夜になって八坂神社の西門前にあった衹園会所へ新選組のメンバーが集まってきます。
ここで、新選組のほか、会津、桑名、一橋の兵も集合するはずでした。新選組は単独行動するつもりはなかったのです。ですが、大きい組織はいろいろと段取りがあって、約束の時間に来ず……。結局、新撰組だけで出発することになります。
衹園会所があった辺り。八坂神社西門前
新選組の隊士は30人程度。これが近藤勇班と土方歳三班に分かれて(さらに土方班は2つに分かれていたという話もあり)、攘夷派が潜伏していそうなところを捜索します。いきなり、池田屋を目指したわけではありませんでした。
四条通から、近藤藩は鴨川の西側(木屋町?先斗町?)を、土方藩は鴨川の東側(縄手通?)を捜索しつつ、北上。茶屋や商人の家を〝御用改め〟していきました。仮に木屋町通を通ったとして、衹園会所があったあたりから池田屋のある三条小橋まで約1.2㎞の道のりです。
本を読むと、ある程度は検討をつけて捜索した、片っ端からローラー作戦で見て回った、三条小橋と縄手に浪士がいるという情報があったので二手に分かれた……など、諸説あります。いずれにしても、突然、刀を持った新選組隊士に「御用改めである!」なんて踏み込まれるのですから、一般人にとってはたまったもんじゃありません。150年前の京都、怖いです。
そして池田屋に到着したのが近藤班。「古高を奪還すべし!」と相談していたのかどうかは定かではありませんが、池田屋には長州、土佐、肥後などの志士20人ほどが2階に集合していました。
近藤勇の「御用改めであるぞ! 手向かいいたすにおいては容赦なく切り捨てるぞ!」の一声で戦闘が始まります。しばらくすると、土方班もかけつけ、さらには会津や桑名の兵も池田屋を取り囲んで、戦いは2時間も及び、多数の犠牲者がでました。
その、池田屋の2階に行ってみました。とはいえ、現在、池田屋跡に立つ居酒屋「旅籠茶屋 池田屋 はなの舞」の2階です。ここまで少しお勉強が過ぎたので、居酒屋池田屋のレポをしつつ、池田屋事件を振り返ってみましょう!
「旅籠茶屋 池田屋 はなの舞」前にある「維新史跡 池田屋騒動之址」の石碑
お店に入ると、まず目に付くのが階段。映画やドラマでよく見る「階段落ち」が再現してあるんですね。とすると、階段上にいるのは近藤勇、落ちていくのは土佐の北添佶摩でしょうか! お店の中は、旅籠をイメージした内装になっていて、あちこちで新選組の隊士と志士が刀を手に対峙しています!
有名な大階段のシーンを再現
息詰まる2時間を思いながら、ビールでも……というわけで、おつまみは、階段状の皿にお刺身を盛り付けた人気メニュー「池田屋大階段5点盛り」(写真はその3貫盛り、1790円[税抜])で。ゴクリと飲んで頭上を見上げると、梁の上でも、戦いが! 油断なりませんね~。新選組の衣装や顔出しパネルもあって、新選組ファンにはたまらない、テーマパークのような空間でした!
「池田屋大階段5点盛り」。お刺身の種類は時期により変わります
客席の頭上でも戦いが…
新選組の衣装に身を包んで、記念撮影はいかが?
池田屋事件巡りはまだまだ終わりません!
「旅籠茶屋 池田屋 はなの舞」を出たら、少し東へ歩いて、三条小橋西詰へ行ってみてください。「昭和初期の三条小橋」という案内看板があり、1929年に三条小橋を東から西に向かって撮影した写真が載っています。撮影当時、池田屋の建物は残っていたとか(幕末と同じ建物かはわかりませんが)。よーく見たら見えるような、見えないような……。それはあなた次第です(笑)。
写真の時点で、池田屋事件から65年が経っていますが、江戸時代から続く旅館が写真にうつっており、当時の面影が少し感じられると思います!
三条小橋西にある小さな案内看板にも注目
池田屋事件では、吉田松陰に学んだ吉田稔麿や、京都の志士たちのリーダー格だった宮部鼎蔵も命を落とします。
こうした人材を失ったことで、明治維新が数年遅くなってしまったという人や、反対に、この大事件のせいで長州藩が奮い立ち、明治維新が早まったという人も。歴史に「もし」はありませんが、始まりは、古高俊太郎1人の逮捕。このことが重要な歴史事件になるなんて、当時の人たちは思いもよらなかったでしょう。
店舗・施設名 | 旅籠茶屋 池田屋 はなの舞(池田屋跡) |
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住所 | 京都市中京区三条通河原町東入中島町82 申和三条ビル |
電話番号 | 075-257-8122 |
営業時間 | 月~木 16:00~00:00 / 金 16:00~01:00 / 土 11:30~01:00 日・祝 11:30~00:00(ラストオーダー23:00) 年中無休 |
交通 | 京阪 三条駅徒歩約4分 |
ホームページ | https://hananomai-official.com/shop/ikedaya/ |
Writer 株式会社文と編集の杜
Writer 株式会社文と編集の杜
歴史が好きなライター・瓜生朋美が2013年に設立した編集・ライティング事務所。「読みものをつくること」を業務に、インタビュー、観光系ガイド、広告記事、書籍など、ジャンルを問わず企画・編集・ライティングを行っている。近年は、歴史イベント運営や広報物の制作も担う。2020年オフィスに表現を楽しむスペース「店と催し 雨露」を併設。イベント開催するほか、雑貨の販売も。
WEB:http://bhnomori.com/