さて、「叡電乗ってどこにいこ?」。第3回は「木野」駅です。相対式2面2線のホームで、いわゆる「無人駅」。
乗車駅証明書発行機(オレンジ色)と、IC改札機が設置されていて、切符の有無に関わらずホームに立つことができるので、慣れない方はちょっと不思議に思うかもしれません。乗降の方法は「バス」の要領です。
乗るときには、乗車駅証明書(整理券)を発行します。降りるときには、運転席近くの出口から切符や乗車駅証明書を渡したり、定期を見せたりして降車します。ICカードの場合はIC改札機にタッチして乗車するしくみです。
困るのはICカードをタッチし忘れたり、定期や財布を忘れたりしても、気づかずに電車に乗れちゃうこと(苦笑)。出町柳駅に着いてから「どうしよう!」とパニックになったことも。
木野駅は、閑静な住宅街と田畑などのあるのんびりしたところにあり、京都府立北稜高校の生徒の最寄駅として、毎日たくさんの生徒が乗降者しています。
平成元年に、京都精華大前駅ができるまでは、京都精華大学の最寄駅でもあったのだそうです。駅のすぐそばにあるパン屋さん「レ・フレール・ムトウ」さんは、パンの好きな人は要チェック。今回は、ムトウさんではなく、このあたりの学生にとっては懐かしすぎる、素敵なカフェを紹介します。
■バイク乗りや地元の人に愛され35年の「マックさんの家」
今回、ご紹介するのは木野駅から南へ徒歩4分ほどのところにある「マックさんの家」。地元の学生や住民に愛されながらも、一見(いちげん)さんも入りやすい明るいカフェです。
イメージとしてはカフェというより、喫茶店やレストランという感じでしょうか。
80〜90年代にバイクに乗っていたライダーなら、ツーリングの途中に立ち寄った人も多いのではないでしょうか?
実は、90年代にバイクに乗っていた筆者。当時は大阪に住んでいたので、この店のことは知りませんでしたが、両親が福井県出身のため福井県に抜けるのに京都市右京区の北山杉のあたりをよく走っていたものです。
今でも、初夏にバイクのエンジン音を聞くと、乗りたくてうずうずしてきます(笑)。そんなわけで「マックさんの家」は店頭に飾られたバイクに惹かれて、4年前に京都へ引っ越してきたときからチェックしておりました。当時は、喫煙可のお店という情報で、まだ訪問できていなかったのです。
しかし! たばこを吸わない方に朗報です!
昨年より、全面禁煙になっていますので、お子さんを連れたファミリーもたくさん訪れています(子ども用の椅子もあります)。
マスターの木村さん、通称マックさんは、鈴鹿などのサーキットで125ccなどの旧車のレースでよく優勝しておられたようで、当時のバイク界では名の知れた方。
「バイク乗りが安心して入れる店」をと、1982年7月にオープンしたそうです。林道帰りだとブーツが泥だらけだったりしますし、バイク乗りへの偏見を持った方もいらっしゃいますよね。そんななかライダーが気兼ねなく寄れる店なのです。
もちろん、バイクに乗る乗らないに関係なく門戸を開いておられます。現在は、バイク人口が減っているのもあり、ライダーよりも地元のお客様が多いそうです。
マックさんは、このお店ができてから10年ほどは、現役でレースで走っておられたそう。
筆者は、そんなすごい方とは知らず、自分の乗っていたバイクYAMAHAのフェザー(FZRになる前の初期型)の話をしたら、あらまぁ偶然、マックさんも昔少しだけフェザーに乗っておられたことがあるとのこと。
「1万回転からの伸びがいい」という話で盛り上がりました(うれしい♪)。いやぁ、懐かしい……。
マックさん、残念ながら顔出しはNGだったので、バイトさんで店の雰囲気をご紹介。マックさんというのは、実は、もともとはマスターの名前ではなく、メカニックのマックさんという方にとてもお世話になったということで名前をお借りしたのだそうです。
創業当時から変わらない人気のメニューが、マックランチ(850円)。
ハンバーク、チキンカツ、イカリングフライ、ホタテフライという贅沢な取り合わせ。香り高いコーヒーをつけても1,100円です。ランチという名前ですが昼だけじゃなく夕方でも食べられます! 全メニュー、営業時間内いつでも注文できるのです。
ついで人気なのが、ブランチセット(900円)。ブランチセットには2種類ありますが、こちらはAセット。
ドリンクが選べます。サンドイッチのパンがふかふかでやわらかく、サラダがたっぷりあるので、結構おなかいっぱいに。
チキンカツ(900円)は、チキンカツが5枚もあるので男性も満足!のボリューム。
小さめの食べやすいサイズのパフェもあります。
撮影は、実は、人がいない瞬間を狙いましたが、奥の席では、女子高生や奥様方がおしゃべりしていたり、手前の席では、男性がひとりでほっこりしておられたり、待ち合わせておられたり……。取材当日も、別の日(後日、娘とプライベートで訪問)も、とにかくひっきりなしにお客様がいらっしゃいました。
うーん。愛されている店だなぁ。
そして、客席もトイレも、掃除がとても行き届いています。
このステッカーは、来店記念にもらえちゃうのです。噂によれば80年代、このステッカーをつけたバイクや車が京都をたくさん走っていたのだそうです。大阪出身の筆者は、90年代にFM802のステッカーをつけた車をよく見ましたが、そんな感じかしら……と想像しました。
私も、ちゃっかりいただきました。
定番メニュー以外にも季節のピラフや、ブランチセットなど別のメユーも。消費税が変わるなどのことがない限り、しばらく料金が変わることはないそうです。
マックさんは、今はレースではなく、オフロードバイクで林道を走っておられるようです。お話をしているうちに、筆者もすっかりまたバイクに乗りたくなってしまいました(笑)。
【店舗データ】
マックさんの家
所在地:〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町2241(木野駅徒歩4分)
電話:075-722-5551
営業時間:10:00〜18:30(L.O.18:00)
定休日:水曜日(年末年始・お盆、祝日は水曜でも営業)
座席数:42席
駐車場:13台
※子連れ可
■もうすぐ大根炊き! 立派な仏舎利大塔のある妙満寺
マックさんの家の前を少し先へと進んだところに、顕本法華宗総本山妙満寺があります。
建立当時は、現在の烏丸五条あたりにあり、その後、戦火を逃れつつ場所を移し、寺町二条にて長く親しまれ、今の地には昭和43年に移転してきたそうです(境内の「建立の由来」には昭和42年との記載あり)。
山門の前には大きな鯉のいる池があります。
山門をくぐると、左手に鐘があります(除夜の鐘をつくには整理券が必要です)。
立派な本堂。迫力があります。
本堂でお参りしたのちに振り向くと比叡山が。ここからの景色が格別です!
