ようこそおおきに。椿屋劇場支配人こと、ライター椿屋です。
みなさん、京都お好きですか? 手しごと、お好きですか?
年の瀬迫る気忙しい折、お世話になったごあいさつを兼ねてわたくしが訪れたのは、我が家のある三上長屋同様、メディアに引っ張り蛸の名物路地「あじき路地」。
目印は、隣接する銭湯の長~い煙突でございます。
花街・宮川町から歩いてすぐのところに佇むこの路地は、世に出ることを夢見てものづくりに励む若手作家たちが集う場所。
オーダーメイドの帽子屋さんを筆頭に、レザーアイテム作家やパティシエ-ル、三味線職人といった面々が、醤油を貸し借りできる昔ながらの長屋暮らしをしています。
来春には、路地奥に朝食がメインのカフェも出来るので、益々賑やかになりそうです。
平日はそれぞれのものづくりに専念し、週末のみ店舗として自らの商品を販売するという居職スタイルで注目され、漫画「路地恋花」および続編の「路地恋唄」(麻生みこと著/アフタヌーンKC)や小説「初恋料理教室」(藤野恵美著/ポプラ社)のモデルとなったことでも知られます。もちろんロケ地としても登場頻度は高く、記憶に新しいところではドラマ「はんなりギロリの頼子さん」でしょうか。宮川町が全力バックアップしていた映画『舞妓Haaaan!!!』でも撮影が行われました。
そして、京都らしい趣のある風景以上に新聞・雑誌やテレビへの出演オファーの多いのが……
「おかあさん」こと、あじき路地の大家・安食弘子さん!
店子たちを我が子のように見守り、その暮らしや作家活動をサポートされています。
激しくオンボロ(失敬!)に老朽化した路地をアトリエ兼ショップとして甦らせたのが15年前。自身も七宝・彫金の作品づくりに没頭していた若き頃を、「金銭的にも精神面でも母の応援がなければ続けられなかった」と振り返り、志を持って京都で創作活動をする若者たちを少しでも支えてあげられたら……という想いから、献身的にエールを送り続けてはります。
「この15年でいろんな子たちとの出会いがありました。ここを足がかりに、一所懸命努力して巣立っていく姿を見るのは本当にうれしいものです。ちょっと寂しくもありますけどね。ブレずにひとつのことを追い求められるかどうか、私が何より重要視しているのはそれだけです。これがやりたい!という熱い想いを応援してあげたい。思い入れが強すぎて、ときには作品づくりに口を出してしまうことも(苦笑)。大きく羽ばたいて欲しいという気持ちでこれからも出来るかぎり続けていけたらと思てます」
おかあさんとわたくしのお付き合いは、かれこれ約9年。きっかけは、入居することが決まったばかりだった「evo-see」店主・加藤憲司さん(以下、けんちゃん)と某酒場で意気投合し(よくある光景)、酔った勢いで「こんど取材させてくださいよぉ」とお願いしたこと。カウンターでクダ巻いてるだけではないんですよ? 後日、ちゃ~んと紹介媒体もぎ取って参りました。ここで一句。「京都での 仕事は酒場で 回っててく」
あじき路地がまだ知る人ぞ知る場所だった当時、メディアで紹介される機会もいまほど多くはなく、わたくしが「evo-see」の取材第一号となりました。はい、ここで一家言。
「恩は売っておくもの、酒は呑んでおくもの」
その取材の際、心配して様子を見にいらしたおかあさんとヅカ話(おかあさんは年季の入ったごりっごりのタカラジェンヌファン!)で大盛り上がりしたのも懐かしい思い出でございます。
服や靴はサイズ展開が豊富なのに、どうして帽子はそうじゃないのか。頭の大きさだって十人十色。被って心地良い帽子がないなら作ればいい!――思い立って、独学で(チャレンジャー!)カスタムオーダーの帽子ブランドを立ち上げたけんちゃん。
店名の由来は、烏帽子。宮中において烏帽子を取ることはパンツ一丁になるくらい恥ずかしいとされた平安文化の価値観に倣って、帽子が当たり前のようにコーディネートの1アイテムになることを願い命名したというお話、いまなお強く印象に残っております。
「いまもその気持ちは変わってない。おかあさんの後押しやメディア効果から注文が殺到した時期は流れ作業的にこなしていくだけで精一杯だったのが、9年目に入ってやっと気に入ってもらえるのものを丁寧に作るっていう原点に戻ってきたのを感じてるかな。自信持って作ったものはその想いが接客にもにじみ出るのか、お客さんの反応も違う気がして」と、忘れるべからずな初心。
ちなみに、好きな布の組み合わせが選べる「もこもこイヤーマフ」を、わたくしも愛用しております。
>新旧入り交じる住人たちのお店にお邪魔いたします。
店舗・施設名 | あじき路地 |
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住所 | 京都市東山区大黒町通松原下ル2丁目山城町284 |
電話番号 | 店舗により異なる |
営業時間 | 店舗により異なる |
交通 | 店舗により異なる |
お問合せ先 | info@ajikiroji.com |
ホームページ | http://ajikiroji.com/ |
Writer椿屋 山田涼子
Writer椿屋 山田涼子
京都拠点の映画ライター、グルメライター。合言葉は「映画はひとりで、劇場で」。試写とは別に、年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。最近Netflixにまで手を出してしまい、1日24時間では到底足りないと思っている。
Twitter:@tsubakiyagekijo