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おいしいものって、食べるのはもちろん、それができあがる過程も美しいですよね。
京町家カフェ「まつは」の西村めぐみさんと一緒に、ライターの市野亜由美が毎月一回、京都の里山、京北弓削(ゆげ)町の農家さんのもとを訪れる当企画。いま流行の〝キャンプ飯〟ならぬ、〝ファーム飯〟を作って食べて、レシピもご紹介していきます。
畑を案内してくれるのは、「京農園よしだ」の吉田修也さんです。京都市の北部山間にある京北町の休耕田を利用した広い土地(約4.5ha)で、年間約100種類の京野菜・ヨーロッパ野菜を生産されています。写真は、落花生を掘りおこした吉田さん。このように畑へ伺うたび、今月のテーマとなっているもののほかにも野菜を見せてもらえ、毎回、感動します。
さあ、それではカボチャが育てられている畑へGO!
カボチャはウリ科カボチャ属に分類される野菜。ツルがどんどん横に伸びるので、栽培には広めのスペースがいるのだとか。「4~5m幅の畑が必要です。今年はこの斜面の雑草をカボチャのツルでおさえられるか、実験的に植えてツルを下に伸ばしてみました」と吉田さん。今回、取材チームは斜面を追いかけていくのは断念、遠くから収穫を見守ります。
カボチャの花。基本的に1本のツルに1個か2個のカボチャがなるように、余分な花は順に摘んでいき、栄養を実に集中させるそう。
収穫は、ヘタを見て判断。向かって左のようにヘタがコルク状になり、縦に白い線が入り始めたらOK。向かって右のはもう少し待つべし、なのです(撮影時に雨が降っていたので実がぬれています)。
カボチャは収穫後、2週間~1か月くらい涼しいところに置いて熟成させてから出荷するそう。この〝追熟〟によって栄養価もうまみも増し、ヘタがしっかりと乾いているのがおいしくなった目印です。確かに先ほどの収穫したてのヘタと比べると見た目が全然違いますね。
いよいよ、カボチャの調理スタート!
カットすると、鮮やかな黄色! 断面がすでにおいしそうです!!
―カボチャについて、教えてもらえますか?
吉田さん:カボチャの原産地は南北アメリカで、日本には16世紀後半ごろに伝わったといわれています。秋から冬に食べるイメージがありますが、実は夏野菜。ゴールデンウィークごろに種をまき、8月下旬から9月に収穫します。先ほど出荷前に追熟させるとの話もありましたが、買ったあとも丸ごと(カットしていない)のカボチャであれば、台所の隅やベランダの日陰など、暗くて涼しいところに置いておけば12月の冬至までもちます。今でこそ、冬場もいろんな野菜が手に入りますが、昔、緑黄色野菜が少ない季節に、保存がきくカボチャを食べるのは生活の知恵だったんでしょうね。
― おいしいカボチャの見分け方はありますか?
吉田さん:一般的には形が整っていて、手に持ったときにずしっと重みを感じるものは実が詰まっていておいしいですね。この二つのカボチャを比べると向かって左側のほうが形は良いです。そうした違いは、受粉の不良によるストレスなどが関係していて、それが良くない方向に働く確率が多いんです、少し皮が固くなるとか。そうそう、カボチャの皮が黄色くなっている部分がありますが、あれは太陽の光が当たらなかった部分で、味には影響はありません。
…と、お話しを聞いているうちに、めぐみさんも調理をスタートしていました。
これぞ、アウトドア料理の醍醐味。風に吹かれながら、ごきげんでカボチャの皮むき、種取りをするめぐみさん。「今日はカボチャを揚げます。下ごしらえが終われば、一気に、食事系とデザート系が完成しますよ~」
カボチャはたっぷりの油でじっくりと揚げて、ホクホクに。
〈材料(4~5人分)〉
カボチャ(大)1/2個 揚げ油適量
~クリームソース南瓜~
ホワイトソース約300g(シチュー1皿分くらい) アンチョビ(フィレ)2枚 エノキダケ1袋 粉チーズ、オリーブ、カイエンヌペッパー各適量
~キャラメルパンプキン~
好みのアイスクリーム、キャラメルパウダー各適量
〈作り方〉
(1)カボチャは種を取り、一口大にカット。好みに応じて、ところどころ皮をむく
(2)エノキダケは石づきを切り落とし、ほぐす。フライパンの底から2㎝ほどの高さまで揚げ油を注いで180℃に熱し、きつね色になるまで揚げ、油をきっておく
(3)続いて(1)の2/3の量を揚げる。中まで火が通ったら取り出し、油をきる
(4)カボチャを揚げている間に、小鍋でアンチョビを軽くソテーし、いったん取り出す。ホワイトソースを加えて温め、アンチョビを戻し入れてアンチョビ風味のクリームソースをつくる
(5)皿に(4)を広げるように盛り、熱々の(3)を乗せる。(2)とオリーブをトッピングし、粉チーズとカイエンヌペッパーを散らして「クリームソース南瓜」の完成
(6)残しておいたカボチャ1/3を揚げ、中まで火が通ったら取り出し、油をきる
(7)揚げたてをアイスクリームと盛り合わせ、キャラメルパウダーを振りかける。「キャラメルパンプキン」のできあがり
※ホワイトソースは、クリームシチューやグラタンなど、さまざまな料理のもとになる万能ソース。別名ベシャメルソースとも呼ばれる
今回、アンチョビ風味のクリームソースをつくるのに使用した「特別栽培米のホワイトソースルゥ(東京フード株式会社)」。粉末タイプのものだと、持ち運びも簡単ですね。
まず、お皿にクリームソースを広げてから、揚げたてカボチャをオン! 大胆でおしゃれな盛り付けもめぐみさんのお料理の魅力です。
「クリームソース南瓜」には、パンを添えて。「キャラメルパンプキン」のアイスクリームは今回、好きなものを選んで自分で盛り付けるのも楽しい。チョコ味も、抹茶味も合いました。キクイモの花で可愛く飾りつけも。
飲み物は、マールティー(たんごワイナリーのぶどう果皮を使ったお茶)とフルーツ、ワインを合わせたサングリアでした。
次回のことなども話しつつ、のんびり。10月の野菜も楽しみです~
■京北の畑・野菜の紹介/吉田修也さん(「京農園よしだ」「Okulu」)
■畑を訪ねる人、料理考案/西村めぐみさん(京町家カフェ「まつは」)
※「まつは」は「まつは」は現在、不定期営業。ケータリングやお弁当などの注文は要相談。営業スケジュールはホームページやSNS(facebook、Instagram)などで確認を
店舗・施設名 | 「京農園よしだ」「Okulu」 |
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住所 | 京都市右京区京北上弓削町牛子谷4 |
電話番号 | 090-5472-6048 |
駐車場 | あり |
ホームページ | https://www.okulu.kyoto/ |
Writer市野亜由美
Writer市野亜由美
京都のおいしいお店を訪ねるのが好き。おすすめの手土産、ランチの行き先など、友人から尋ねられることもしばしば。仕事で、レシピの記事を担当できるのは幸せ。 食の世界の奥深さや、楽しいことへの興味が高じて、小さなイベントを自ら企画したりも。