デジスタイル京都をご覧の皆さま。初めまして。
京都大好きな旅人ライターの鈴木あみです。
旅が大好きで興味を持ったら一人でふらっとどこまでも行き、行く先々で出会った人やモノから次の旅を見つけるような旅をしています。
そんな中でも大好きな京都で、京都でいま生まれている“クラフト=手作り”なものをご紹介していきたいと思います。
-京の手しごとに魅せられて
関東で生まれ育った私にとって、京都は日本の歴史や伝統が溢れながらも現代社会と融合している不思議な街。
当たり前のように街中に世界遺産があったり、街に出かけたら普通に舞妓さんを見かけたり、至る所に日本の伝統が現代社会と一緒に生活をしている面白さがあります。
そんな中でも私が京都で一番違いを感じるのは、“想いをこめて作りあげているもの”が多いということです。
自分の作るものにこだわりを持ち、良いと思うものだけを作り続ける。
食べ物でも、モノでも妥協のないものたちがたくさん集まっているのが京都だと思っています。
こちらでは、長く受け継がれている伝統的な手作りのモノや、いま、京都で生まれている“新しい伝統”になるかもしれないクラフトを紹介していきたいと思います。
それでは、京都のクラフトをめぐる旅へ参りましょうー。
-マイクロブリュワリー 「一乗寺ブリュワリー」
まず、初めにご紹介するのは京都中心地から見て北東で比叡山の麓にある、一乗寺ブリュワリーさんです。
2011年に京都で日本酒メーカー以外で初めてビール醸造所(日本の法律により正式には発泡酒ですが、成分はビール!)を作ったクラフトビール先駆けといえるブリュワリーさんです。
一回の仕込みで醸造できる量が200リットルの超少量生産のマイクロブリュワリー。
少量生産、高品質なビール作りに徹底してこだわる姿勢はまさにクラフト!!
先日、インターナショナルビアカップ2017で金賞を受賞されたばかり。
高い評価を得て高品質なおいしいビールを作っているのには、何か秘密があるはず…!!
さっそくお話を伺っていきました。
一乗寺ブリュワリーを運営されている横田さん(左)と林さん(右)のお二人。
横田さんは、東京農業大学で微生物の研究をされてから2014年に一乗寺ブリュワリーに入社。
林さんは、京都市内の日本酒も扱うクラフトビールメーカーから2015年に転職をして一乗寺ブリュワリーに入社。
別々の道を歩むお二人が、一乗寺ブリュワリーに入社を決意されたのはオーナーの高木さんの強い想いに触れたから。
-生きにくさを感じている人たちに、自分らしい生活を
オーナーの高木さんは精神科医。
“ACT-K”という重い精神病を持った方が、地域社会の中で自分らしい生活を実現し、そして維持できるような訪問型支援を提供するプログラムを立ち上げました。
そのプログラムの中の一環で、一乗寺ブリュワリーは生きにくさを感じている方に雇用を通して役割を与えられる場を作るために醸造所を創設されました。
高木さんは、2011年頃にクラフトビールのブームが来るのを察知してクラフトビールを使った就労支援の場を作ろうと決意。
約2年以上の醸造許可までの時間を耐えてまで、醸造所を設立されたのも並々ならぬ想いがあったからこそ。
–横田さん
自分の持っている微生物や醸造の知識を使い、社会で声を上げられずに苦しんでいる人たちの力になれないかとなと考えながら、ホームレス
の支援団体に入ったりしていたんですよ。
その中で高木さんのプロジェクトを知って門戸を叩いたという経緯になります。
ホームレスの方の多くは何か障害を持っている方が多いと聞いたことがあります。直接的にはホームレスの支援にはならないかもしれないのですが、将来的には何か巻き込んでということもぼんやりとですが思っております。
様々な方と触れ合い実体験で多様性の大事さを知った横田さんだからこそ、ACTのプログラムが現代に必要なことを知ってらっしゃったのかもしれません。
社会の課題を解決されようとしているその想いが、一乗寺ブリュワリーをどんどん美味しく進化させているのだなと感じました。
–横田さん
以下、高木さんの弁になりますが―昔から、クッキーやパンを作るような福祉工場というのはあります。
障害のある方のネットワークは、障害を持っているという方への支援だと思って買っていることもあるようです。それで福祉工場というのは成り立つものですが、障害を持っている当の方々は自分たちが作っているのは正しい価値で買っていただいてるのか、と感じてしまう人も多いようです。
そういう現状をふまえ、高木さんはしっかりと高品質で一般市場に出しても胸を張れるようなものを作ろう。
一緒に提供するということで社会復帰の場を作ろうとお考えになりました。
そのためにビールを選んだということになります。
…もう一つ言ってしまいますと、高木さんがビール好きという理由があります。
実はそれが大きいみたいですね。(笑)
-マイクロブリュワリーの魅力
追いかけるように、2015年林さんも一乗寺ブリュワリーに入社されます。
生まれ育った京都で新しいビールを作りたいなと考えていた林さん。
前職の環境では新しいことができない…そんなタイミングで高木さんに声をかけていただいたのだそう。
