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2022.11.26

こんにちは、ライターの小澤まみです。

ガラス張りの大きな窓から見える活版印刷機。一乗寺にある『りてん堂』の前を通るたび、気になっている方も多いのでは?活版印刷機の名前は「チャンドラー」。「チャンドラー」と店主の村田良平さんに会いに行ってきました。

 

活版印刷機とグラフィックデザイン

カルチャースポットとしても、ラーメン激戦区としても有名な一乗寺。活版印刷とグラフィックデザインを手掛ける『グラフィックデザイン工房 りてん堂』は、一乗寺駅から徒歩3分の曼殊院(まんしゅいん)通りにあります。

ガラス張りの大きな窓からは、古い活版印刷機が見え、取材時も前を通る方々がのぞいていました。油とインクのにおいがする店内は、どこか懐かしい雰囲気。

店主の村田良平さんはデザインの専門学校を卒業後、グラフィックデザイナーとして働いていました。

デザインの勉強をしているうち、活版印刷に興味を持ち、家の近所の活版印刷機所に通い始めます。しかしある日、印刷所の廃業と印刷機の廃棄の話を告げられ、どんどん話が進んでしまいました。

「印刷機を守りたい」という一心で、「チャンドラー」と呼ばれる活版印刷機と活字を譲り受け、2012年に『りてん堂』をオープン。『りてん堂』の「り」は「Re」再生する。「てん」はグラフィックの構成要素、線と点の「点」。「堂」は屋根の下に人が集まる、という意味が込められています。

 

『りてん堂』だからできること

▲大量の活字

 

活版印刷とは、印刷方法の一種です。活字を組み合わせて作った版にインクを付け、紙を乗せ、上から圧力をかけて、紙にインクを転写することで印刷されます。わずかなインクのかすみ、凹凸の面白みは、活版印刷だから出せる魅力です。

 

▲一段低くなっている板がインテル

 

活字と活字の間には、コミと呼ばれる込めものやインテルと呼ばれる行間の空き量を調節する板を詰めます。組み合わせて詰める様子は、まるでパズルのようです。余白(白場)がありすぎても間延びしてしまうし、なさすぎると窮屈に。デザイン全体を決定する重要なパーツとなっています。店舗の引き出しには、様々な厚みや長さのインテルがぎっしり詰まっていました。

 

屋号『グラフィックデザイン工房』が物語るように、この絶妙なバランスはグラフィックデザイナーの村田さんならでは。印刷技術とデザイン力を兼ね備えているから、継続的な注文や「村田さんにお願いしたい」という依頼が後を絶たないのだと思います。

 

名前入り豆文

「豆文」(10枚 税込み390円)に、名前を入れてもらうサービス(10枚 税込み660円)があるので、私もお願いしました。豆文とフォントを選んで、村田さんに活版印刷機で印刷してもらえます。

▲活字とインテルを組み上げている様子

▲1枚ずつ手差しに豆文を差し込む。

▲印刷したい部分(凸状)にローラーでインクを付けて圧力をかけることで、豆文に転写される。

▲できあがり

 

「チャンドラー」が動き出した時には、思わず「よろしく!」と声をかけたくなりました。初めての名前入り豆文。かわいいし嬉しいので、誰かにも作ってあげたい。ちょっとしたプレゼントにもおすすめです。

※通常は後日引き取りか郵送でのお渡しになります。

 

活版刷りの文具

デザインや印刷をしてくれるだけでなく、活版刷りの文具も販売しています。村田さん曰く、「売れ筋ではないものばかり作っている。ハマる人にはハマる」。その言葉通り、私はガイドブックに載っていた「伝ゑ候」(税込み12枚390円 / 72枚1,320円)という一筆箋にハマり、今回の取材を依頼しました。「断腸の思いです」「失念しておりました」など、言いにくいことがイラストとセットで印刷してあり、何度も見返したくなります。

思わず手に取ったのが、ポストカード「燦々」(税込み170円)。大量の「SUN」をS、U、Tとひとつひとつ組み合わせて印刷しました。文字とデザインで、太陽の光が輝いている様子を伝えています。ただ、ずっと見ていると、太陽だと思っていた形が人の顔に見えてきました。実は太陽の光に見立てて、明るく輝いている人を表現しているんじゃないかと思えてなりません。

 

 

文字のシルエットそのものを印刷できるのが、活版印刷の特徴です。「活版印刷は、文字の持っている力がそのまま伝わる。文字の力が魅力」と教えてくれた村田さん。だからこそ私は、数年前に見たガイドブックの「伝ゑ候」をずっと覚えていたのだと思います。言葉を大切にしている村田さんだからこその作品。ぜひ手に取ってみてください。

 

デザインと文字を武器に、これからもハマる作品を作り続けてくれると楽しみにしています。

Information
店舗・施設名 グラフィックデザイン工房 りてん堂
住所 京都市左京区一乗寺里ノ西町95
電話番号 075-202-9701
営業時間 営業時間:10:00~18:00
定休日:日・祝日+不定休
交通 叡山電車「一乗寺駅」より徒歩3分
お問合せ先 r.retendo@gmail.com
ホームページ http://www.eonet.ne.jp/~retendo/

Writer小澤まみ

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Writer小澤まみ

読み手よし、書き手よし、世間よしの「三方よし」のライターになりたいと日々精進中。文房具、コーヒー、お花、神社、サッカー好きの1児の母。 書いて縁を結ぶ「京都書縁」で、日々ブログを書いています。
WEB:https://kyotoshoen.com/

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