【第7回】京町家のデザイン (その1)格子と町並み これまで京町家と京都の人や生活、また通りとの関係性を、その内面的な部分についてお話してきました。「京の町家」連載もいよいよ後半に入ります。そこで、町家の具体的な設計手法やデザインを学び、これからの京都のために、創造性のあるまちづくりを考えていきたいと思います。 さて、町家の特徴といえば、第一に「格子」をあげられる方が多いことでしょう。京町家ではとくにそのバリエーションの豊かさが、都市のリズムとなって独特の町並みを形成してきました。これらの格子は町家の表構えのデザイン性だけでなく、いくつもの驚くような機能性も兼ね備えていました。
これらの格子に見られるように、なにかひとつのルールをつくることによって町並みを美しく連続させることができるのです。現在の京都では、建物の素材もまちまちですから、町家と同じようにはいきません。今の私達の生活にあった共通のルールとなる新しい発想やデザインが必要とされているように思います。建物のデザイン規制や高さ制限にとらわれがちですが、ここで発想を変えてみたらどうでしょう。 私達の住む京都は「通り」よって育まれた町です。今の通りはアスファルトの無味乾燥なもので、決して人に語りかけようとはしていませんが、その「通り」が見直されることによって、新しい都市の対話がうまれるのではないでしょうか。やがて、そんな対話によって、それにふさわしい新しい町並みがつくられることでしょう。「足の裏で京都を感じてみる」こんなことが、ひとつのきっかけになるかもしれませんね。 京都芸術デザイン専門学校専任講師 冨永りょう
(参考文献):『京の町家』/淡交社 『格子の表構え』/学芸出版社 別冊緑青5『よみがえる京の町家』/マリア書房 京都府 京都文化博物館一階「ろうじ店舗」では、江戸 時代末期の商家や町家の表構えを忠実に復元してい て、代表的な格子はここで見ることができます。 京都市中京区三条高倉 TEL.075-222-0888 開館時間10:00~19:30 |