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おいしいものって、食べるのはもちろん、それができあがる過程も美しいですよね。
京町家カフェ「まつは」の西村めぐみさんと一緒に、ライターの市野亜由美が毎月一回、京都の里山、京北弓削(ゆげ)町の農家さんのもとを訪れる当企画。いま流行の〝キャンプ飯〟ならぬ、〝ファーム飯〟を作って食べて、レシピもご紹介していきます。
畑を案内してくれるのは、「京農園よしだ」の吉田修也さんです。京都市の北部山間にある京北町の休耕田を利用した広い土地(約4.5ha)で、年間約100種類の京野菜・ヨーロッパ野菜を生産されています。
さあ、それでは今日のメイン食材、菊芋の収穫です!
菊芋の畑。9月ごろにお邪魔した際には、鮮やかなオレンジ色の花が咲いていました。茎が1.5~3メートルくらいまでになる背の高い植物なのって、何となく意外性ありませんか?(筆者は、吉田さんのところに通うようになるまで知りませんでした)
食用になるのは塊茎(かいけい)といって、土の下にある部分。地下に伸びた茎の一部が養分を蓄えて肥大化して塊状になったものだそう
土は硬くなく、塊茎は比較的地中の浅いところにできているので、それほど力を加えずに抜けます。こちらの吉田さんの畑では、1000㎏以上の菊芋が穫れるのだとか
―菊芋について、教えてもらえますか?
吉田さん:菊芋は、キク科ヒマワリ属の多年草です。花やイモの切り口が菊に似ていて、地下に多くの芋ができるので、この名前がついたようです。収穫は11月中旬くらいから春先まで。サツマイモやジャガイモといった他のイモと違って、あまり日もちしないのが特徴です。ただ、土の中にあればもつので、必要に応じて掘り、出荷します。
カロリーが低く、イヌリン(おなかの調子を整えたり、脂肪の吸収抑制が期待できるとされている水溶性食物繊維)も多く含まれているということで、健康に関心が高い人たちからも人気があります。
―菊芋はどう食べればいいですか?
吉田さん:菊芋は、生で良し、加熱して良し、使い勝手のよい野菜なんです。皮もむかなくてよいですしね。生で食べるなら、サラダやピクルス。そうそう、ちょっと意外かもしれませんが、ぬか漬けはおすすめですよ。
加熱する場合は、煮ても、炒めてもOK。イタリア語やフランス語ではトピナンブール(topinambour)と呼ばれ、実はイタリアンやフレンチでも、よく使われるメジャー食材なんです。素揚げにして付け合わせにしたり、じっくり火を通してソースにしたりしてもおいしいです。扱いやすくて、何でも使えるし、この時期から春先にかけての、〝レギュラー野菜〟です。
…と、お話しを聞くうちに、めぐみさんの準備も進んでいました。
「今回は『菊芋と豚肉で2つのテーブル』と題して、二つのお料理を作ります」と、めぐみさん。菊芋は油分と出合うと、土の香りが倍増するのだと話します。
「ゴボウの香りをさらに鋭く、さわやかにしたような感じ。この香り、豚の脂との相性がすごく良いんです!」
まずは豚汁作りから。なんといっても豚汁のおいしさは、根菜が重要なポイントだと、めぐみさん。次いで作るコンフィは、準備そのものはシンプルです。調理にじっくりと時間をかけるので(上の写真は、あとは加熱するだけ状態のコンフィ)、その間に豚汁を作ったり、食べ始めたりして過ごしているうちに追って完成するという、時間差を楽しむスタイル。こういうのんびりとした食事もいいもんですね。
〈材料〉
菊芋食べたい個数(たっぷり入れるのがおすすめ) おろしショウガ1かけ分 豚肉(切り落とし)、エノキダケ(根元を切り落とし、ほぐしておく)、ハクサイ、白ネギ、ごま油、酒、味噌、餅、いずれも適量
〈作り方〉
(1)菊芋は一口大の乱切りにする
(2)ハクサイはそぎ切り、白ネギは輪切りにしておく
(3)中火で熱した鍋にごま油をひき、エノキダケをしっかりと炒める
(4)豚肉と(1)も加えて、さらに炒める。豚肉が香ばしく焼き目がついたら、(2)とおろしショウガ、酒、たっぷりの水(分量外)を入れる
(5)弱目の中火でゆっくりと煮て、ハクサイがクタッとなったら火を止め、味噌を溶く
(6)再び火をつけ、焼いた餅を入れて表面が溶ける程度に煮込んで完成
〈材料〉
菊芋食べたい個数(たっぷりめに) 豚肩ロースの塊肉(もしくはステーキ肉)、塩、オリーブオイル、ニンニク、ブラックペッパー、レモン、いずれも適量
〈作り方〉
(1)菊芋は大きめの乱切りにする
(2)豚肉にまんべんなく塩をして、1時間ほど置いておく
(3)(2)の水気を拭き取り、耐熱の食品用ビニール袋に(1)と一緒に入れ、ひたひたになる量のオリーブオイルを注ぐ。空気をしっかりと抜いて、袋の口を密封する
(4)大きな鍋に湯を沸かし、(3)の全体を湯に沈める。鍋にふたをし、吹きこぼれない程度の弱火(沸騰させない)で、2時間加熱する
(5)袋から取り出して器に盛りつける。好みでブラックペッパーや、レモンを添える
※耐熱の食品用ビニール袋に代えて、清潔なガラス瓶で作っても。その場合は、口からお湯が入らない量のお湯に沈めるとよい
豚汁のエノキダケ。しっかりと焼き色がつくくらいまで炒めると、いいにおい!
こんがり焼いたおもちを入れて、少し煮込んで豚汁が完成
「妹の由香に今回のメニューを相談したら、『うん、いいね~。もちはダシが出るから』ってお墨付きをもらいました(笑) ダシが出るかどうかはさておき、豚汁におもちを入れるのは、私たちの好物。子どものころに柔道を習っていて、鏡開きでふるまわれる豚汁が姉妹そろって大好きだったんです。それ以来、豚汁にはもち、です」(めぐみさん)
「豚汁は、日本酒と共にどうぞ」とめぐみさん。ほかほか体が温まりますね
「菊芋と豚肉のコンフィ」には、パンやいちじくのコンポートを添えて。ここから、またお酒が進みます~
ブラックペッパーをふると、ぐっと味が引き締まります。コンフィは冷めてもおいしいので、呑みの席にぴったり
この日は、めぐみさんのお子さん、ほーちゃんも参加してくれました。夕暮れには少し肌寒くなってきた時期。12月の野菜は何が登場するのか、楽しみです~
■京北の畑・野菜の紹介/吉田修也さん(「京農園よしだ」「Okulu」)
■畑を訪ねる人、料理考案/西村めぐみさん(京町家カフェ「まつは」)
※「まつは」は「まつは」は現在、不定期営業。ケータリングやお弁当などの注文は要相談。営業スケジュールはホームページやSNS(facebook、Instagram)などで確認を
店舗・施設名 | 「京農園よしだ」「Okulu」 |
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住所 | 京都市右京区京北上弓削町牛子谷4 |
電話番号 | 090-5472-6048 |
駐車場 | あり |
ホームページ | https://www.okulu.kyoto/ |
Writer市野亜由美
Writer市野亜由美
京都のおいしいお店を訪ねるのが好き。おすすめの手土産、ランチの行き先など、友人から尋ねられることもしばしば。仕事で、レシピの記事を担当できるのは幸せ。 食の世界の奥深さや、楽しいことへの興味が高じて、小さなイベントを自ら企画したりも。