はじめまして!
京都・洛北が好きで移り住んできた、編集ライターの藤嶋ひじりです。このコーナーでは、洛北を走るかわいい電車、叡山電鉄沿いの穴場をご紹介します!
「叡山電鉄」は、私たち住民にとっては生活の電車であり、通勤通学に使うもの。そして、観光に来られる方は、貴船神社や鞍馬寺に向かう人がほとんどという印象です。でも実は、その途中にもたくさんの素敵な神社仏閣やかわいいカフェ、パン屋さんなどがあります。
そこで、それぞれの駅の穴場スポットを、各駅ごとに紹介していこうと思います。第1回目は、出発地点の出町柳周辺からご紹介しましょう。
出町柳駅は、京阪電車の大阪・淀屋橋への始発駅でもあり、叡山電鉄の鞍馬への始発駅。……あ、私たちは叡山電鉄とは言わずに親しみを込めて、「叡電(えいでん)」と呼んでいます。叡電の出町柳駅はこんな感じ。なんだかかわいいですよね。でも、他の駅はさらに小さく、もっとかわいいんですよ!
■秀頼が称号を与えた「光福寺(干菜寺)」
さて、まずは駅から徒歩2分のところにある光福寺。駅前をセブンイレブンの方向へ進むと三叉路があります。そこを左手に進むと、右手に凛としたクールなお寺が見えます。浄土宗知恩院派のお寺、「光福寺(こうふくじ)」です。
豊臣秀吉が、鷹狩の道中に立ち寄った時、住職宗心が干菜(ほしな)を献じたことによって、秀吉から干菜山光福寺の称号を与えられたといわれているようです。
庭園が見どころといわれていて、手入れされた松がずらりと並んでいます。こんなに松が並んでいる光景、ちょっと珍しいですよね。まるで自分が小さくなって盆栽の間を歩いているみたい……。
装飾彫刻も美しい。
参拝にいらしたおばあさんが「ここの松、きれいに撮れますよ。私も思わずスマホで撮りましてん」と話しかけてこられたように、松のファンが多そうです。
【お寺のデータ】
所在地:〒606-8205 京都市左京区田中上柳町56(出町柳駅徒歩2分)
電話:075-781-4681
拝観料:無料
開門:9:00〜16:00
■イスラエル料理「ファラフェル」は平和の食べもの
さて、ここから一度、出町柳の駅に戻って、お昼ご飯にしましょう。駅前を通り過ぎて、川端通沿いを北へ歩くと、高野川を望む川沿いにイスラエル料理の「ファラフェルガーデン」さんがあります。
「ファラフェル」は、ベジタリアンやヴィーガンの方にも人気の、動物性のものを一切使用しないコロッケのような揚げ団子という感じ。それをピタパンの中に野菜といっしょにたっぷり入れて食べます。
このコロッケのようなお団子がファファフェル。もうひとつは「フムス」。ひよこ豆のペーストのサラダが入っています。どちらも美味で、Mサイズですが意外にペロリと入ってしまいます。
オーナーのアミールさんはイスラエル人。
世界中をバックパックでめぐり、そのとき3回、来日したそうです。14歳からベジタリアンだというアミールさんは、このおいしいイスラエルの家庭料理を日本に広めたいと同郷の友人たちとファラフェルを作って売り始めました。
とはいえ、最初はなかなかアミールさんのお母さんが作っていたようなおいしいファラフェルができなくて苦戦したようです。
海抜よりも低いイスラエルでは、年中、新鮮な野菜が採れるため、いつもたくさん野菜を食べてきたというアミールさん。
「イスラエルは、日本から見て地球の反対に位置しますが、お互いにまだお互いのことを知りません。でも、イスラエルでは寿司屋ができるなど、少しずつ日本文化が増えてきています。イスラエルにはさまざまな国籍を持つ人が暮らしており、その数は100以上といわれていますが、日本は単一国家ですよね。私は、イスラエルの文化をみなさんに知ってもらいたいと思っています。胡麻やオリーブ、ワインなども、もともとはイスラエルのあたりが発祥ですが、それも知られていません。海抜よりも低いおかげで、ハーブや野菜、果物などは世界一おいしくできます。ベジタリアンというと、日本では欧米が有名ですが、歴史が長いイスラエルには昔からたくさんいます。私も14歳からベジタリアンです。今は、世界中の食の問題が深刻です。命にとって大切なものは、空気と水ですが、その次に大切なのは「食」です。遺伝子組み換え、農薬、化学肥料など、世界の「食」を脅かしてきていますが、日本の食事も、とても心配です。ストレスをためている人が多く、自殺も多いなどの社会問題が増えている。野菜作りをしている地方から若い方がどんどん都心に流出していて、農家が減っています。とても心配な状況の日本で、こういった「食」の大切さをもっともっと伝えていきたいです。この店のメニューは、上賀茂などの無農薬の野菜を使っていますし、ハーブは自分で無農薬で育てています。ピタパンも遺伝子組み換えをしていない小麦粉を使っています。いいものを食べると、心身が元気になる。ファラフェルは平和の食べものです」。
自然食品の会社の広報誌の編集をしている私は、意気投合して、食の問題について1時間ほど熱く語り合ってしまいました(笑)。イスラエルの食品も店頭で買えます。
座席は1、2階合わせて約60席あります。テラス席もあります。2階でイベントが開催されることも。
2階のベランダ席もかわいい。
ローケーキとハーブティーもおいしかったですよ!
