残暑お見舞い申し上げます。
ようこそおおきに。椿屋劇場支配人こと、ライター椿屋です。
みなさん、京都お好きですか? 路地、お好きですか?
それにしても、あっついわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
あ、失敬。つい思わず叫ばずにはいられませんでした。
「今年の夏は異常」だと毎年繰り返している気がしますが、それでも、2018年の夏は猛暑に次ぐ酷暑の日々に、豪雨や台風と、やはり例年に増してけったいな天気が続きました。
被害を受けられた方々が一日も早く日常を取り戻されることを祈っております。
さて、ジリジリと照る太陽がもはやヒリヒリと痛いくらいの毎日。わたくし、浴衣といえども真っ昼間から出かける気力も体力も持ち合わせてはおらず……。つくる端から滝のような汗で崩れていく化粧という徒労に辟易しながらも、取材のためになんとか身支度を整えることを繰り返す中……えー……そろそろこの酷暑の件が言い訳ということにお気づきの方も少なくないかと思いますが。
まさに!この連載の取材をとにかく近場で済ませたい一心にて、今回ご紹介するのは最終兵器と言いますか、七並べのジョーカー的と言っても過言ではない、我が住まいのある長屋を紹介することといたします。え?なんですって?ご近所すぎだろうって?? みなさまのお住まいの地域のニュース番組では「命の危険があるような暑さなので無用な外出は控えてください」って呼びかけてませんか? NHK京都さんでは何度も繰り返してらっしゃるんですよ、これが。おほほほほほ。
嗚呼、名物路地に暮らしててよかった!!!
さまざまなメディアのロケ地として使用され、最近では、ここのところ出演作が急激に増えてきている高杉真宙主演の『逆光の頃』にも登場しています。この映画、たまたま新宿の映画館で観ていたのですが、オール京都ロケだったため、わざわざ東京でスクリーン越しに我が家を目にすることになったという記憶に残る作品でございました。ちなみにこの『逆光の頃』は、この連載でも度々ご紹介している「京都市メディア支援センター」の信國さんが、監督やプロデューサーからイメージを全部ヒアリングしてから情報提供を行い、ロケ地を絞り込んでいったという作品でもあるのです。他にも、石塀小路や花見小路、鴨川、八坂の塔といった、THE 京都!な場所がたくさん出てきて、あるあるワープ三昧ですので、巧みかつ自然な繋ぎもお見逃しなく。
近年では路地ばかりを集めたガイド本が発行されたり、路地を散策する番組がつくられたりと、京都の路地に注目が集まっています。わたくしが暮らすここ、「三上家路地」もそのひとつ。大家である三上さんの名が冠された、築140年を優に超える職人長屋で、西陣という土地柄、いとへん業界の職人さんたちが居職を共にしていた町家でございました。
どんどんと職人が減っていく中、西陣のまちも空き家が目立つようになり、昔ながらの家に新たな住人を迎えるべく、不動産関係の某団体がモノづくりの場として再生を図ったのが20年以上前のこと。その活動の波に押されるようにして、活気を失いつつあった三上家路地にやってきたのが陶芸家・生駒啓子さんでした。
大学で陶芸を学び、器制作がメインではない作品づくりを行う彼女にとって、三上家路地は工房を構えるのに最適の物件。外観さえ変えなければ、中はどういじってもいいという条件と破格の家賃に惹かれて、電気窯を設置してしまったというから驚きですね。
本来なら風呂場になるはずだった場所に窯を据えたため、いまもって銭湯通いを続けている暮らしっぷりは、まさに昔ながらの職人さんの如し。「年々近所の銭湯が潰れていって、いまは自転車でお風呂に行ってるから、湯上がりなのに夏は汗だく」とのこと。
お風呂くらいいつでも貸すから、遠慮なく言うてね!という、長屋ならではのお付き合いもそろそろ10年(!!!!)を迎えようとしています。
路地でのロケに何度も遭遇してきた彼女の印象に残っているのが、京都出身のアコースティックユニット高鈴のミュージックビデオの撮影だったとか。「この狭い路地にあんなに人がいっぱいいるの見たの後にも先にもそのときだけちゃうかな。蝋燭持って揺れてて、ちょっと独特な光景やった」。
彼女からのお声掛かりで2時間ドラマの帝王・船越英一郎氏が訪れたときには、わたくしもちゃっかり便乗させていただき、新参者として撮影に参加したこともございます。いろいろお話したにも拘わらず、我が家を別宅のようにやって来るイタチの話がオンエアされた思い出深いロケでございました……。
ちなみに、一番かっこよかったのは藤田まことだそうです。
せっかく窯も入れたことだし、と始めた陶芸教室には、常時20人ほどの生徒さんが通って来られていて、毎年秋に開く「生駒啓子陶芸教室展」と時同じくして行われるライトアップは、すっかり観光スポットに。
今年の期間は、10月6日(土)~12日(金)の一週間。幻想的な風景を毎日何気なく味わえるのは、住人の役得です(*´∀`)♪
教室を運営する傍ら、母校である精華大学で指導もしていて、「絵も描くし、金継ぎもするし。教える仕事をしているからこそ、できるだけ幅広く活動していけたら」とのこと。陶芸に興味のある人は、一度体験におこしあれ。
「生駒啓子陶芸教室」
電話:075-415-3507
住所:京都市上京区紋屋町323
Writer椿屋 山田涼子
Writer椿屋 山田涼子
京都拠点の映画ライター、グルメライター。合言葉は「映画はひとりで、劇場で」。試写とは別に、年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。最近Netflixにまで手を出してしまい、1日24時間では到底足りないと思っている。
Twitter:@tsubakiyagekijo