「雪の庭」「安珍清姫の鐘(撮影禁止)」で有名でもありますが、今回は、異国にいるような不思議な仏塔「仏舎利大塔」での参拝を実践しつつご紹介したいと思います。
仏塔の入り口。ろうそくに火をつけ、線香を灯してから仏塔を3周するという参拝方法です。
参拝方法はこちらを参考にしました。
靴を脱いで中に入ります。香炉をまたくそうです。
賽銭箱にお金を入れてから、ろうそくに火を灯し、線香に火をつけてからお釈迦様に感謝をささげ願い事を念じるそうです。線香の本数は書かれていませんでしたが、全部で12本につけました。まずは、お釈迦様の前に3本立て、そして、9本の線香を持って外に出て靴をはきました。
時計回りということで、入り口に向かって左手に進みました。まずは最初の線香を。
隣の壁へと進み、2本目の線香を立てて拝みます。この南側は特に鄭重(ていちょう)にと書かれています。
お釈迦様が悟りを開かれた金剛宝座があるからだそうです。
本堂の見える壁面に3本目を立てます。これで一周しました。これを3周します。最後にろうそくをつけた正面入り口の前にて拝んで終わりです。右繞三匝(うにょうさんそう)という礼拝作法だそうです。
小さな仏像がたくさんおかれた仏舎利大塔。一度、右繞三匝で礼拝してみませんか?
妙満寺では12月10日(日)11時より「大根炊き」がおこなわれます(釈尊成道会も兼ねています)。1,000円で、おいしい大根をいただけるうえに、安珍清姫の鐘や、枯山水が見学できますよ(通常は見学のみで500円)。
【お寺のデータ】
所在地:〒606-0015 京都市左京区岩倉幡枝町91(木野駅徒歩約8分)
TEL:075-791-7171 FAX:075-791-7267
拝観料:境内 無料 本坊(本堂、雪の庭、展示室)大人500 小・中350 未就学無料
拝観時間:境内6:00〜7:00 本坊(本堂、雪の庭、展示室)9:00〜16:00
■もうすぐ針供養が行われる「幡枝八幡宮」
妙満寺の裏手に位置する小高い山に、幡枝八幡宮が鎮座しています。駅から歩くと12分ほどかかり住宅街に入ったところに、正面の入り口があります。
一の鳥居まで25段、一の鳥居からは104段ある階段を登りきると、二の鳥居があります。向かって左手の奥にある小さな赤い鳥居は針神社の一の鳥居。針神社へと続いています。
神様への参拝は、原則として午前中が好ましいです。なぜなら、神様は早くお休みになられるためです。また、参道の真ん中は神様の通り道ですので、真ん中を歩くことは避けましょう。また、鳥居をくぐるときには、一礼をします。
八幡さまですので、そもそも文武の神様ですが現在はさまざまなご利益があるのだとか。Wikipediaによれば
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また、地鳴りの中心地に湧き出ていたといわれる清泉は「石清水」と呼ばれ、およそ1000年間枯れることなく滾々と湧き続けていたが、近年の宅地開発の波によって消滅した。
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とのこと。非常に残念です。どんなお水だったのでしょうね。
幡枝八幡宮の境内。静かで穏やかな雰囲気で、さわやかな風に迎えられました。地元の人が訪れていらっしゃいました。
本殿の奥は摂社貴船神社。さらにその奥のほうに針神社があります。
針神社。
12月8日11時より針供養が行われるそうです。使い古した針などを供養するものです。亡き母が洋裁をしていた影響で、最近、私も裁縫を再開したくなっていたので、ミシンの針を持っていこうと思います。
一の鳥居近くには、ご神木と思われる立派な木がありました。
【神社のデータ】
所在地:〒606-0015 京都市左京区岩倉幡枝町1118(木野駅徒歩12分)
TEL:075-791-3576 FAX:075-791-3576
(電話受付時間 午前9時~午後5時まで)
拝観料:無料
拝観時間:特になし(神社のお参りはなるべく午前中か午後の早い時間に)。
木野駅近くには、ほかにも神社仏閣があります。のんびりした住宅街ですが、散策するには穴場ですよ。
木野駅から見た比叡山
店舗・施設名 | 木野駅 |
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住所 | 京都市左京区岩倉幡枝町45 |
ホームページ | https://eizandensha.co.jp/guide/station/kino.html |
Writer藤嶋ひじり
Writer藤嶋ひじり
編集者・ライター・恋愛コラムニスト。洛北と叡山電車を愛する3姉妹の母。子ども時代から鉄分多め。区画整備された新興住宅地育ちで、山々に囲まれた洛北に憧れ移住。