いておくと腐ってしまうので、熟成させるときは15℃くらいの保管庫に入れます。お家でも、直射日光の当たらない場所での常温保存がおすすめです。
といった、お話しを聞いているうちに、めぐみさんの調理準備も調っていました。
今回、ピザをつくることにした理由は、「さつまいもで、呑めるお料理を、と考えた結果です」と、めぐみさん。「さつまいもごはんとか、おいしいんですけれど…」と笑います。なるほど、納得!
洗ってアルミホイルで包んださつまいもの行き先は、燃え盛る焚き火の中~
しばらくすると、熱々の焼き芋が完成。今回は「紅はるか」「シルクスイート」「なると金時」3種のさつまいもを焼きました。皮をむいたら、ピザの下ごしらえはOKです
〈材料〉
焼き芋、市販のピザ(シンプルなものがおすすめ。今回は「4種のチーズのピザ」を使用)、生ハム、フレッシュグリーン(ほうれん草など)、オリーブオイル、ブラックペッパー各適量
〈作り方〉
(1)焼き芋は皮をむき、一口大にカット(手でほぐしてもOK)
(2)コンロなどでピザを熱々に温め、(1)と共にちぎった生ハム、ちぎったフレッシュグリーンをバランスよくトッピングする
(3)オリーブオイルを回しかけ、ブラックペッパーを振って出来上がり
※好みでレモンをしぼってかけてもおいしい
〈材料(作りやすい分量)〉
フェンネル(大きめのもの)1本、レモン1個、塩適量
〈作り方〉
(1)フェンネルは、根本は繊維に沿ってカットする。太めの茎の部分は繊維に対して斜めに、葉が付き出した茎は繊維に垂直に、それぞれ薄切りにする
(2)ボウルに(1)を入れ、レモン汁をたっぷり搾って和えておく
(3)レモンの皮の黄色い部分を刻み、フェンネルと合わせる
(4)味をみつつ塩を振り、フワッと混ぜ合わせて出来上がり
ピザの温め方は工夫を。奥の1枚は焚き火の中であぶってみたところ、チーズがおいしそうにとろけたものの、やや灰まみれに(笑) 手前のピザは二つ折りにして網で焼きました。
「今回は『4種のチーズのピザ』を使っていますが、ピザ生地のみのものを焼いてから具材と共にちぎったカマンベールをトッピングしたりしてもおいしいはず。いろいろ試してみてください」(めぐみさん)
フレッシュグリーンは、この日はとれたてのほうれん草を使用しましたが、それもお好みのものでどうぞ。
実は、「フェンネルのサラダ」は当初は予定になかったメニュー。吉田さんの畑の新鮮なフェンネルをみて、めぐみさんのインスピレーション発動です
フェンネルは根元と茎と葉と、それぞれ切り方を変えることで、サラダにまとまりが出ていました
フェンネルとレモンのさわやかさがお互いを引き立てます。さっぱりとしたサラダがピザに合う!
おまけの一品。めぐみさんが以前から好きという、焼き芋&豆乳ヨーグルトの組み合わせ(「豆乳ヨーグルト」なのがポイントとめぐみさん)。ぐるぐる混ぜていただきます。吉田さんにも好評でした
途中、焼き芋の試食もしたり(実は、お餅やスルメも焼きました(笑))で、テーブルの上のごちそうは控えめですが、おなかも満たされ、幸せに乾杯。来月はいよいよ冬本番。本格的な寒さがやってくる京北の風景も楽しみです
■京北の畑・野菜の紹介/吉田修也さん(「京農園よしだ」「Okulu」)
■畑を訪ねる人、料理考案/西村めぐみさん(京町家カフェ「まつは」)
※「まつは」は「まつは」は現在、不定期営業。ケータリングやお弁当などの注文は要相談。営業スケジュールはホームページやSNS(facebook、Instagram)などで確認を
店舗・施設名 | 「京農園よしだ」「Okulu」 |
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住所 | 京都市右京区京北上弓削町牛子谷4 |
電話番号 | 090-5472-6048 |
駐車場 | あり |
ホームページ | https://www.okulu.kyoto/ |
Writer市野亜由美
Writer市野亜由美
京都のおいしいお店を訪ねるのが好き。おすすめの手土産、ランチの行き先など、友人から尋ねられることもしばしば。仕事で、レシピの記事を担当できるのは幸せ。 食の世界の奥深さや、楽しいことへの興味が高じて、小さなイベントを自ら企画したりも。