さて、第2回は「一乗寺駅」周辺を紹介します。ちょうどオレンジ色をした人気車両の「きらら号」が来ました!
開放的な大きな窓があり、観光用に座席がその窓の外を向いているのが特徴です。この角度からはわかりませんね(汗)。
毎日通学している娘たちはさすがに最近きららで喜ぶこともないようですが、それでも、筆者はなんとなくきららに乗れるといいことありそうな気がします。
一乗寺といえば、よく聞くのは「ラーメン街道」。
京都大学、京都精華大学、京都造形大学など、大学が多い地域だからか、確かにラーメン屋さんや、学生向けにワンコイン程度の定食屋さんがあちこちにあるのです。例えば、このキッチンアベ。唐揚げ定食がとてもおいしいらしく、ハズレがないという噂の定食屋ですが、現在、料理を作っているお父さんが体調を崩しておられ、ご紹介できず残念。11月から少しずつ復帰予定だそう。一乗寺駅の西側の水路沿いを出町柳方面に向かったところにあります。
そして、この看板。恵文社さんも有名ですよね。あ、今回紹介するのはここじゃありませんよ。
ところで、「一乗寺」っていう名前のお寺はどこに? と、思いませんか?Wikipediaによれば、
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駅名は駅所在地の地名に由来する。地名のもととなった一乗寺はかつて平安中期から中世にかけて当地に存在した寺院であるが、その詳しい所在地は不明である。
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ということで、現存していないようです。残念。
とはいえ、実は、お寺や神社もたくさんあります。通りの名前でもある曼殊院、詩仙堂、そして金福寺などもありますが、今回は、圓光寺をご紹介します。
圓光寺は、白川方面の山手にあります。駅徒歩15分ほどかかりますが、わかりやすい道です。
駅前の道「曼殊院道」を、東へずっとずっと歩いていくと、白川通に出ます。
白川通の信号を渡って、さらにそのまままっすぐ道を登っていくと、八大神社や詩仙堂の案内があります。
そして、詩仙堂の手前を左折して進むと、右手に門が見えます。
取材した日は少しずつ紅葉が始まっているものの、まだ緑豊かでした。今月はどんどんもみじが赤くなっていくので、観光客も増えそうです。
実は、圓光寺はあの徳川家康が仏教の学びの場として伏見に建てたのが始まり。
とはいえ、僧俗を問わず入学を許可としたといわれており、開かれた学校であったようです。なんと、当時の活版印刷の「木活字」が現存しているというので驚きです。今の地には、1667年に移転してきたそうです。
まず最初の見どころは「奔龍庭」の枯山水。龍安寺の「静」の枯山水と対照的で、とても動的。なんだか龍が今にも動き出しそうな力強さを感じます。
住職が砂熊手で描いておられるところを撮影させていただきました。当たり前ですが手作業なんですよね(汗)。
整っていく砂が気持ちいいのですが、これもきっと熟練の技なのでしょう。
さらに奥に進むと、紅葉が見事な「十牛の庭(じゅうぎゅうのにわ)」があります。
ここでまず入ってすぐのところにある「水琴窟」をぜひとも聴いてみてください。
動画で音を撮ろうかとも思いましたが、やはりこれは実際の響きを体験していただきたいのでやめました。この竹の筒に耳を当てるとよく聞こえます。水琴窟の音を聴くことで、癒し効果があるともいわれていますが、この景色とともに聴くことで効果倍増!な感じですよね。
庭は座って、そして歩きながら景色を楽しんでください。
朝の光が緑の苔を照らしている様子も美しい。
栖龍池(せいりゅうち)に映るもみじ。これが紅葉すると、どれほど美しいか! この池は洛北で最も古い池といわれているそうです。
本堂でお参りしてから、本堂からゆっくり見るのもいいですね。紅葉はこれからが本番です。
【圓光寺のデータ】
■京都といえば豆腐。その原料である豆乳を使ったスイーツを!『むしやしない』
次にご紹介するのは、曼殊院道沿いにある2つのスポット。まずは「むしやしない」さん。
穴場というには、すでに知名度も高いスイーツの店です。知名度が高い理由であり魅力でもあるのが、小麦・卵・乳 不使用の「ミラクル・ケーキ」シリーズや、グルテンフリーの米粉豆乳バウムクーヘンなど、さまざまなアレルギー対応ケーキにチャレンジをしておられるから。
とはいえ、「今の時代、アレルギー対応ってウケるよね」なんていう安直な理由で始められたわけではありません。豆乳パティシエと名乗る、オーナーの鵜野友紀子さんは、生粋の京都人。つまり、京都=豆腐、という「地産地消」や「地域貢献」といった原動力で、豆乳を使ったレシピを開発してこられたのだそう。だから、豆乳パティシエなんですね。
「おいしいものを提供して、感動していただくのが使命」と鵜野さん
「おいしさには絶対的な自信がある」とおっしゃるだけあって、とにかくどれもこれもおいしいのです。アレルギー対応のケーキだけではなく、もちろん、いつもの卵や乳製品を使ったスイーツもいっぱい。卵や牛乳を避けたい人も、そうでない人も、みんなが楽しめるのがうれしいですよね。こちらは、小麦・卵・乳が入っているいつものケーキ。見て食べておいしい「ぷちむしやしなべ(600円)」。
かくいう筆者も、末っ子が卵と牛乳のアレルギーだったので、当時、こんな店があったらなぁと本当に心から思います。
そんなわけで卵や牛乳不使用のスイーツは結構食べてきましたが、残念ながら、その手のケーキは……おいしくない。もしくは、食感がパサパサ(涙)。しかし! むしやしないさんのケーキは「実は、使ってないんよ〜」と聞かなければわからないほどのコクとおいしさなのです。
しかも、しっとりサクサク!
