ワインとのペアリングの前に、大福単体についても述べさせていただきたい!
先ずは、この断面を見てください。
素晴らしきかな!
このジューシィな果汁・・・を抱きとめる鉄壁の白あん!!!
養老軒さんの大福は9割近くが白あんベース。
包むフルーツの水分量に合わせて甘さや硬さを全て変えて、「フルーツ」と「餅」という遠い素材を滑らかに繋いでいるのです。
そして、どこから食べても口当たりが均一な餅と白あんの薄い層の美しさ。
地球の断面のようではありませんか。
そして、手包みなのに、閉じ目が見当たらない!
これが「明日の名工」の為せる技なのですね。もはや「名工の今日」だよね(落ち着いて)。
実はワタクシ、丸くて美しい和菓子を真っ二つにするのには少なからず抵抗があるのです。
抵抗というか、後ろめたさでしょうか。
読者の皆様に私の歯型がついた断面をお見せするわけにはいかないので、包丁でカットしていますが、本来、丸いものはそのままかぶりついた方が美味しいことが多いのですから。
だから、丸いアナタを切ってごめんね、と撮影で切ったものの他に、丸い状態のものも食べるのが私なりの礼儀。
その結果、私が倍掛けで丸くなるのは仕方がないことなのであります。
ところが、この「みかん大福」に関しては真っ二つにする罪悪感が薄い!
なんなら切ってこそ、みたいなところもあるくらい。
ちなみに、他の大福は縦に包丁を入れてもらっていいのですが、みかんの断面を美しく見せるなら、サザエさんのエンディング式に水平に包丁を入れてあげてくださいね。
特にワインと合わせる時には、鮮やかな断面が気分を高めてくれそうです。
特別に店内で栓を開けていただいたのは、左の微発泡白ワイン。
ODDERO MOSCATO D’ASTI
モスカート・ダスティ
「今はまだハウスみかんを使っているので、右の辛口の白、ドンナ・ルジアの方がすっきりと合うかもしれませんが、これから旬を迎える早生(わせ)みかんを使うようになると、みかんの酸味とモスカート・ダスティの甘さが合います」
個人的には、白あん全体にいちごを混ぜ込んだ「いちごあんクリームチーズ大福」とモスカート・ダスティのペアリングがそれぞれの魅力を引き立てあっていて、思わず「おっ!」と声が漏れてしまいました。
いちごの果実味がワインを飲んだ時の方が強く感じられて、クリームチーズの塩気とコクがワインの甘みを程よく抑えてくれるんですね。単品で飲んだり、食べたりした時とは味の感じ方が全く違う!
順子さんの言う“他の飲み物では感じられない味の広がり”というのは、このことか!と感動いたしました。
ワインと和菓子のペアリング。
季節によって、フルーツの味も変わる繊細な大福だからこそ、さらにバリエーションも広がりそうですね。
興味はあるけれど自分では選ぶ自信がないなぁ…という方、ちょっと面白い手土産を探している方は、ぜひ訪れてみてください。
店構え同様、どなたでも入りやすい、ペアリングの世界の入り口が広がっていますよ。
店舗・施設名 | 養老軒 |
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住所 | 京都市中京区四条通西大路東入ル南側 |
電話番号 | 075-311-3405 |
営業時間 | 10:00~18:00 水・木休 |
交通 | 阪急・嵐電「西院」駅下車すぐ |
Writerかがたにのりこ
Writerかがたにのりこ
あんこをこよなく愛し、月に2回は自宅で餡炊きをするフリーライター。 元・漉し餡党、現在はあんこ博愛主義者。