しぶく染められた暖簾を分け入る。町家に似つかわしく黒を基調に纏められた店内は、ここが大人の社交場であることを改めて感じさせる。ふと絨毯に目をやると、そこには暖簾と同じ「千子」の文字が織り込まれている。なかなか気付かれにくいこんなところにもさらりとした演出があって、思わず足を止めて見入ることになる。
店名「千子」とはママの芸妓時代の源氏名である。ママ、大島千子さんは祇園に生まれ育ち、彼女の母が歩んだように舞妓、芸妓の道を歩み、そして川端に小さい店を構えた。今の場所はおよそ18年くらいになる。特にスポンサーを持たず、ママの細腕一本で育て上げた店だ。それだけに妙なけれん味のない、上質な空間を提供してくれる。
席数はボックス5つ、カウンター6席、2階カラオケルームには8人掛け×2、4人掛け×1のテーブルがある。さらにVIPルームには6〜8名を収容できる。このVIPルーム、ママの幼なじみである堀泰明画伯の大きな絵がかかっている。モデルは千子ママ。優しいタッチがママの人柄を彷彿とさせる。美人の絵をバックにグラスを傾けていると、酔いも手伝ってどうもそわそわしてしまう。
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