京都市内でも北部のほう、少し郊外のイメージがある鷹峯(たかがみね)の住宅街の一角にそっと佇むように、お店はありました!
かねてから、パン好きの友人に評判を伝え聞いていた「klore」。
美味しそうなパンかごが添えられた看板が無ければ見過ごしてしまいそうなこちらのお店ですが、ドアの向こうはパン天国! 焼き色・姿が美しいハード系のパンやモチッとした食感が特徴の食パンなど、約40種が並びます(土日は約50種類)。
実は取材をお願いしたとき、店主の前田隆行さんから
「うちはいわゆる普通のサンドイッチというのはないんですが、大丈夫ですか?」
と聞かれました。
私「いいんです!」
なぜなら…
― 今回のお目当は、これ! 「クロックムッシュ(378円)」だからです。
フランス生まれの、カフェなどでも定番のメニュー。
こちらのクロックムッシュは、ハードトーストタイプの山形食パンで自家製ホワイトソース、上質なハム、グリュィエールチーズをはさみ、さらに表面にソースを塗ってチーズをかけ、焼き上げたもの。
〝焦げ目もごちそう〟な、このサンドイッチは、ソースのコク・ハムのうまみ・チーズの塩気が渾然一体となった一品です。
具材の絶妙さに負けていないのが、土台となるパン。
濃厚なチーズの味わいの陰に回るのではなく、小麦の旨みや甘みがきちんと主張をしてきます。
ここで同店を強烈に推薦していた友人の言葉を思い出しました。
「噛めば噛むほどにパンの味がしっかり感じられるねん。
惣菜もナチュラルなパンも、どれもパンに旨みがある」
次に、フォカッチャ生地の楕円形のパンを使ったサンドイッチ2種。
「ズッキーニのみそマヨソース(270円)」
カットしたパンに、白みそ+マヨのソースを塗って、シュレッドチーズ(とろけるチーズ)と厚めの輪切りのズッキーニを置き、さらにもう一度みそマヨソースを。
パンの上には少しだけコクと塩気が特徴のグリュィエールチーズをトッピングしてあります。
ズッキーニははさむ前に軽くオリーブオイルを塗り、さっとローストしてあるのだそう。
そのため、パンにはさまっていながらも、ほどよく火が通り、ジューシーなんです。
「なすとミートソース(270円)」には、牛ひき肉とトマトを煮込んだ自家製ミートソースを使用。
ナス(もちろんローストしてあります)の上には、シュレッドチーズを乗せてとろりと。
こちらもパンの上にはグリュィエールチーズをトッピングしています。
さて、皆さん、これらのサンドイッチのチーズの2種使い、気付かれましたか?
「グリュィエールチーズはコクがありますが、これだけを使うと塩分が濃過ぎるんです」
と前田さん。
シュレッドチーズのまろやかさとグリュィエールチーズのコク。
これらが、口の中で重層的に広がり、濃厚なチーズのうまみを楽しめるのです。
もちろん、パンの味がしっかりとしているからこそ、
個性あるチーズや具材との調和が抜群なのは言うまでもありません。
ここで修行探訪6軒目から得た学び。
「味わい深いパンと具材の調和
美味しさの掛け算こそ調理パンの真髄」
もうひとつ感じた前田さんのこだわりが〝季節感〟。産地直送の新鮮で個性豊かな野菜を販売することで知られる「やおやONE DROP」の野菜を使っていて、冬はナスが入荷しないため人気商品なのに「なすとミートソース」はお休み(ちなみにズッキーニのほうはブロッコリーに変更されます)。
「今あるものを使うのが、美味しいと僕は思う」
と、きっぱりと言い切られる姿が何ともかっこよかったです。
前田さんが同店をオープンしたのは2003年。どんな商品をお店に出すのかは、それまでの約10年の修業経験や料理本を参考にしたほか、奥さんの亜紀さんとの数々の食べ歩きから生まれた発想がもとになっているようです。
「お味噌を使ったマフィンなどもあったりして、『何かコンセプトが?』と聞かれることも。でも、そうしたことはなくて、日常で美味しいものをと、考えていたら結果として出てきた商品たちです」
と、終始笑顔で話してくれた亜紀さん。接客のほか、店内のPOPも担当されています。
お二人の優しい雰囲気がいかされた実力派のお店、わざわざ遠方から足を運ぶ人が少なくないのも、うなずけるのでした。
店舗・施設名 | 「klore(クロア)」 |
---|---|
住所 | 京都市北区鷹峯藤林町6 長八館1F |
電話番号 | 075-495-6313 |
営業時間 | 9:00~18:00 火曜・水曜休 |
交通 | 市バス「鷹峯上ノ町」停から徒歩約1分 |
Writer岡田ゆき&イチノアユミ
Writer岡田ゆき&イチノアユミ
岡田:サンドイッチ大好き、食べるの大好き。NO グルテン NO LIFEなフリーライターです。
イチノ:初めての長期バイトは、大学時代、京都のベーカリーにて。パンに夢中だった当時、数年間は米を食べなかったほど。ずいぶん大人になり、〝パン熱〟がいくぶん醒めたとはいえ、今もやっぱり食いしん坊です