京都御苑の近くにある、築100年ほどの町家を改装したカフェ「まつは」。こちらを営む西村めぐみさん・由香さん姉妹が提供する手作りのごはんやスイーツはおいしいのはもちろん、素材の使い方が自由でユニークだと評判です。「まつは」のお二人のインスピレーションが感じられるような、それでいてお家で作りやすいレシピを教えてほしいとお願いしてスタートした当連載も第23回を迎えました。
おいしいバゲットを用意したら、〝さっと携えて〟出かけられるのが魅力!
今回の撮影、取材は久しぶりにお店の外にて実施。少し前にめぐみさんから「店内が盛大に雨漏りしてしまいました!」との連絡が入り、一度、撮影を延期したというのに、なんと、この日もまた雨~(笑)。
雨漏りは、樋の一部が外れたのが原因と分かり、早々に復旧されたそうですが(さすが!)、ここは大事をとってということに加え、「少しずつ暖かくなり、屋外で食べたり飲んだりしたいなとの気持ちが高まってきたので、さっと身軽に持って出かけられるものを用意しました」(めぐみさん)との提案に合わせて、ちょっぴり遠出をすることにしました。あいにくのお天気でものんびりできるところは…と思案して、向かった先は「京都水族館」。めぐみさんファミリーがお出かけした際には利用されるという、2階カフェコーナーのテラス席で〝おいしいものセット〟を広げます
〝啓蟄(けいちつ)〟に「春を味わう豚肉のリエット」を
(飲み物は、カフェコーナーで買いました)。
今年の〝啓蟄〟は3月5日
啓蟄は、土中で冬ごもりをしていた生き物たちが目覚める頃、という意味。ちなみに、啓が〝ひらく〟、蟄は〝土中で冬ごもりしている虫〟を指すのだそう。今年の啓蟄は3月5日、期間的には3月20日の〝春分〟までをいいます。街を歩く人たちの服装も明るいカラーが増え、心も浮き立つようなシーズンですね。
今回のメインメニューであるリエットは、お肉を使ったペースト。オープンサンドを自分で作って食べる感じで楽しみます。春のお出かけにぴったりですが、バゲットの切り方もポイントのひとつと、めぐみさんは力説します。「少し前にテレビ番組で見た、パリの朝食風景でバゲットを縦にカットしているのが印象的だったんです。真似してみたら、とてもいい! スライスしたバゲットは運ぶときに少しガサガサしますが、このかたちだと、とてもスマートに持ち歩けるので気に入っています」
思い立ったその日に、バゲットと作り置きのリエット(もし少し余裕があれば朝から作り始めれば、お昼には完成しますよ)を携えて外に出て、テイクアウトの熱々のコーヒーと共に味わう…この軽やかさが特に似合うのは、寒さのトンネルを抜けた今だからこそ、かもしれません。
蕗の薹(ふきのとう)のほろ苦さ、
苺の酸っぱさが、絶妙なアクセントに
豚バラ肉(ブロック)…200g
豚肩ロース肉(〃)…200g
根菜や香味野菜(新タマネギ、ニンジン、セロリなど)…合わせて約400g
ニンニク…1かけ
フキノトウ、イチゴ、バゲット…各適量
(1)強火でフライパンを熱し、豚肉の表面がしっかりとキツネ色になるよう焼く(中まで火を通さなくてよい)。出てきた脂をふき取り、深鍋に入れる
(2)根菜や香味野菜を全てざく切りにし、(1)に加える。鍋に入れた肉+野菜の高さの倍量の水(分量外)を注ぎ入れる
(3)ふたをして中火で2時間~2時間30分煮る(基本的には放置でOK。時おりふたを開けて焦げ付かないようチェックし、必要に応じて弱火にするなど調整を。水分は具材のてっぺんが出るくらいまでは減っていてもOK)
(4)豚肉を菜ばしでつついてほろほろと崩れるくらいになったら火から下ろす。ザルでこして、スープと具材に分ける
(5)スープをボウルに入れ、氷水に当てて一気に冷まし、冷蔵庫に入れてしばらく置き、脂とゼラチン状態のスープに分離させる
(6)具材は粗熱が取れたら木べらなどを使って潰す(肉は少しかたまりが残っていてもおいしいので、なめらかなペーストにする必要はない)
(7)(5)を冷蔵庫から取り出し、ゼラチン状態のスープのみを(6)に、しっかりと混ぜる。塩、こしょう(いずれも分量外)で味を調え、リエットの完成
