みなさま、こんにちは!
京都ミステリーハンターのすみゆうこです。
吹きすさぶ風が身に沁みるこの頃。今日も今日とて、京都の街に眠る、あらゆる伝説を探索しています。しかし京都は本当に面白い街ですね!街中にある公共施設の一部に、あの平家物語の伝説が眠っているのですから…。
今回訪れたのは、二条城の北側に位置する二条公園。
この公園は一見、何でもない普通の公園ですが、その奥には源頼政が倒したと言われる伝説の物の怪、鵺(ぬえ)と深い関わりを持つ池があるのです。
伝説の物の怪、鵺とは一体どんな妖怪だったのでしょう。そして、なぜ二条公園にその鵺にまつわる池が存在するのか、その謎をひも解いていきます。
鵺池をご紹介する前に、まずは鵺(ぬえ)とはどんな妖怪なのかをご紹介せねばなりませんね。
皆さんはツチノコやネッシー、人魚など、その実体は知れずとも姿形を想像できる伝説の生き物の存在をいくつかご存知なはず。
鵺とは、日本に古くから伝承される伝説の妖怪です。夜の鳥、または空の鳥と書いて「ぬえ」と呼びます。その名を示すように夜に鳴く鳥のような生き物であることから、鵺と名付けられたそう。
「平家物語」で登場する鵺は、顔はサル・胴体は狸・手足は虎・尾はヘビのような姿かたちをしていると書かれています。まさに異形そのものですね。
一説には、平安京の東西南北を表す干支との対比で、東西南北を斜めにした北東・南東・南西・北西を象徴する干支(寅・巳・申・乾)を模した形になっているのではないかとも言われており、まさに安寧の平安京を揺るがす存在として当時の人々から恐れられた怪物だったのでしょう。
画像提供 国際日本文化研究センター
鵺の出現は平安時代後期頃、さまざまな説話が残りますが、一番有名なお話が平家物語にある源頼政の鵺退治ではないでしょうか。お話の内容をご紹介いたしましょう。
時は平安時代末期、近衛天皇の住む清涼殿では毎晩、「ヒョー…ヒョー…」という不気味な鳴き声ともに黒煙が立ち上っていた。この不気味な出来事に天皇は恐れおののき、とうとう床にふせってしまいます。ただごとではない事態に側近たちは弓の達人である源頼政に鵺を退治して欲しいと願い出ることに。
頼政が清涼殿へ到着すると、夜空は黒煙に覆われ、鵺が現れる。すかさず頼政は鳴き声のする方へ向かって矢を射ると、見事に鵺に命中!鵺はそのまま二条城の北方へと落下しました。鵺が落ちる方向へ追いかけ、矢を射られて弱っている鵺を頼政の家来が見つけると、とどめを刺した。鵺が退治されたそれ以降、天皇の容態は安定し、たちまちに復活したことで頼政は、天皇から褒美として獅子王という刀を貰った。
画像提供 国際日本文化研究センター
頼政は、酒呑童子(しゅてんどうじ)や土蜘蛛(つちぐも)といった妖怪を倒した伝説のある源頼光の直系でもあります。単なる弓の達人だったからというだけでなく、妖怪退治のプロである家系もかわれて「頼政にしか頼めない!」と強く懇願されたのだとか。それで見事に結果を出すのですから、カッコいいですよね。
さて、その伝説の鵺退治と二条公園はどういう関係があるのか…ということですが、頼政に射られて鵺が落ちていった場所は二条城の北方…つまり二条公園の位置するところだったのです。
頼政が鵺に刺さった矢を抜いて、血のついた鏃(矢先)を洗った池こそが二条公園の奥にある「鵺池」なんですね。縁の地が、池としてまだ現存されているという奇跡…感無量です、ホント。(ちなみに現在の鵺池は復元されたもので当時のものそのままではありません。)
そういうワケで実際にその地を訪れてみました。
場所は地下鉄東西線「二条城前駅」から徒歩15分ほど。出口を出ると、目の前に二条城があります。駅から二条城を挟んでちょうど対角線上の奥にある公園が二条公園です。お城の周りを周回するように裏手側へ進みます。
