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おいしいもの、いいですね。食べるのはもちろん、それができあがる過程も大好物な、ライター・市野亜由美です。
先月からスタートした、この連載。京町家カフェ「まつは」の西村めぐみさんと一緒に、毎月一回、京都の里山、京北弓削(ゆげ)町の農家さんのもとを訪れる企画です。いま流行の〝キャンプ飯〟ならぬ、〝ファーム飯〟を作って食べて、レシピもご紹介していきます。
畑を案内してくれるのは、「京農園よしだ」の吉田修也さん。京都市の北部山間にある京北町の休耕田を利用した広い畑(約4.5ha)で、年間約100種類の京野菜・ヨーロッパ野菜を生産しているそう。
吉田さんに連れていってもらったこのエリアには、新玉ねぎと葉にんにくが植えられている、と説明を受けてもいまひとつピンとこない、〝都会っコ〟な筆者。…でも、確かに、じっくりと見てみると、葉っぱの雰囲気が異なります。
この日、めぐみさんはファミリーで京北へ。息子のほーちゃんも収穫をお手伝いしてくれました。この新玉ねぎは写真からもわかるように、まだ根っこの部分は小さめ。葉もやわらかくて全部食べられるといいます。
そして、こちらが葉にんにく。葉がしっかりとした感じ。
根っこのにんにく部分のかたち、新玉ねぎとまったく違いますね。なるほど!
収穫してきた新玉ねぎをつるんと一枚むくと、真っ白な表皮が。見るからにおいしそうというか、まぶしい! 神々しさすら感じます。
―新玉ねぎについて、教えてもらえますか?
吉田さん:品種にもよりますが、うちで育てているものは、出始めは「葉玉ねぎ」として味わってもらうことができます。5月末から6月にかけて、たまねぎの部分が大きくなってくると葉を切り取って収穫し、「新玉ねぎ」として販売します。風通しのよいところで干して保存すると外皮があめ色になり、皆さんがよく知る玉ねぎの見た目になりますよ。
― 新たまねぎの味の特徴は?
吉田さん:それはもう、なんといってもみずみずしさです。野菜は、たいていどれもそうなのですが〝走(はし)り、盛(さか)り、名残(なご)り〟といってシーズンが三つに大別できます。出始めから、だんだんと水分が減っていくかわりに甘み、うまみは増していきます。玉ねぎは、収穫してから保存もきくので年中食べることのできる野菜ですが、みずみずしくてフレッシュな味わいは新たまねぎならではですね。
…と、お話しを聞いているうちに、めぐみさんの調理がスタートしていました!
今回のポイントのひとつが、「スライサーは、よく切れるもので」と、めぐみさん。新玉ねぎの細胞がつぶれないのでおいしくなり、かつ目が痛くならないから、とのこと。そして、スライスは無理しないで、とも。
「スライスすることより自分の手を大事に。怪我をしてはおいしさも台無しです」
ただ干すだけ。とはいえ、これも太陽を使ったクッキングなのです
アウトドアでのお料理では、食中毒対策なども気になってくる時期。ということで、梅干しを使用。葉にんにくがなければ、にんにくとネギなどに代えても
〈材料(4~5人分)〉
新玉ねぎ4個 ローストビーフ(肉汁も使用)450g 葉にんにく1本 梅干し(塩と紫蘇だけで漬けたシンプルなもの)適量 米油50ccくらい
〈作り方〉
(1)新玉ねぎは、葉の付け根を5センチほど残して切りわけ、付け根をしっかりつかみ、スライサーで薄切りにする
(2)広いザルに広げて、1時間ほど天日で干す
(3)葉にんにくのにんにく部分を薄切りし、ボウルに入れる。種を除いた梅干しと紫蘇をちぎり加える
(4)ローストビーフを食べやすい厚さにカット。肉汁とともに(3)のボウルに入れてあえ、皿に盛る
(5)小鍋で米油を熱し、葉にんにくの葉(2ミリ幅くらいの千切り)を加えて揚げるようにする。緑が濃くなったら、米油ごと(4)にまわしかける
(6)天日干しの新玉ねぎを、たっぷりとのせて完成
※スライサーの刃が調整可能であれば、スライスの厚みはできるだけ薄めがよい
※新玉ねぎをスライスするとき、手でつかんでいる部分ギリギリまで攻めず、安全にスライスできるところまでで止める(残った付け根部分はたてに四つ切りにして蒸して塩でいただくほか、味噌汁の具、炒め物などに利用しましょう)
※ローストビーフはシンプルな味付けのものがおすすめ。今回は、塩、少しのしょうゆ、バルサミコ酢で調味
※天日干しが難しいときは、扇風機などで同様に乾燥させて、セミドライにして楽しんでも
「新玉ねぎは、グリルしても、炒めても、それこそ何にしてもおいしいですよね。でもだからこそ、畑でシンプルに作れるお料理とは、と考えました」とめぐみさん。また、「玉ねぎにかぎらず、フレッシュな野菜は水にさらすのがもったいないと思っちゃうんです。さらした水も使いたいくらい」と、笑います。
天日干しにすることで素材の風味をギュッと濃縮。新玉ねぎのおいしさを余すことなく堪能できるのですが、その食感にも驚かされました。
「舌ざわりがなめらかでシルクのよう。それでいて、しっかりとした新たまねぎの繊維のおいしさも感じられます。麺みたいにつゆにつけて食べたり、冷た~い卵豆腐と合わせたりしても良さそうですね」(めぐみさん)
今回はクラフトビールを合わせて
通常はお肉に野菜を添えることが多いと思うのですが、今回は新玉ねぎが主役ですから!
「新玉ねぎのスライス天日干し ローストビーフ添え」との料理名が頷けます
ほうれん草と卵もわけていただき、撮影後はこんなぜいたくな時間を。
また来月、ここへ来るのが楽しみです。
■京北の畑・野菜の紹介/吉田修也さん(「京農園よしだ」「Okulu」)
■畑を訪ねる人、料理考案/西村めぐみさん(京町家カフェ「まつは」)
※「まつは」は「まつは」は現在、不定期営業。ケータリングやお弁当などの注文は要相談。営業スケジュールはホームページやSNS(facebook、Instagram)などで確認を
店舗・施設名 | 「京農園よしだ」「Okulu」 |
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住所 | 京都市右京区京北上弓削町牛子谷4 |
電話番号 | 090-5472-6048 |
駐車場 | あり |
ホームページ | https://www.okulu.kyoto/ |
Writer市野亜由美
Writer市野亜由美
京都のおいしいお店を訪ねるのが好き。おすすめの手土産、ランチの行き先など、友人から尋ねられることもしばしば。仕事で、レシピの記事を担当できるのは幸せ。 食の世界の奥深さや、楽しいことへの興味が高じて、小さなイベントを自ら企画したりも。