冬の風物詩 京都の冬の風物詩といえば、千枚漬。赤ちゃんの頭ほどもある京野菜、「聖護院カブラ」を千枚になるほど薄くスライスして作ることからその名がついたともいわれる。表皮の下にあるカブラ特有の繊維をとるため、皮はぶあつく剥く。贅沢なようだが、この繊維を取る作業が、できあがりの口当たりを大きく左右する。真っ白のカブラを専用の鉋(かんな)でスライスしたあとは、少しずつずらしながら美しく樽に並べて塩漬け。塩漬けをした後は本漬け。甘みと酸味を備えた千枚漬はこうして生まれるのだ。 |
知る人ぞ知る名店 二条大橋にほど近い、加藤順漬物店。表通りから少し入ったところ、知る人ぞ知る名店だ。デパートや観光地に支店を出すところが多い中、加藤順漬物店はこの本店のみ。お茶屋さんや京料理店をも顧客に持ち、口にした旦那衆や地方の客人からの口コミで広まった。今でも地方から来たので店までタクシー、という方や関東などへの発送注文が多い、という。「メールでも電話でも、その向こうにお客様を感じながら商売をしています。来店されたお客様に商品の特徴をお話したり、お客様からは新しい食べ方をお教え頂いたり。千枚漬にハムとチーズを巻いて食べる、なんていう食べ方を教えて頂いたこともあります。なかなか楽しいですよ」と店主の加藤孝造さんは言う。人と人とのふれあい、お客様との対話を大切にされているところも、根強いファンが多いゆえんだろう。 |
旬のものを旬の時期に 全ての漬物が一年中あるわけではない。千枚漬も季節限定である。加藤順の千枚漬が食べられるのは10月後半から翌3月の半ばすぎまで。契約している二つの産地で聖護院カブラが収穫できるのは、この時期のみだからだ。 「旬のもんを旬の時期に食べることによって、素材の一番おいしいところを味わってもらえる。時期をはずれたもんは、ほんまの千枚漬の味やあらへん」 届いてすぐのサラダ感覚を味わうもよし、2~3日おいてしっかり漬かったところをいただくもよし。店主自慢の「ほんまもんの味」を楽しめる期間は短いがゆえに、届いたときの喜びもひとしおなのである。 |
▲店主 加藤孝造さん |
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