(8)フキノトウは、がくの部分を付けたまま熱湯でゆで、火が通ったらザルにあげる。冷めたらがくを取り除き、水分をふき取っておく。イチゴは食べやすく切る
(9)バゲットをカットし、(8)を乗せたリエットを添える。好みで粗びきこしょうを振る
●ひとことアドバイス
※完成したリエットは1週間ほど保存可(要冷蔵)
※豚バラ肉はおいしい脂とゼラチン質が多く、豚肩ロース肉は旨みが強い。そのため、二種類を合わせているが、どちらか片方だけにしてもよい
※根菜や香味野菜は旬や好みに応じて、何でも使える。香りの強いゴボウなどもおすすめ。乾いてしなびてしまった野菜や料理の端材(むいた皮など)を入れてもおいしくなる
※野菜のざく切りは、ラフなカットでOK。タマネギだったら4等分するくらいの感じ。セロリなど、煮ても繊維が残るものは断ち切るようにカットして
※野菜を加える量は肉と同じくらいまでに。多く入れ過ぎないことがポイント
※作り方の⑦で取りよけた脂はラードとして、チャーハンや炒め物に使うとよい。リエットを長めに保存するとき、この脂で上部をカバーするようにすると乾燥を防ぐことができる
リエットが入っているのは中東の素焼きの器。ぽってりとした優しい見た目も素敵なのですが、軽くて持ち運ぶのに向いているそう。ペーストを塗るのに使った水牛の角のナイフは当たりが柔らかく、焼き物や塗り物の器を傷めにくいので、出番が多いといいます。
クロスとして敷いている白い布は、由香さんが毛糸を縫い付けて縁取りをされたもの。その昔、めぐみさんへのプレゼントのラッピングに使われていたのだとか。器などを外に持って出るとき、包むのに重宝しているんですって。素敵です!
お店のほうは、現在のところ3月23日(火)から通常営業の再開を予定。それまでは、準備のためにいったんテイクアウトもお休みとなるそうです。定期的に続けられているティアス宗筅さんの「ティースクール」は3月21日(日)に開催。3月27日(土)・28日(日)には岡崎公園(左京区)で行われる「おいしい旅のマーケット」に出店、軽い飲食物や食に関わる工芸品の販売をされます。
▲せっかくなので、「京都水族館」らしい一枚を。チューブ状の水槽でお昼寝(?)中のゴマフアザラシ
▲テラス席から見下ろした「京の里山」エリア。めぐみさんは、お子さんと一緒にこのルートを散策したり、東屋(あずまや)でのんびりとしたりして過ごすのだとか
▲ぱくっと、試食タイム。ちなみにこの日のバゲットは、お店の近くの「ブーランジェリー リベルテ 京都寺町本店」の「トラディショナル」でした
▲この布は、もう5年くらい使っているそう。縁取りがあることで、一気に可愛さアップ!気楽にじゃぶじゃぶと洗えるというのもいいですね
―次回は〝春分〟をイメージしたお料理のレシピをお届けします
店舗・施設名 | まつは |
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住所 | 京都市中京区二条通富小路東入ル晴明町671 |
電話番号 | 075-231-7712 |
営業時間 | 10:00~17:00(LOは16:30) ※17:00以降の利用については要相談。電話やメール(matuhairoiro@gmail.com)でお問い合わせください。 【日曜・月曜休。都合により臨時休業、長期休暇あり】 |
交通 | 地下鉄「京都市役所前」駅から徒歩約6分 |
ホームページ | https://www.matsuha225.com/ |
Writer市野亜由美
Writer市野亜由美
京都のおいしいお店を訪ねるのが好きなライター。レシピ記事が得意。
今回は、自身のお気に入りのお店「まつは」の西村めぐみさん(写真向かって右側・姉)、西村由香さん(同左側・妹)の協力を得て、簡単に作れて、ワクワクするようなレシピを連載する夢が叶いました。
「お茶をするのも、お酒を飲むのも、ぼーっと過ごすのも好き」という西村姉妹が切り盛りする同店は、2020年2月で6周年。良い塩梅(あんばい)に、かしこまり過ぎず、丁寧につくられた食事やスイーツ、おつまみにファン多数。
WEB:https://www.matsuha225.com/