到着しました、二条公園!お写真でも分かるように、二条公園は小さいお子さんを持つお母さんや小学生に大人気のスポット。敷地内にはたくさんのお子さん、親御さんが遊んでおりました。
公園の敷地はとても広くて、中心に丘や池があるのでお子さんがとても遊びやすいのですね。地元の方に愛される公園だというのが一目で分かります。私も子供時代にこんな公園で遊びたかった…。いやしかし、平日の午後に大人が一人で公園に行くなんて、公園で遊ぶ子供を狙う怪しい大人に見えないか一抹の不安がよぎります…。
それぐらい普通の公園で、初めて訪れた私は、まさかここに鵺池があるのが意外…という印象でした。公園の中へ入り、鵺池へ向かう途中にある小さな橋や、飛び石が何とも風情があって公園というより、日本庭園みたいな趣があります。
さてさて、ゆっくり散策しながら、二条公園の奥地へ進むと…。
ありました。
一本の大きな、枝垂れ柳を囲むように池が湧き出ています。その中心に一つの石碑がありました。石碑はもういつからあるのか分からないほどに古いのでしょう。石に刻まれた文字を読むことは出来ませんでしたが、近くの説明書きによれば、その石は石碑で間違いないようです。
現代に残る形で再建されているのですが、石碑のある周辺は公園という雰囲気ではなく、歴史ある土地の静かな時間が流れているようでした。平家物語に書かれた場所の一部がこうしてここにあるんだという想いを馳せながら、ゆっくり散策してみてください。
そして、鵺池のちょうど後ろには立派な朱の鳥居がそびえたつ祠があります。
この祠の位置こそが鵺が落ちた場所だという節もあるそうですが、その真偽は定かではありません。ただ、祠が建てられたのは1929年の昭和初期とのことで、意外にもまだ新しいのだとか。長い歴史の末に祠が建てられたのは、鵺という伝説の存在を後世にも伝え続けようとする先人たちの想いによるものかもしれません。各時代の人々が伝承を残し、再建を繰り返しながら現存されている鵺池を眺めることができるのも、先人たちのおかげなのですね。
今回の発見!ミステリーポイントは
「現代に街と自然に溶け込む、物の怪の存在を感じる」
鵺はトラツグミという鳥の鳴き声に似ていることから、かつての人々はトラツグミを鵺という妖怪に例えられたという節もあります。しかし、それが真実であるならばきっとこうして、長い時間をかけて伝承を守られ人々から大事にされてきた存在にはならなかったのではないでしょうか。
鵺という物の怪がいるかどうか分からない。けれど、きっといるのかもしれないと信じる気持ちで、縁の地へ訪れることで、もっと歴史に対して深い興味が沸いてくる気がしませんか?
不思議な存在を恐れたり、否定したりするだけでなく、不思議なものと共存して生きていく姿勢を京都の人々から学ばせてもらいました。ぜひ、皆さんも鵺池を訪れてみてくださいね。
店舗・施設名 | 鵺池(二条公園) |
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住所 | 京都市郁芳通美福東入上京区主税町910-40 |
交通 | 京都市営地下鉄東西線「二条」駅から徒歩13分 京都市営地下鉄東西線「二条城前」駅から徒歩15分 JR嵯峨野本線(山陰本線)「二条」駅から徒歩13分 京都市営バス(10・93・202・204号系統)「丸太町智恵光院」下車徒歩3分 |
Writer角侑子
Writer角侑子
京都出身の父を持ち、京都をこよなく愛する母の英才教育を受けて育った、京都好きのWEBライター。
ミステリアスな話、それにまつわるスポット、ついでお香の香りも大好物。