「あれ? こんなところに新しいベーカリーが!」。
堀川商店街の北端を出てすぐ、晴明神社のほど近くを通っていたとき「おうちぱん」の看板を見つけ、迷わず店内へ。しっくい塗りの白い壁、木製の棚など、絵本に出てきそうなかわいらしさに、そそられました。
聞けば、今年の5月にオープンしたばかりだとのこと。
パン職人として約18年の経験をもつ中村秀亮(しゅうすけ)さんと、販売などを担当する妻の悦子さんの二人が目指すのは「毎日、食べてもらえるようなパン」だそう。
ナチュラルなお店の雰囲気とぴったり合ったおいしそうなパンがずらりと並びます。
サンドイッチは、食パンに具を挟んだベーシックなもの、バーガー、バゲットを使ったカスクートのおもに3種類のスタイルで用意されています。
「(サンドイッチで)こちらならではの具材とか、ポイントとか、何か工夫されている点はありますか」と尋ねると、「特にないですね」と秀亮さんはおだやかにニッコリ。
そこを何とかと、食い下がったところ、驚きの一言が。
「あ、うちのサンドイッチは辛子バターを塗ってません」
「え!?」
―私がおそらく初めてサンドイッチを作った小学校の調理実習でも、数々のレシピ本でも、アルバイトをしたパン屋さんの厨房でも、具を挟む前にバターを塗ると教わりました。
思わず、「パンに水分がしみこむのを防ぐんですよね???」と、自分の知識を確認するように聞く私。
「しみこんだら、しみこんだでおいしいかなと。(辛子バターなどの)余分な味をつけたくないんですよね」と秀亮さん。悦子さんも「小さいお子さんがいると、辛子が食べられないからって確認されるお客さんの声も聞きます」と話してくれました。
今、まさに子育て中のお二人にとって、理想のサンドイッチは〝家でお母さんが作ってくれる〟ような優しい味わいのもの。
「耳つきサンド」(302円)の具は3種類。
チーズ、薄切りのキュウリ、ハム。
薄切りのキュウリとツナサラダ。
卵サラダは、ゆで卵にマヨネーズと塩・こしょう、それにちょっぴりのお砂糖。
いずれもあっさりめの味付けを心がけておられるそう。
ちょっと失礼して食パンをめくると、四隅まで丁寧に具材が挟まれています(これうれしい!)。
「耳付きのサンドイッチなんですね」との私の問いかけに、それまでおっとり優しい口調だった秀亮さんが
「耳がおいしいのに!」「そもそも切り落とそうと思ったことがないです」
と、はっきりと言われたのも印象的でした。
修行探訪10軒目から得た学び。
「常識やレシピにとらわれず、自分の感覚を大切に」
このほか、よく聞けば、もう少しガッツリ食べごたえのあるものをとのことで誕生した「チキンカツバーガー」、それなら「魚も!」とのお客さんのリクエストで作るようになった「フィッシュバーガー」(いずれも324円)などのタルタルソースは自家製。それも、味が濃いめのマヨネーズを使い、ゆで卵、タマネギ、塩・こしょう、パセリをミックスしたもので、実は随所にポイントが隠されているのでした。
ひとしきりお話しを聞いて、「おうちぱん」という名前がぴったりな温かみのある。お店だなとしみじみ。
ちなみに、サンドイッチ以外に同店の人気商品も紹介します。
第一位はクロワッサン。
続いて二位はメロンぱん。
第三位の「5種のやさい手作りキーマカレー」。揚げてないのでしつこくなく、フィリングは悦子さんの手作りです
そして、サンドイッチにも使われている「おうち食ぱん」。
「作り方はいろいろこだわっていますが、配合はシンプルです」(秀亮さん)
食パンは、バターやジャムを塗ったり、サンドイッチにして食べるものなので、味が濃くなりすぎないようにしているそう。とはいえ、そのまま食べても小麦の甘みがじんわりと感じられ、〝足し過ぎないおいしさ〟を実感できます!
そうそう、最後に面白い話を聞きました。
お店をオープンするにあたって、まず一番に決まったのが「おうちぱん」という名前。
その次に、看板やショップカード、などに使われているおうちのマークが生まれたそう(おうちのマークは、悦子さんのイラストがモチーフになっています)
そのマークから、西堀川通沿いの壁に四角い窓を作る、店舗のデザインが決まったそう。
ほら、看板とお店、そっくり!!
このエピソードも、パンもサンドイッチも全て、優しく、あったかな気持ちになれるお店でした。
店舗・施設名 | おうちぱん |
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住所 | 京都市上京区西堀川通上長者下る奈良物町477 |
電話番号 | 075-285-2851 |
営業時間 | 午前9時~午後7時 日曜休(不定休あり) |
交通 | 市バス「堀川中立売」停から徒歩約2分 |
Writer岡田ゆき&イチノアユミ
Writer岡田ゆき&イチノアユミ
岡田:サンドイッチ大好き、食べるの大好き。NO グルテン NO LIFEなフリーライターです。
イチノ:初めての長期バイトは、大学時代、京都のベーカリーにて。パンに夢中だった当時、数年間は米を食べなかったほど。ずいぶん大人になり、〝パン熱〟がいくぶん醒めたとはいえ、今もやっぱり食いしん坊です