持ち帰りもできます。鴨川デルタが近いので、天気のいい日には鴨川デルタで食べてもいいかもしれませんね。最近は、トンビがたくさん飛来してくるのでトンビには気をつけてね。
【店舗データ】
ファラフェルガーデン
所在地:〒606-8205 京都市左京区田中上柳町15-2(出町柳駅徒歩2分)
電話:075-712-1856
営業時間:11:00~21:30(L.O.)
定休日:不定休
■9月に行くと萩が満開「常林寺」
さて、ご飯を食べたら、少し南へ向かいましょう。出町柳駅に戻り、今度は鴨川沿いの道路“川端通り”を少し南へ歩くと「常林寺」があります。幕末に、勝海舟が宿坊として利用していたという話がある浄土宗のお寺です。
別名「萩の寺」と呼ばれるほど、9月はみごとな萩が咲き誇ります。
お彼岸前後(シルバーウィーク)ぐらいが一番の見どころですが、土日や平日の午後は混みますので、見たい方は午前中に行くのがおすすめです(注意:萩は、咲き終わるとすべて刈り取られるようです)。
カメラを持った中高年の観光客が多く、ちょっと歩きにくいほど……。
お堂の向こうには、彼岸花も。こちらもとても美しいのですが、墓地に向かう道中のため、配慮したほうがよさそうです。
【お寺のデータ】
所在地:〒606-8204 京都市左京区田中下柳町33(出町柳駅徒歩2分)
電話:075-791-1788
拝観料:無料
駅徒歩9分■利き酒ができる洛中最古の蔵元「松井酒造」
萩の寺を楽しんだ後は、そのまままた川端通りを南へ。ファミリーマートを通り過ぎ、ケイヨーデイツーを通り過ぎた先の信号を左折。
ライフの向こうに「松井酒造」があります。
少し離れているので、萩の寺からは徒歩7分ほどかかりますが、ぜひとも行っていただきたい、おいしい日本酒の酒蔵です。
兵庫県の香住で創業した松井酒造。当時、水飢饉が起こり、掘った井戸が街をうるおし、その水でお酒造りをしていたという記述が残っており、それが享保11(1726)年。ということで、1726年創業としているそうです。ということは、きっとその前から酒造りがおこなわれていたのかも。
その後、河原町竹屋町を経て、大正末期に現在の吉田の地に移転。近隣の地下工事の影響で一時的に伏見でのを酒造り経て、10年前に井戸を掘り、8年前から美味しい井戸水を使った洛中での酒造りを再開しました。
観光客の方はもちろん、京都大学を始め、大学がいくつもある土地柄、意外にも女子大生が最近はたくさん訪れるのだそう。その時期におすすめのお酒の利き酒できるのが、この店の特徴です。
お酒に強くない私が、ここを勧めるのは、なんといっても酒粕がおいしいからです!
冬場になると、こちらの酒粕を切らさないように買いにくるほど、酒粕が気に入っています。取材当日は、まだしぼりたての酒粕がなく、3年ものと、5年ものの練り粕が売られていました。こちらも野菜や魚などを漬けるのにいいですよ〜!
お話を伺った松井成樹(まついしげき)さん。
お父様が14代目で、成樹さんご自身も杜氏でいらっしゃいます。マンションの一階に店舗があるので、酒蔵は別の地かと思いきや、この店舗の奥にあるそうです。
「日本酒は微生物が作り出すものなので、そのための衛生管理、温度管理にこだわり質の高いお酒を提供することを心がけています。また、酒蔵が街中にあるということで、少しでも環境に貢献するために太陽光発電を取り入れています。お酒を冷やすのにも電力消費するため、全体の6割を太陽光発電でまかなっています。二重構造になった樽は、冷水で冷やして温度管理できるようになっており、外気温による影響が少なく、新酒が9月には出せます。ちょうど今、『神蔵』の新酒を搾っているところです。10月には味を見ていただけると思います」
とのこと。味見して、ぜひ気に入ったものをお土産にしてみてはいかがでしょうか?
蔵見学もしていますが、こちらは要予約ですので注意して! 特に、仕込みの時期には蔵見学できない日もあります。
【店舗データ】
松井酒造
所在地:〒606-8305 京都市左京区吉田河原町1-6
電話:075-771-0246
営業時間:平日 9:00~18:00
定休日:日・祝
と、こんな感じでそれぞれの駅の近くの素敵な場所をご紹介していきたいと思います!
次は……どの駅にするかはお楽しみに♪
店舗・施設名 | 出町柳駅 |
---|---|
住所 | 京都市 田中下柳町 |
ホームページ | https://eizandensha.co.jp/guide/station/demachiyanagi.html |
Writer藤嶋ひじり
Writer藤嶋ひじり
編集者・ライター・恋愛コラムニスト。洛北と叡山電車を愛する3姉妹の母。子ども時代から鉄分多め。区画整備された新興住宅地育ちで、山々に囲まれた洛北に憧れ移住。