もともとは、日本料理出身の大塚さん。東京や四国の和菓子店で経験を積んだり、神戸の製菓専門学校に勤めるなどして、最後にお世話になったのが桂の中村軒さんだったそう。
「僕、和菓子職人になってから、ずっと、どらやきがうまく作れなかったんですよ」
と、ここでまさかの衝撃告白!
だからこそ、長い間研究をし続けることができて、今があるんですって。
独立して人前でどらやきを焼くことになっているとは、当時のご自分が知ったらびっくりされるでしょうね。
小麦粉は神戸の洋菓子やカステラ屋さんが使うトップブランドの粉を使用。
卵は大原野の養鶏場まで取りに行っており、その卵の香りを引き立てるために、みりんではなくレンゲの蜂蜜と米飴を使うなど、妥協のない素材選びの積み重ねがおいしさへと繋がっているのです。
「いい素材を使うっていうのは、中村軒での経験が大きいです。本当においしいものに普段から触れさせてもらっていましたね」
「今はお客さんにも皮ばっかり褒められるから、嬉しいけどちょっと悔しい」と笑う大塚さん。
待ってて!次からあんこを褒めるターンだから!!!
こちら、お持ち帰りをした翌日の“朝どら”なんですけれど…
出来立てのハッピーなおいしさとはまた違う、地に足のついた、しみじみとしたおいしさ。
出来立てホカホカの初デートの時とは、皮とあんこの「香りのバランス」が変わった印象を受けました。
あっという間にしっとりと匂い立つ、レディに変身したあんこに、またしてもハートをノックされた気分…。
やはり、あんこは熱が少し落ち着いてからの方が本領発揮となりますね。
ということで、あんこだけもチラッと見せていただきました。
大塚さんは独立してお店をやろうと思うよりずっと以前に、このあんこの炊き方、旨味の残し方を発見して、これを使った和菓子をいつか作りたいと思っていたそうです。
「僕が初めて勤めた和菓子屋であんを炊かせてもらった時は大きなカゴで大量に炊くやり方でした。専門学校の先生をしていた時は、少量で炊くのが基本で、豆に残る旨味が違うと感じました。豆の潰れ具合とかも自分の中でいろんな発見があって、小さい鍋でしかできない炊き方があるなと思ったんです」
その後、中村軒で学んだ炊き方も織り交ぜて現在の炊き方に。
一度に炊く小豆は豆の状態で3Kgを上限としているため、当然、炊く頻度が上がります。
砂糖が少なくて日持ちがしないという理由もありますが、料理で一番大事なのは香りだという教えも影響しているのだそうです。
「香りは無限じゃない。これは香川にいた頃の社長の受け売りなんですけど(笑)。作ってから時間が経つほど味が落ちるのは、おそらく、フレッシュなものにだけある、なんとも言えない香りがなくなっていくからではないかと思うようになったんです」
「亥ノメ」さんのどらやきは、あんこには保湿のための寒天を使わず、皮の膨張剤も極力控えることで、伝えたい香りがよりクリアに、ダイレクトに届く気がします。
ぜひ、出来立てとテイクアウトの両方を時間差で楽しんでほしいどらやきです。
もちろん、フレッシュな香りが失われない時間差で!
オリジナル紙袋は「かめいち堂」さんのデザイン。細かいところまで手を尽くす「亥ノメ」さんがつくるどらやきにぴったりの、丁寧で親しみの持てる可愛さです。
店名の由来は店主の干支「亥」と、奥様の干支「羊」の鳴き声を合わせたというのも素敵ですが、もうひとつ他に、「とら」や「さる」や「うさぎ」の名のつくお店(!!!)にも負けない、皆に愛されるお店になるぞという強い想いが込められています。
来年2019年は年男となる大塚さん。
「亥ノメ」さんのますますの快進撃に期待したいと思います。
店舗・施設名 | どらやき亥ノメ |
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住所 | 京都市上京区紙屋川町1038-22 |
営業時間 | 9:00〜17:00(喫茶11:00〜16:00)売り切れ次第終了 水曜&第2・4木曜(25日は営業)、26日休 |
交通 | 市バス北野天満宮前から徒歩2分 |
Writerかがたにのりこ
Writerかがたにのりこ
あんこをこよなく愛し、月に2回は自宅で餡炊きをするフリーライター。 元・漉し餡党、現在はあんこ博愛主義者。