ごきげんいかがですか。あんこ好きライター、かがたにです。
あんこが好き、と言うと「粒あん派ですか、こしあん派ですか」みたいな話になりがちなのですが(実際、大別すればそうなんですけど)、今回は粒あんとこしあんの間にだって、あんこは存在するよというお話です。
元祇園梛神社(もとぎおんなぎじんじゃ、通称:梛ノ宮神社)と壬生寺の中間に店を構える「幸福堂」さん。
歴史好きにはお馴染みの八木邸や旧前川邸にほど近く、立ち寄りスポットとしても人気で、金つばがとても有名な和菓子屋さんです(銀つばもあるよ!)。
店名でピーンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、河原町松原を西に入ったとこにある明治元年創業の「ごじょうぎぼし最中本舗 幸福堂」さんとはご親戚だそうです。
暖簾分けを経て、独立。壬生の幸福堂のご主人は当代で三代目になります。
今でも繁忙期はお手伝いの行き来があるそうですが、独立後は自店の味を追求しておられます。
さて、金つばの名店とされる幸福堂さんですが、屋号を冠した商品が別にあるとなれば、俄然そちらも気になるところ。
それがこの、「幸福餅」(税込200円)。
天然よもぎをたっぷり混ぜ込んだ伸びの良い羽二重餅に、自家製餡を包んだ一品。
餅とあんこの柔らかさのシンクロ率が異常です。
指が沈み込む感触は、まさにテンピュールのうつ伏せ寝用の枕のごとき心地よさ。
よもぎは春の食材ですが、母方のご実家・和歌山の山で採れる新鮮なよもぎを1年分、瞬間冷却してキープしているため、幸福堂さんでは通年販売されています。
これがその瞬間冷却状態のよもぎ。
乾燥モノとは全く違う、鮮やかな色と瑞々しい香りを年中楽しめるのが嬉しいですね。
そして、お待ちかねのあんこ〜!
よもぎに負けない小豆の香りと甘さが口いっぱいに広がります。
豊かなコクとミネラル感の秘密は3種類の砂糖と少量の天然塩だそうです。
甘さはしっかりとあるのですが、水飴を使っていないのでネッチリとした粘度はなく、サラリとしたあんに仕上がっています。
たっぷり入った自家製の「つぶし餡」!
「粒あん」じゃなくて「つぶし餡」て何?という方もいるかと思いますので、簡単に説明しますね。
こちらが幸福堂さんの菓子のベースとなる5種のあんこ。
なんと美しき五芒星かな・・・。
まず、これが金つばや最中などのベースとなる「粒あん」。
小豆一粒一粒を潰さないように炊いて、蜜漬けしてさらに「こしあん」と合わせた状態。
そして先ほどより粒感が少なく見えるのが、幸福餅や栗餅などに使われる「つぶし餡」。
柔らかく炊いた小豆に砂糖を加えて、練って作るので皮が破れて一体感がある状態。
で、こちらがおはぎや月見団子、蕎麦饅頭などに使う「こしあん」。
銀つばなどに使うのは、こちらの「白の粒あん」で、
焼き菓子などには、「白のこしあん」が使われます。
一列に並べると、太陽系の惑星のようですね。
きっと、粒あんとこしあんの間には、途方も無いあんこの宇宙が広がっていて、豆の種類や炊き方、砂糖の種類や量などの様々な要素の違いが複雑に絡み合い、幸福餅の「つぶし餡」以外にも幾多のあんこが存在しているに違いないのです。
幸福堂さんでは店売りの菓子のあんこは全て自家製。
あん炊きだけでかなりの時間を要します。
「早朝の3時から22時まであんこに関わりあっているので、正直、あんこはもうたくさんですよ」
と笑うご主人ですが、あんこに対するこだわりと愛は相当なもの。
中でも興味深かったのは、餡を炊く工程によって、職人の勘という感覚的な判断と、テストデータを生かし、毎回糖度計で数値化するデジタル的なチェックの両方を使い分けている点。
「僕個人の好みだけでいうと、もっとあっさりした甘さで一度に3つくらい食べられるような和菓子が理想。でも、代々ウチを愛してくれているお客様が求めている味はきちんと守りたいじゃないですか。自分の好みと求められる味が100%合致していない場合、職人の感覚だけに頼るのは危険かなと思ったんです」
春だけでなく、一年中いつでも幸福餅が美味しいのは、謙虚な攻めの姿勢のお陰なのですね。
でも、ご主人好みのあんこも食べてみたいですとお伝えしたら、ニヤリとして「実は、計画中です」とのお答え。
今後がますます楽しみになりました。
店舗・施設名 | 幸福堂 |
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住所 | 京都市中京区壬生四条坊城南入る |
電話番号 | 075-841-1940 |
営業時間 | 10:00~18:00(水休・1日、祭日、節分は営業) |
交通 | ・市バス バス停[壬生寺道]より徒歩1分 ・阪急電車 四条大宮駅より徒歩10分 |
ホームページ | http://www.koufukudo.net/ |
Writerかがたにのりこ
Writerかがたにのりこ
あんこをこよなく愛し、月に2回は自宅で餡炊きをするフリーライター。 元・漉し餡党、現在はあんこ博愛主義者。