こちらは、卵・乳 不使用の「ミラクル*ケーキ」シリーズの「ミラクル・ソイタルト(650円)」。クリームがとってもおいしくて幸せ!
小柄でかわいらしい雰囲気から想像できないパワフルな鵜野さんが目指すのは「安心・安全を素材から」。
すでに「むしやファーム」として大豆の自給にチャレンジ中。ケーキの材料となる「素材」をさらに生かし「素材を、素材よりも素材らしく」を目指していかれるそうです。食べると、鵜野さんの元気ももらえそうですね。
メニューもかわいい。
テラスには喫煙席もあります。
グルテンフリーの「米粉豆乳バームクーヘン」。小麦粉アレルギーだというイケメン俳優ディーン・フジオカさんにプレゼントしたいものです。しっとりしておいしいです!
焼き菓子をお土産に買う方が次々に来ておられました。
【店舗データ】
■活版印刷はデザインのひとつ『りてん堂』
さて、「むしやしない」のお隣。
このお店。いったい何屋さんでしょう?
直接、店主の村田さんに話を伺ってみると名刺には「グラフィックデザイン工房」と書いてある。実は、ここは活版印刷がしてもらえるグラフィックデザイン工房なのです。
そもそもグラフィックデザイナーとして長年勤めてきた村田さん。
デザインのひとつとして活版印刷には興味はあったものの、最初から引き継ぐ気があったわけではなかったそう。印刷するところを見せてもらったりしていた印刷会社が、ビルごと手放して廃業すると知ったのがきっかけなのです。最初は、印刷機械の引き取り手を探すお手伝いをしていたのですが、想像以上に早くビルが売れてしまい、悩む間もなく、気づいたら引き継ぐ方向に。「活版印刷を残していきたい」というノスタルジックな理由で継いだわけでもないのだそうです。
活版印刷とは、Wikipediaによれば
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活版印刷(かっぱんいんさつ)は、凸版印刷の一種で、金属や木に文字を彫り込み判子状にしたもの(活字)を並べて文章にした板(活版、組版)を作り、それに塗料を塗って印刷すること。また、その印刷物。鉛版・線画凸版・樹脂版などの印刷も含めていう。活版刷りともいう。
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とのこと。村田さんによれば、金属の場合は彫るのではなく鋳込(いこ)んで文字を作るのだそうですので補足しておきます。さて、どんなものか、私がワークショップに参加した様子をお見せしましょう。自分の名前を印刷できるワークショップです。
まず、数ある活字の中から、自分の名前の活字を選びます。私は「ひ」「じ」「り」を選びました。そして、その活字を板にはめ込みます。
その活版を印刷機にセット。
そして、印刷する用紙をセット。上の丸い部分にインクを乗せてあり、ローラーが上がったときにインクがつき、下がりながら活版にインクをつけ、完全に閉じた状態のときにインクがついた版が用紙にくっつくという仕組み。
できあがりはこんな感じ。確かにまるでハンコですよね。村田さんがおっしゃるには、このワークショップは、子どものほうが上手なんですって! 大人は考え過ぎて、力加減がよくわからなくなっちゃうんですよね(汗)。
ひらがなはもちろん漢字ももちろん揃えるため、どうしてもそれを収納するスペースが必要になります。サイズやフォントの種類もあるので、なんと活字だけで数トンの重さになってしまうそうです。しかも印刷していると磨耗してしまうので、これも消耗品なのです。
そして、印刷機もそれぞれ数トンずつ。基礎がしっかりした建物じゃないと置いておけないそうです。うーん、確かに重たそう!
私は機関車を思い出しました。
まるでミシンのような印刷機。実は、博物館に展示されていてもおかしくない貴重なものだそう。
活字は「いろはにほへと」の順に右から並んでいます。なんだか趣がありますよね。
グラフィックデザイナーの村田さんは、ものによって、一般的なオフセット印刷を使いつつ、デザインとして活版印刷を生かせるものには、活版印刷を使って、組み合わせてデザインしておられます。訪ねたときにも、オフセット印刷されたマークの上に活版でブランド名を刷っておられるところでした。当たり前といえば当たり前なのですが、用紙は自動で送られるわけじゃないので、一枚一枚、手で置いていくのです。
でも、慣れてくると1000枚という枚数でも数時間で印刷できるそう。すごい!
活版印刷の良さは、やはりそこに人間らしさや手作り感といった温かみを感じるところ。例えば、印刷している文字が少し凹んでいたり、文字がかすれていたり。手作りの良さを感じられます。DTPと違って、すべての漢字が揃っているわけではないので、どうしても限界があるとのことですが、それなら「ひらがな」にしてもいいですし、味のある印刷物ができるのが魅力。
こんな小物も売っています。筆者も、次の名刺は、こちらでお願いしたいと思っています。
【店舗データ】
店舗・施設名 | 一乗寺駅 |
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住所 | 京都市左京区一乗寺里ノ西町102 |
ホームページ | https://eizandensha.co.jp/guide/station/ichijoji.html |
Writer藤嶋ひじり
Writer藤嶋ひじり
編集者・ライター・恋愛コラムニスト。洛北と叡山電車を愛する3姉妹の母。子ども時代から鉄分多め。区画整備された新興住宅地育ちで、山々に囲まれた洛北に憧れ移住。