–林さん
一乗寺というマイクロブリュワリーであれば少量で多品種を作れる。
自分が今まで作りたいレシピを書き留めていたものが実際にできるということで、いいタイミングで高木さんに声をかけていただきました。もちろん、喜んで入社し、横田くんとこの2年間頑張ってきたという感じですね。
私は精神障害を持っておられた方についての知識は入社してから。
高木さんの考えを知って共感して一緒にやりたいなと。まずはビールを作って欲しい、その気持ちに応えたかったですね。
まずは高品質であるということが第一。
社会復帰の手助けになる場の礎を築くことは、まずは品質を認められて、そこからかなと思っています。
小さな醸造所だからできる、たくさんの挑戦が林さんのビール作りの幅を広げてとても楽しんでいらっしゃる様子が印象的でした。
一乗寺ブリュワリーを支える麦芽たち。どれも個性的なお味がします。
今回、インターナショナルビアカップで金賞受賞したものはお二人がタッグを組まれてから初めて作られたビールだったそうですが、2回目の出品で受賞。
前回出品したものと全く同じ配合で受賞できたことは、日々一乗寺ブリュワリーのビールの品質が上がった証拠だとお二人は力強く仰っていました。
横田さんと林さんが入社してから、それまで糖蜜でしかビールを作れなかった環境から、麦芽を使ったビールを作れるように設備も一新したそう。
醸造学と生きにくさを感じている方への深い知識がある横田さんと、真摯に醸造を17年されてきた林さんのお二人がタッグを組まれて一乗寺ブリュワリーはより目指すべき姿に向かっている印象を強く感じました。
さらに、さらにおいしいビールが生まれていくことに期待しちゃいます!
-わたしにとっての、おいしいってなんだろう
一乗寺ブリュワリープロデュース”ICHI-YA”の飲み比べセット
日本のビールのイメージは、喉越しを一番に思い浮かべてしまうことが多いですよね。
実は、ビールはスパイスを入れたり、ハーブを入れたりとてもアレンジの効くお酒になるそう。
ビールがそんな万能な子だったなんて…‼︎
スパイスやハーブなんて、とってもお料理的なお酒。
女性向けに可愛く作り上げることもできそうですね。
最後に、お二人に一乗寺ブリュワリーの楽しみ方を伺ってみました。
–横田さん
ビールはたくさん種類があって、その中で自分の好きな味を探していく面白さがあります
賞を取ったものは“おいしい”ではなく、自分にとって好きなものを探してみてください。
”おいしい”というのは感想でしかない。
どれが自分にとっておいしいのか、自分の好みがどんなものなのか考えて教えてください。
–林さん
ビールは気軽に楽しめるお酒です。
でも代表的なビアスタイルをいくつか知っているだけでお店に行った時の楽しさが倍増しますよ。
食とビールのマリアージュを楽しんでください。
世界的に認めてられていたり、みんなが良いというものではなく自分が心から好きなものを探してみてほしいというお二人の強いお気
持ちを感じました。
そしてそれは、お二人のビールにとっても同じこと。
賞を取っていても、いなくても自分たちのビールを心からおいしいと思っているお二人だからこそ。
お二人の”おいしい”と、どこかにいる誰かの”おいしい”が出会った瞬間がとっても楽しみです。
私にとって、ビールは楽しい!が一番似合うお酒。
食事とのマリアージュを考えてもっともっとビールを楽しみたくなってしまいました!
-みんな違って、みんないい
全く同じ人がいないのだから、味覚だって一人一人違う。
流されずに考えること。
おいしいビールのお話だけでなく、本質的に忘れてしまいそうなことを思い出させてくれる素敵な時間でした。
同じことを求めがちな今までの世の中に対して、違いを楽しんでいこうと教えてくれるそんなビールブリュワリーは本当に唯一無二。
きっと、強い想いがあるからこそさらにおいしいビールを提供してくださると思います。
ぜひ、“わたしにとって”のおいしさについて思いを馳せに、一乗寺ブリュワリーを飲みに行ってみてくださいね。
あっ!一乗寺ブリュワリーではビールは飲めないのでご注意を。
飲みたくなってしまったら、BEER PUB ICHI-YAへおいでください。
写真は店長一押しのベルジャンウィート。
わたしにとってのおいしいはドライスタウトでした。
●一乗寺ブリュワリー
店舗・施設名 | ICHI-YA |
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住所 | 京都府京都市中京区御幸町錦小路御幸町上ル船屋町384番地 Casa INO’s 1F |
電話番号 | 050−5592−4067 / 075-256-6099 |
営業時間 | 11:30~23:00(L.O)夜10時以降入店可、日曜営業 |
交通 | 阪急河原町駅より徒歩4分 |
ホームページ | http://www.kyoto-pontocho.jp/shoplist.html |
Writer鈴木あみ
Writer鈴木あみ
旅とお酒と音楽と自然が大好きな旅人ライター。
現在、京都でお酒の修行中。