湯豆腐にはこれ!
京都に住んでいると、冷える夜にはおいしい湯豆腐が食べたくなる。これは豆腐がおいしい土地に生まれたものの特権である。だしのきいた小鍋でコトコト、豆腐本来の味を楽しむ湯豆腐には、辻和金網の「ゆどうふ杓子」が欠かせない。持った瞬間から手に馴染むのは、一本一本が手作りだからこそ。豆腐を崩さないのはもちろん、美しい幾何学模様の編み目からすっと湯が切れる具合も絶妙。店内には素材別に金色(金メッキ)、銀色(ステンレス)、銅色(銅)が取り揃えられており、食器の色や気分に合わせて使い分ける楽しみも。これを使うと、いつもの湯豆腐が数倍おいしく感じられるという逸品なのである。 |
網になっているものなら何でも 京都の真ん中、「御所のほん近所」。創業80年近くにもなる辻和金網は、落ち着いた街並みの中にある。ガラス張りの店舗兼工房をのぞくと、大きなものから小さなものまで色んな道具がところせましと並んでいる。茶こし、焼網、ゴマ煎りといった台所用品、和風スタンドや花いけなど、その数は50種以上にものぼる。「網で作ってあるもんやったら、何でも作ります」とおっしゃるのは、この道50年以上にもなるという店主の辻善夫さん。等間隔で釘が打たれた作業台、皮でできた指サック、そして針金。硬さがあるはずの針金が、匠の手にかかると、命を吹き込まれた生き物のように亀甲模様が編み出されてゆく。 |
▲網で作られた道具たち |
▲茶こし |
伝統は守り伝えられる
店に持ち込まれる要望は多種多様だ。「使い道は○○で、サイズは○○」と指定をするとオーダーメイドにも応じてくれる。料亭の多い京都では、「この器に合わせた網を作っておくれやす」という注文が入ることもあるそう。修学旅行の体験学習や地域の小学校での指導なども行っている。 「注文聞いたときに『この針金使ってこういう編み方をしたらできるな』というイメージができるようになれば、一人前」。長男の泰宏さんとともに伝統の技術を守り伝えている匠は、今日も匠品を生み出している。 |
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